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転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~  作者: 緒沢 利乃
領地経営編 ②

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領主、欲を語る

司祭が派遣されないまま、領都クレモナに住む民たちへの奉仕と孤児院の運営をこなしてきたシスター二人。


シスターアイリスとシスターダフネは、アイリスがライラと同じ年代ぐらいで、ダフネはマリーたちよりちょっとお姉さんみたいだ。六〇代と三〇代か……。

その二人が古ぼけた木のテーブルを挟んで、俺を憎々し気に睨んできています。ひえええぇぇぇぇぇっ!


「シスターアイリス、シスターダフネ。たいへんご苦労をおかけしましたが、ようやくこの大聖堂に司祭様が赴任されることになりました」


安堵したからなのか、へにゃと情けない笑顔でクラークが告げると、俺の隣に座っているリベリオ大司教様を手で示し高らかに紹介する。


「なんと、ハーディング領からリベリオ大司教様がこちらの担当になりました! しかもピッポ司祭様もご一緒に!」


「「ええーっ!」」


シスター二人が椅子から転がりそうになって驚いている。うむ、やっぱりリベリオ大司教様はたいへん有名な方らしい。


「そ、そんなご高名な方が、なんでこんな寂れた教会に?」


「そうですよぅ。ここは本部に嫌われ忘れられた教会です! ま、まさかなにか失敗して左遷された?」


おいおい、物騒で失礼なことを口にすんなっ!

あと、オールポート領の教会が本部から嫌われすぎ? でも元凶の人たちは全て神の御許へと召されましたが?


「ホッホッホッ。たしかにこちらの担当の司祭として赴任してきましよ。こちらのセシル・オールポート伯爵からのご依頼で、ネ」


パチンとキュートにウィンクをかますリベリオ大司教様に、シスター二人は目をハートにして喜んだ。爺さんからのウィンクでも聖人がやれば、ご利益でもあるのか?


「お二人にはオールポート領のためご尽力していただきありがとうございました。初めましてとなりますが、こちらが領主のセシル・オールポート伯爵様。そしてこちらがお嬢様のシャーロット・オールポート様です」


ベンジャミンがスッと立ち上がり俺とシャーロットちゃんを紹介してくれたが……二人の視線がすっごい冷たい。俺だけなら構わないけど、シャーロットちゃんに対してまで態度が悪いのは……どうしようかな?


「ベンジャミン様はいつもわたしたちを助けてくださってましたけど、そもそもこの教会の窮状は伯爵様のせいなのでは?」


シスターダフネが勇気を出して不満を表すと、隣に座っていたシスターアイリスがギョッとした顔で彼女の口を手で塞いだ。


「あ、ああ……かまわない。俺が領地のことや領民のことに無関心だったのは本当のことだ。司祭の件は俺も被害者だと言いたいが……領主である以上、俺が責任を負うべき問題だった。つまり……すまなかった」


俺は椅子から立ち上がり、彼女たちに対して丁寧に頭を下げた。


「え……」


「セシル様。それはさすがに……」


シスターダフネの戸惑った声とクラークの諫める声が耳に入ってきたが、たとえ領主であれ頭を下げるときは下げないと、信頼などは生まれないだろう?


「正直に話そう。俺は今も領主としては失格だ。領地に害をなす奴らを追い払ったが、その後の行動は全て自分のためだった」


最低なことを堂々と言っているが、シスターたちの耳にいいことばかりを言えば、嘘を吐いていることと同じになってしまう。


「俺は……この領地を豊かにしたい。住みやすく子どもでも安心して町歩きができる治安のよさ。困ったことがあったら然るべき機関に申し出て助けてもらえる。できるならば教育を受け領民が生き方を選択できる水準まで栄えさせたい。すべては……シャーロットちゃんが伯爵位を継ぎこの地を治めるときに苦労をしないように、だ」


そう、俺は自分の欲のために頑張っている。誰かのためや顔も名前も知らない領民のためにとは……言えない。俺は、セシル君が放置していた娘、シャーロットちゃんのために頑張っているんだ!


「……えーっ」


クラーク、残念な人を見る目で俺を見るな。不服そうに口を尖らせて声を発するな! 探せば無私の心で善行を積むような為政者もいるかもしれないが、俺は違う。欲深いからこそ、頑張って生きていけるんだっ! あ、前の世界ではあっけなく終わっちまったけど……な。


「ホッホッホッ。いいのではなないですかな? 人それぞれです。セシル様の考え方は間違っておりませんよ」


リベリオ大司教様がニッコリと慈愛の微笑みを、俺とその隣に座るシャーロットちゃんへと向ける。


「お、お父様」


シャーロットちゃんの声がちょっと鼻声だ。ごめんよ……こんなことでしか君へ詫びることができないセシル君を許してくれ。いいや許してくれとも願わないよ。親に「許してくれ」と頭を下げられたら、子どもは許すしかないもんな……。そんなの狡いじゃないか。


シスター二人は互いに顔を見合わせ、ほーっと深い息を吐いた。


「別に伯爵様に何かを期待していたわけじゃありません。もっと酷い領地もあるって知っています」


シスターダフネが拗ねた口調で顔をツーンと横に背けると、シスターアイリスは苦笑して後を続ける。


「オールポート領はいいところですよ。もちろん私たちの生まれた町でもありますけど。ベンジャミン様やクラーク様たちが守ってくださいましたしね。これからは、リベリオ大司教様たちと……伯爵様も私たちを守ってくださいますよね?」


「ああ。もろちんだ」


俺の答えにみんなで笑って……大団円……ってならないんだよっ。


孤児院の子どもたちにも挨拶をと、大聖堂の裏手にある建物……これもまたオンポロだなぁ、に案内され、痩せたちびっ子がわらわらと珍しい客人に興味津々とばかりに寄ってきた。

そして、純真なクリクリ瞳で俺を見て、一言。


「豚のおじさん、だあれ?」


ぐはっ。も……もう、俺はダメかもしれない……。ガクッ。


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