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転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~  作者: 緒沢 利乃
陰謀編 社交シーズン春②

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伯爵、美しくも妖しい……

背はそんなに高くない。俺と同じくらいだろう。細身でしなやか、手足の長い、いわゆるモデル体型で、光沢のあるグレーの盛装に首元は幾重にも重なるフリルで埋め尽くされていた。小さな卵型の顔を縁取るのは懐かしい黒髪。サラサラの真っ直ぐな髪はアイドルみたいな長めの短髪で、伸ばせば美しい髪なのにと少し残念に思った。切れ長の眼は赤く妖しく濡れていて、鼻筋の通った小さな鼻に微笑みを模る赤い唇は下唇がややふっくらとしている。肌はこちらも懐かしさが沸いてくる黄みがかった優しい色で、少し日に灼けているようだった。


……で、こいつ、誰?


めちゃくちゃキレイで美しくて色っぽくて妖しくて……怖いんだけどおおぉぉぉぉぉぉっ!


「セシル、ラファエルとは知り合いだったのか?」


俺の恐怖も動揺にも気づかないポンコツ王子がなんか言っているが、俺が答えることはない。だって喉が震えて声が出ないんだもの。こわーっ。


「ダドリー殿下。私とオールポート伯爵殿は初対面です。いろいろと領地経営で手腕を発揮しているとお聞きしてご挨拶したかったのです。私は領地の厄介者ですから……せめて何かで父と兄の役に立ちたくて」


ふっと視線を落とし憂いを帯びた表情を見せる。う、うわわわわわっ、あざとーいっ! そんでもって、おバカ王子はあっさりと騙される。


「健気なことだな。ラファエルなら婚姻でも十分にプレイステッド家に貢献できるであろうに」


「ふふふ。婚姻はお祖母さまが許してくださった方でないと……。でも、お祖母さまの体調は……」


今度は苦痛を我慢するように眉を顰め、クッと軽く下唇を噛むラファエルという男。そう、こいつは男である。いくらこの世界は男が多く、神様に祈って下賜される不思議道具で男でも妊娠できる世界でも、この男の妖しさ! 傾国の美女! つまり悪女! 俺は最大限の警戒をする。


「そうか……難儀なことだ。何かあればプレイステッド辺境伯や兄に相談するのだぞ」


「はい、ダドリー殿下」


ここで恥じらいつつも笑顔……あざとーい、あざとすぎるぅぅぅぅぅぅっ。


「で、こいつがオールポート伯爵だ。セシル・オールポート・セシル、こちらはプレイステッド辺境伯の二子、ラファエル・プレイステッドだ」


さあ、仲良くしろと言いたげな笑顔にムカついて、おっさん王子の鳩尾に一発決めたいところだが、こいつに構っている場合じゃなかった。この妖しくて人外な悍ましさを纏った人物がプレイステッド家の人間? ウェントブルック辺境伯領に馬を解き放ち魔獣化させて大混乱を招こうと画策したプレイステッド辺境伯家の人間だと?


あ、怪しい!  妖しくて怪しい奴だ!


「よろしくお願いします、セシル様」


出された手を払い退けたら、俺が悪いことになるよね? 俺はビクビクしつつ差し出された手を握る。うえええぇぇっ、こわっ。


「セ、セシル・オールポートだ。おっと、座ったままですまない」


やべぇ。こいつの気持ち悪さに内心パニック状態だったから、椅子に座ったままだった。とってもマナーが悪い。俺は奴の手を握ったままゆっくりと立ち上がる。


「いいえ。王都にいる間にゆっくりとお話ができればと思っております」


「……。ちょ、ちょっと、予定は……わ、わからないかなぁ……。ハハハ」


嘘でしょ、こんな奴をシャーロットちゃんがいるオールポートの王都屋敷に招待なんてしたくないんですけどーっ。でも辺境伯って俺よりも偉いよね? こいつは辺境伯の子だけど……誘いを断ったらヤバいかなぁ。冷や汗がダラダラと垂れてきちゃった。


「セシル、どうしたんだ?」


あ……助かった……。























蛇に睨まれた俺。俺に睨まれたナメクジとはおっさん王子のこと。三竦み状態で逃げ場はなし。さあ、どうしようとなったとき、天からの助け、ハーディング侯爵夫妻がご降臨された!


おっさん王子は兄上の内心乙男(オトメン)を知らないせいか、ビビッて腰引け目で退散していったし、ラファエルはイライアス様の眼力に負けて愛想笑いを残して去っていった。残された俺は脱力して椅子に撃沈です。チーン。


「セシルにプレイステッド家が接触してくる理由がわからん」


兄上が太い腕を組んで首を傾げていると、イライアス様も顔を上に向けて思案顔。


「王都の学園でも年が離れているから同時期に通っていたわけじゃないし……。あいつ、美貌は有名だったけど、学園を卒業したら婚約者の一人も作らずにプレイステッド辺境伯領に帰っていって、そのまま領地に籠りっきり。むしろ、なんで王都にいるんだ?」


「イライアス様はあの者をご存知なのですか?」


俺の問いにパチンと軽くウインクして応えたイライアス様。どうやらイライアス様は、有名売れっ子ドレスメーカーらしく貴族で見目の良い者たちのリストを作っているそう。なにそれ、俺も見たい。


「ちなみにトップはセシルとルーカスだよ。ラファエル・プレイステッド。あいつは顔はいいけど、なんだか気味が悪い気がする」


無意識にイライアス様が手で腕を摩るのを見て、俺は激しく同意した。確かにあいつを見ている怖気が襲ってくるもんな。しかし夜会の参加者の中には麗しいラファエルの容姿にたぶらかされて、うっとりと見つめている者も多かった。


ただ……その大半がパートナーがいて、漏れなくお仕置きされていたが……。


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