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転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~  作者: 緒沢 利乃
オールポート家編

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父親、かわいいに悩む

ニコニコ顔で登場したラスキン博士と固い握手を交わしたあと、ルンルンと彼に案内されたのは増設された小屋のひとつ。


「げえっ」


そ、そこには……沢山のカイコたち。あの、前世の蚕とは大きさが桁違いのカイコたち。白くてムニュムニュしていて、博士が非常食として改良しようとしていた……カイコたちが、美味そうにクワの葉をムシャムシャしていた。


「ふ……増えましたね」


「ええ。見つけ出したカイコもいますが、増やしまた」


デデーンと胸を張ってドヤ顔するラスキン博士へお礼を言ったよ、一応ね。

後ろで引き攣った顔のディーンと「ひえええっ」と悲鳴をあげたマリーは想定内だけど、意外だったのは鉄仮面を崩すことのなかったベンジャミンではなく……。


「かわいいーっ! とってもかわいいですわ、お父様」


どこかのゆるキャラを見つけた女子高校生のテンションになってしまったシャーロットちゃんだ。

かわいい? コレ、かわいいか?


俺の頭の中をクエスチョンが埋め尽くすなか、ラスキン博士とシャーロットちゃんはかわいいカイコの話に夢中だ。

うそだろ?


俺は聞いていたくない二人の会話を早々に終わらせて、もう一つの小屋を覗くとムワンとした蒸気が顔を撫でていく。


「ここで繭から糸を。最初は上手く繭糸が解けませんでしたが、漬ける時間、水の温度、力加減と試行錯誤しました。いやぁ、楽しかった」


俺だったらうんざりとしてしまいそうな工程を笑顔で語るラスキン博士は、まさに好奇心の固まり。だからこそ「博士」と呼ばれるほどの人物となったのだろう。うん、脱帽です。

しかも、糸を紡ぐための道具などが既に作られている。


「器用ですね」


ラスキン博士ったら、大工仕事もお得意ですか?

俺の褒め殺しを浴びたラスキン博士は、スイーッと顔を背けて曖昧な受け答えを繰り返す。

はは~ん、この道具や小屋を建てたのは、ラスキン博士とは別の人間が作ったな。そう……例えばここ西側領地に住む民たちが。う~む、直接会っていろいろと話がしたいが……俺には会えないんだろうなぁ。


「彼らは税も払っていない、流民扱いの不法滞在者ですからな。さすがに領主様に堂々とは会えないでしょう」


「でも、ここの発展には協力してもらわないといけないんだ。むしろここで働いてちゃんと税金を払ってほしい」


大切な領民であることに違いはないと思っている。全ては領主として領地経営能力に乏しかったオールポート伯爵家の責任だ。


ラスキン博士は、青臭い言葉を吐く俺のことを優しい目で見てくれている。少しは白豚の評価は彼の中で上がったのかな?


「かなりオールポート領から民が出て行ったと聞きました。セシル様の元、領民たちが戻ってくるといいですな」


「そうですね。そう願いたいです」


ま、戻ってきても同じ職に就けるとは限らんがな。

特に、オールポート伯爵家に仕えていた奴らは。















「よろしいのですか? 使用人たちの復職を拒否しても?」


「ああ」


これはまだ、王都へ行く前、白豚とベンジャミンのやり取りだ。


オールポート伯爵領に巣食っていた奴らを追い出し、その噂が周辺に出回り、ぽつぽつと元領民たちが戻ってきていた。


元々、東側の鉱山地域と南側の農作地域からは余所の領地へ出ていく者が少なく、ここを出て行ったのはほとんどが領都の住民と屋敷の使用人たちだった。


戻ってきた領民たちは新しく家や部屋を借りたり、勤めていた職場に復帰したり、仕事探しに奔走したりしている。

当然、伯爵家の元使用人たちも復職を望んで、オールポート伯爵屋敷を訪れていた。


その対応をしていたベンジャミンからの「どうしますか?」とのお伺いに「ノー」と拒否ったのは俺だよ。

俺としては当たり前だったのだが、ベンジャミンの口がへの字に曲がっているのを見て、ため息を吐いてみせた。


「あのなぁ、主人たちが間違っている方向に爆走しているのを止めることもしないで、自己保身のために逃げ出した使用人なんか雇えないだろう?」


セシル君が奥さんに嵌められたとき、ベンジャミンは反対して地下牢に入れられていた。その後、当時執事長だった父親を蹴落とし、自らが執事長となりオールポート家を守ってきた。


セシル君が自暴自棄になっていて、下品ママが子どもを連れて乗り込んできたとき、陰険悪党なコーディが屋敷でのさばっていたとき、反発して下働きに落とされたのはお前だろう? ベンジャミン。


こんなクソ伯爵家なんて辞めてどこかへ出ていけばよかったのに。下働きとなってコーディたちにバカにされてもここに残って、正当な跡継ぎであるシャーロットちゃんを守っていただろう?


本来、使用人ってそういうものだ。主人を諌め、間違った使用人を正し、家を守る。そこに自分を守ることまで考えたら忠義は尽くせない。


ここを出て行った奴らは、また似たことが起きればまた出ていく。

そのとき、この家の主人はシャーロットちゃんかもしれない。


そんなこと、許せるか? シャーロットちゃんが女伯爵として踏ん張っているときに、沈む船から逃げ出すんだぞ?

まだ、頑張れば沈まないで航行できるかもしれないのに、奴らが逃げ出したことで船は沈むんだ。


俺は動かしていた手を止めて、じっとベンジャミンを真っ直ぐに見つめた。


「俺はなベンジャミン。シャーロットちゃんの近くには、ベンジャミンやライラみたいな忠義者が必要だと思っている。だから、ここに残ってくれた者たちに報いたい。それなのに、出て行った奴らを迎え入れたら、お前たちの忠義の価値が揺らぐ。俺は……お前たちがいいんだ」


「……はい。わかりました」


頼むぞ、ベンジャミン。白豚には、まだまだお前たちの支えが必要なんだからな!

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