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転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~  作者: 緒沢 利乃
社交シーズン秋①

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伯爵、夜会に参上!

今日はお付きのベンジャミンやディーンがいないので、馬車から下りるときの介添え人はハリソンだ。奴の分厚い手の上にぷにぷにの俺の手のひらがちょこんと乗せられる。馬車の脆いステップを恐々と一段ずつ丁寧に下りて、ふうーっと安堵の息を深く吐いた。


「お待たせしました、父上!」


ペカーッと明るい笑顔でハーディング侯爵家に到着!


「おお、セシル。待ってたぞ。うむ、素晴らしい出で立ちである。上品さの中に隠しきれないかわいさがある!」


ねぇよっ。


「父上もそう思いますか! 濃い色調なのでセシルの白い肌が際たちますね! とっても愛らしいです」


白豚だからなっ。

父上も兄上もどんなフィルターがかかっているんだ? 視力の問題どころか頭の問題だろう? 大丈夫かな。

身に余るまくる賛辞を適当に聞き流して、イライアス様に挨拶する。


「イライアス様、こんばんは。シャーロットちゃんのこと、ありがとうございました。とってもいい友達ができたみたいで、シャーロットちゃんも嬉しそうです」


「やあ、セシル。僕もシャーロットのおかげでいいデザインが浮かんで助かっているよ。ライオネルのことも感謝しているしね」


バチンとウィンクを寄越すイライアス様。やめてください、あんた人妻だろう。妻? ま、旦那がいるんだから、ややこしいことすんなっ。


俺の癒しの存在となるはずのトレヴァー君は、お屋敷でお留守番だ。見送りにくると自分も夜会に行きたくなるから、ここにはいない。残念。


「では、行きましょう」


「あ、待って兄上。父上、こちらを。我が領で新しく作る糸で刺繍しました、ハンカチーフです」


ぴらっと広げて刺繍を見せたあと、手早く畳んで父上の胸のポケットにクルクルッとインする。父上のダークグレーの上着に紺地に白い刺繡がキラリと映えますな。


「これは?」


父上は素人の刺繡に気が付いたみたいだ。


「愛娘、シャーロットちゃんが刺した刺繡です」


自慢げにふんっと胸を反らすが、やっぱり腹がデデーンとせせり出る。くそっ、これでもダイエットは順調なんだけど……。


「なに?」


シャーロットちゃんの名前に父上の眉がピクリと動くが、そのハンカチーフを受け取らないなんて言わせないぞ。


「あ、その糸を撚るの、俺も手伝いました」


「な、なにっ」


ハンカチーフを取ろうと伸ばしかけた手がピタリと止まる。ふふ~んだっ。その刺繡を刺したのはオールポートの者でも、その糸をチマチマと撚ったのは、かわいい息子の俺様だっ!


「父上、ズルいです。俺もほしい」


指をくわえてもの欲しそうな顔をするでないっ、兄上。欲しかったら、シャーロットちゃんに強請ってあげるから、今回は父上に譲ってよ。


「……うむ。礼をいう」


ちょっと複雑そうな顔だけど、とりあえずは成功かな?

俺は仲良し家族のミッションクリアに、ニコーッと笑った。























楽団が奏でる音楽がワルツよりもスローなリズムになり、ゆったりとした空気が会場を包む。

ダンスを楽しんでいた人々も、ひと休みとばかりに周りとのお喋りに夢中になっていく。


俺? ダンスなんて踊れるわけないじゃん。兄上とイライアス様は見事に踊って目立っていたけど。俺には無理。白豚じゃなくても無理。恥ずかしいよ。


父上と一緒に貴族たちへの挨拶も終わって、俺はホールの隅っこの椅子に腰かけて休憩中です。ふいーっ。


しかし……父上が「息子のセシルです」と満面の笑みで俺を紹介するたびに相手が目を剥いて二度、三度と見直すのが面白かった。きっと、あのおっさんたちは昔のセシル君を知っているのだろう。十五年近く会ってなかったら天使が白豚になっているなんて……アンビリバボーだったろう。

俺は、おっさんたちの動揺ぶりが面白かったが。


危険視していたおっさん王子ことダドリー王子は、夜会には参加しているが沢山の人に囲まれてこちらに来る気配は皆無。どうやら、王子であり見目も悪くない独身として、婚活中の方々に熱心にアピールされている。おっさん王子の笑顔が引きつっているのがおかしい。


コクンと果実水を飲んで、給仕に頼んだ軽食をつまむ。ダイエット中だからこそ食事を抜くわけにはいかない。ちゃんと噛んでゆっくりと食べれば、少量でも満足するはずだ。

でも、デザートは抜きね。お酒も控え目に。だから乾杯の一杯だけで、あとは果実水を飲んでいる。


「ん?」


ちょっと、果実水を飲み過ぎたかな?

俺は片手を上げて、ホール内を優雅に歩く給仕を呼んだ。


ト、トイレはどこですか?


親切なお兄さんに案内してもらい、無事にトイレを済ませた俺は、王城のやや薄暗い廊下をぽてぽてと歩いていた。

一人で会場には帰れるからと給仕のお兄さんには戻ってもらったので、賑やかな音を聞きながらゆっくりと風情ある廊下を歩いている。

電球とかないからね、薄暗いのよ廊下が。んで、ムダに広い王城だから廊下もすっげぇ長いの。ここで陸上部が練習できるんでは?


ところどころポツンと魔道具のオレンジ色の灯りが照らしているけど。アレだね、肝試しにもつかえるよ、ここ。ただでさえ、王城なんて権力争いの場所だったら、ドロドロした話の一つや二つはありそう。


「やっべぇ。怖い想像しちまった」


俺は気持ち歩く速度を早め……ん?

まるで、通せんぼをするように廊下を占拠する二人の男が見えるような気がする。


「よお、久しぶりだな、セシル」


あれ、セシル君の、し、知り合いですか?

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