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転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~  作者: 緒沢 利乃
陰謀編 領地経営④

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201/208

領主、東リグーリの村長と手を握る

麦わら帽子よーし、水筒よーし、手袋とロングブーツ、首元にタオルを巻いたらディーンが無言で外しやがった。


今日は、リグーリの視察、農地を見て回るぞ! 備蓄倉庫を建てる場所と東リグーリに建てる騎士の詰所アーンド役所の分々所を決めて、孤児院付教会の建てる場所も決めなきゃ。東リグーリの教会にいる自称神官の爺ちゃんとも面談しないとね。


「土いじりか~、懐かしいなぁ」


実家でもプランターで夏野菜作ったりしたよなぁ。あと、姉ちゃんがハーブ育てたいってブームに乗っかって、速攻飽きたあと俺が面倒見てたんだよ。妹は姉の失敗を知っているから豆苗育てるぐらいだったけど。


「懐かしいって……ハーディング侯爵領の農地に視察でも?」


あ、やっべぇ。セシル君は生粋のお坊ちゃまで麗しの(かんばせ)の持ち主だから、土いじりなんてしたことないわ。絶対に子ども時代でも、ピッカピカの泥団子とか作ったりしてないよ。


「ば、ばかだなぁ、ディーン。俺はハーディング家での記憶もないんだぞ? あれだよ、あれ。ダイエット中の運動で……」


ダラダラと汗が背中を流れていくが、ディーンもそんなに俺の言動に興味がないのか「ふ~ん」って態度で終わった。助かったが……お前、主人のことにもう少し興味を持て! お願いだから、俺のことに注意を払え! 何かがあってからじゃ、遅いんだぞーっ。これはフラグじゃないぞー。ちぇっ。


「なに、拗ねてんですか? ほら、早く行きますよ」


「へいへい」


こうして、俺は口を尖らせて馬車へと乗り込んだのだ。

























西リグーリの村長の案内で農地を見て回る。……どちらかというと街道沿いなので一面畑ってわけでもなく、民家も多い。井戸の周りにはそれこそ井戸端会議ができるように、ベンチとテーブルが設置されている。


「こちらはクレモナに行商にも行きますから、荷馬車を持っている家も多いです。あとは、鶏や豚を飼っている家も多いですね」


村長の話に耳を傾けて、時折笑いながら走っていく子どもたちの背中を見送り、ぽてぽて畑の周りを歩く。鶏は卵、豚は肉……飼っているペットではなく、食料だ。他にも兎や鳥、猪を狩っているそう。こっちは文字どおり狩っている。農地だけど、ちゃんと肉も食っているみたいだな。よしよし。あとは魚が食べられればいいんだけど……。


「魚は南の川で捕れますよ。新鮮な魚は川で捕ってそのまま焼いて食べますが、干して保存食にもしています」


「干し魚か……。旨味があっていいな」


他にも南の果樹を植えているところで採れるキノコとかも食卓に並ぶらしい。思ったよりも栄養が取れていそうで、ホッとする。二、三軒、家を訪問して領民たちと直接言葉を交わしたあと、西の村長に見送られ東リグーリへと移動した。


東リグーリ。こちらは一面畑、畑、麦畑ーっ! 夏空の下、緑の海が広がっている。


「わあああっ! 気持ちいー」


間違いなく写真スポット。ここで撮影しないでどこでする。でも……この世界にカメラはない。もしかして魔道具であるかもしれないけど、俺は持っていない。ぐぐっ……前世では気軽に写真も動画も撮れたのにぃ。


うぇ~いと両手を挙げて背伸びをしていた背をぐんにゃりと曲げて、残念無念で麦畑を眺めていると、畑の周りには虫採りしている子どもの無邪気な姿が目に入る。うむうむ、よく食べてよく遊びなさい。


俺が爺むさいことを思っているなどと気づかず、隣に立つディーンが小声で「本当にあんな小さな子が働いている」と呟いた。どうやら昆虫採集をしているわけではなく、麦を守るため害虫駆除をしていたらしい。……おおぅ。


「西は街道もありますし、住んでいる奴も多くて働き手には困ってりゃせん。でもここは畑しかない。家も疎らじゃ。どうしたって子どもには、働いてもらわなきゃいかんのです」


東リグーリの村長が苦虫を嚙み潰したような顔をしている。村長は、この状況を心苦しく思っているのかな? だとしたら、教会を建てたあと、俺が領民たちに読み書き計算を学んでほしいと考えていることに、賛同してもらえるだろうか? そうすると、働き手である子どもの貴重なお仕事の時間を奪ってしまうのだが……。できたら、読み書きのできない大人も参加して、リグーリ全体の識字率を上げてほしいんだけど……。


俺が東リグーリの村長に恐る恐る子どもや大人の教育の話を持ちかけると、意外や意外、村長の顔が輝きだした。


「そうですか! 読み書きに計算も……。それは願ってもないことですよ、伯爵様」


ぶんぶんと俺の両手を握って上下に勢いよく振り出す村長。なんだ? なんだ? 俺の手を勝手に握っちゃダメでしょう? 不敬罪にするよ? おっさんに握られて喜ぶ趣味はない!


リグーリの領民はオールポート領の中でも教育が遅れているそうだ。やっぱり農作業の働き手だから、わざわざ勉強の時間を取ることもしない。リグーリで育ち大人になった者も読み書きができないまま。西リグーリは街道を通る行商人や旅人と交渉することもあり、読み書き計算ができる者が多いが、東リグーリではほとんどができない。


「たまに、領都や王都に出て騙されて帰ってくる者がおります。わしはそれが悔しくて悔しくて……」


ああ、わかった。わかった。ちゃんと勉強できるところを用意するから。俺のハンカチをくれてやるから、涙と鼻水拭けって。


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