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王の裏切り、俺の無双劇〜 追放英雄ライル、王国を無双で討つ  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第51話 召喚の光

 エルディナ連邦――首都ヴァルガード。


 その中心にそびえる《連邦統制塔》は、雲すら見下ろすほど高く、夜になれば塔そのものが巨大な魔導灯のように蒼白く輝く。

 その地下大儀式区画《儀式の間》には、連邦の最高位魔術師たちが集結していた。

 床の全域に描かれた魔方陣は、深紅と金の紋様を脈動させ、まるで大地そのものが呼吸しているかのようだった。

 幾重にも重なる円環。

 古代文字。 封印式。 次元固定術式。 魂保護陣。

 通常の召喚魔法ですら一国が傾く程の魔力を必要とする。  

 今ここにあるのは、その常識すら超越した“異世界召喚”。

 世界法則への干渉。


 天井からは巨大な魔石柱が何本も吊り下げられている。  

 内部を流れる魔力光が血管のように脈打ち、青白い光が空間全体へ降り注いでいた。

 魔術官たちの額には汗。  

 誰一人として声を荒げない。

 失敗すれば暴走する。  

 暴走すれば、この地下区画ごと消滅しかねない。


 その中心で、ひとりの男だけが、まるで子供のような目で儀式を眺めていた。


 総帥アーク。

 エルディナ連邦の頂点。  

 世界でもっとも危険で、もっとも自由な支配者。


 玉座ではなく魔方陣の縁に立ち、儀式を宝石の観察でもするかのように食い入るように眺めている。


「……ふむ。今日は、どんな“素材”が落ちてくるのか」


 その声は楽しげで、あまりにも無邪気。

 だがその無邪気さが、世界を震え上がらせるほどの残酷さを内包していた。


「失望させてくれるなよ?  私は“退屈”が嫌いなんだ」

 くつくつ、と喉の奥で笑う。

 その笑みには狂気すら見える。

 けれど不思議と、人を惹きつける魅力があった。


 やがて、静かに歩み寄る者が一人。

 宰相ダリウス=クローヴァン。

 黒衣に銀糸を織り込んだローブをまとい、まるで影が形を取ったような男。


「総帥。召喚陣、最終工程へ移行しました。

 勇者候補六名の座標固定に成功。

 まもなく次元裂開が始まります」


「おお……良いぞ」

 アークは振り返りもせず、ただ口元だけを綻ばせる。


「ダリウスよ、君の手腕には常に助けられている。   

 “外れ”ではないといいが」


「外れであれば処理するだけ。総帥の御手を煩わせることはありません」


「ふっ。相変わらず合理的なことだ」


 周囲の魔術官たちは顔を引きつらせる。

 この二人の会話は、いつ聞いても胃が痛くなる。

 世界最大級の禁術を扱っているというのに、雑談のような温度で話しているからだ。


 魔方陣がさらに輝きを増す。


「勇者候補……六名の座標固定に成功。まもなく次元裂開が始まります」


「壊すには惜しい者たちであればいいのだがな……」


 アークの瞳が、光の奔流を映して妖しく煌めく。


 魔方陣が激しく発光した。

 ゴォォォォ――ッ!!

 大気が震える。

 空間そのものが軋み始めた。


「魔力流、急上昇!!」

「第六術式層に負荷集中!  補助陣展開急げ!」

「次元壁、安定率七十二……八十九……っ!」

 魔術官たちが一斉に叫ぶ


「来るぞ」

 アークが笑った。


 どっと魔力が押し寄せ、世界が震えた。

 次の瞬間、六本の光柱が天より落ちてきた。


 白光が爆ぜた。

 六本の光柱は、魔方陣中央の一点に吸い込まれるように集まり、そこに“人影”の形を取っていく。


「魔力流、急上昇! 固定を急げ!」


 魔術官たちが慌てて呪文を唱える。


「魔方陣の第六層、補助展開。魔力の逆流を止めろ」

 ダリウスは冷静に指示を飛ばす。


 そして光が収束する。

 六人の少年少女が、床に手をつくようにして召喚された。



「……夢じゃない、よな……?」

 黒髪の少年久世レンは、床に片手をつきながらゆっくりと立ち上がった。


 膝が少し震えている。

 無理もない。

 つい数秒前までいたのは、日本のごく普通の教室だったはずなのだ。

 それなのに今は、見上げるほど巨大な天井と、見たこともない魔法陣の中央に立っている。

 空気の匂いすら違う。

 どこか金属と香木が混じったような、不思議な香 り。

 耳を澄ませば、魔力の奔流が唸るような低音まで聞こえてくる。


「いや……夢ならこんな派手な光、もっと控えめにしてほしいんだけど……目が死ぬ……」

 思わず漏れた言葉。

 本人は素で言っているが、妙にツッコミとして成立してしまっている。


 数人の魔術官が思わず顔を見合わせる。

(あれ……この子、案外肝が据わってる?)


 アークは興味深そうに目を細めた。

 突然異世界へ放り込まれた人間は、大抵もっと取り乱す。

 泣く者。怒鳴る者。気絶する者。

 この少年は混乱しながらも、まだ状況を観察していた。


「……異世界召喚、確定」

 レンの隣で立ち上がった少女がぽつりと呟く。

 黒瀬ほのか。

 長い黒髪を払いながら周囲を見渡すその姿は、妙に落ち着いていた。


「うん、まあ……死ななきゃいいけど」

 さらりと言う。

 その声に感情の揺れは少ない。


 レンは思わず振り返った。


(いやいやいやいや。なんでそんなに落ち着いてるんだよ!?)


 普通ならもっと騒ぐ場面だ。

 なのに彼女は、すでに状況分析モードへ入っている。

 視線は周囲の魔術官。

 警備兵。魔法陣。出口。

 全てを確認している。


(この人……絶対頭いい)

 レンは本能的にそう思った。

 そして少しだけ怖かった。


(すでに状況を受け入れてる……?)

 久世レンは軽く震えた。

 彼女のほうが“勇者っぽい”雰囲気をしている気がする。


「きゃっ。ひゃあああ!? な、なにここ!? 」

 茶髪ボブの少女。

 辻村ゆいだった。

 彼女は自分の服を見て絶叫する。


「えっ!?!?えっ!?!?なんで私ドレス着てるの!?」

 ふわりと広がる白い衣装。

 どうやら召喚時に勇者用の装束へ自動変換されているらしい。


「いやいやいやいや!意味わかんない!!意味わかんないって!!」

 慌てて後ろへ下がろうとし、そのまま裾を踏む。


「きゃっ!?」

 ぐらっ。

 わたわた暴れて、足がもつれてすっ転びそうだ。

 レンが慌てて支えた。


 「大丈夫!?」

 「だ、大丈夫じゃない!!ここどこ!?」



「ひえええ!? ちょっ……誰か……!

 無理……ぜったい無理です……どうして私こんな……!」

 紫髪ショートの御堂すみれは涙目で震えている。

 その背後で、なぜか天井の小石がふわっと浮き、


 カツンッ!

 柱に激突した。


「ひっ!? な、なんで!?飛んでるの!?」


(……能力が無意識発動しているな)

 ダリウスが冷静に観察していた。



「……召喚……? はいはい、わかったから」

 別方向から聞こえた声は妙に眠そうだった。


 六人の中でもっとも緊張感のない声。

 白峰かぐや。

 白髪を揺らしながら、彼女はゆっくりと身を起こす。

 小さく欠伸を一つ。

 そして周囲を見渡した。

 巨大な魔法陣。見知らぬ人々。

 誰がどう見ても異常事態。


「寝てていい……?」


「よくねぇよ!!」

 レンが反射的にツッコんだ。

 初めて会った相手なのに。

 ツッコまずにはいられない。


「だって眠いし……」

「今そういう状況じゃないだろ!?」


「そう?」

「そうだよ!!」


「でも眠い……徹夜で乙女ゲーしてたし……」

「なおさら駄目だろ!!」


「睡眠不足は健康の敵……」

「今それ言う!?」


 周囲の魔導師たちが困惑した顔を見せる。

 召喚された勇者候補が、いきなり漫才を始めたようにしか見えなかった。


 アークは思わず肩を揺らした。


「ふふ……面白いな」


「緊張感の欠如か、精神安定性が異常に高いのか」

 ダリウスは無表情のまま、淡々と分析していた。


 一方。

 柏原みのりだけは少し違った。


「す、すごい……」

 恐怖はある。

 だが好奇心が勝っていた。

 彼女は魔法陣へ近づく。


「この術式……どうなってるんだろ……」

 床に描かれた巨大な紋様を見つめる。


 複雑な文字列。

 何重にも重なる円環。

 魔力の流れ。

 普通なら意味不明なはずなのに。

 不思議と理解できる気がした。


「えっ……この部分、回路みたいになってる……?」


 魔術官たちがざわついた。


「理解しているのか?」

「まさか」


 みのり自身も混乱していた。


「え、えっと……」

 指先で紋様をなぞる。


「ここから魔力を流して……ここで増幅して……

 たぶん座標を固定して……」


 その場の魔術官たちが固まった。

 レンも固まった。


「いや理解してるじゃん!?」

 レンが思わず叫ぶ。


 こうして六名は、様々な感情を抱えながら立ち尽くしていた。

 誰も状況を理解できていない。

 理解できるはずもない。

 ほんの数分前まで。

 彼らは普通の高校生だった。

 授業を受け。友人と話し。昼食のことを考え。

 テストを嫌がり。

 そんな平凡な日常を生きていた。


 一つだけ共通していることがある。

 もう元の日常には戻れない。

 その事実だけは、全員が薄々理解し始めていた。

 

「ようこそ、異なる世界からの来訪者たち」

 アークの声は不思議な温かさを帯びていた。


 その瞬間、空気が変わる。

 恐怖よりも“魅入られる感覚”の方が勝つような、圧倒的な存在感。


「君たちは“勇者候補”だ。

 恐れる必要はない……私は、君たちに期待している」


 久世レンは、その言葉に一瞬体が軽くなるのを感じた。


(……なんだ、この人……怖いのに優しく聞こえる)


 ほのかの背筋に、冷たいものが走った。


(この人……嘘は少ない。でも、“興味”だけで人を見てる)と結論づけた。


ゆい「ゆ、勇者……? わ、私たちが……?」


すみれ「せめて帰れるって……言ってほしいです……」


みのり「な、なんか……魔法、知りたい……かも……?」


「……戦ってもいいよ……」

 かぐやは眠そうな目をこすりながら、ぽつりと続けた。


「毎日ちゃんと寝られるならだけど……。

 朝早く起こされるの嫌だし、夜更かしもしたくないし。最低でも八時間、できれば十時間は寝たい。     

 お昼寝の時間も欲しい。

 戦いの前後に仮眠が取れる環境ならなお良い」


 周囲が呆気に取られる中、かぐやはさらに続ける。


「あと、ご飯はちゃんとしてほしい。

 朝ご飯抜きとか無理。

 焼きたてのパンとか、温かいスープとか、そういうの欲しい。

 お昼も栄養あるやつ。夜は美味しいもの。

 毎日硬いパンだけとか絶対嫌。

 たまには甘い物も欲しいし、おやつも欲しい」


 他の勇者の5名「……」


「できれば果物も毎日ほしい。

 あと飲み物。紅茶とかミルクとか。

 戦った後に甘いお菓子が出るなら、けっこう頑張れると思う」


 ゆいが呆然と口を開ける。

 かぐやは気にしない。


「部屋も大事。共同部屋は嫌。個室がいい。

 静かな部屋。

 ふかふかのベッド付き。

 枕も硬すぎず柔らかすぎず。

 毛布は毎日替えてほしい。

 暑いのも寒いのも苦手だから空調も欲しい」


「空調ってなんだよ……」

 レンが思わず突っ込む。


「あとお風呂。毎日入りたい。

 広いお風呂。お湯は熱すぎないやつ。

 できれば入浴剤も欲しい。

 洗濯もちゃんとしてほしい。

 服も何着か欲しい。同じ服ばっかり嫌だし」


 かぐやは真顔だった。

 ふざけている様子はまったくない。


 「それと危険な仕事はなるべく減らしてほしい」

 レン「勇者だぞ!?」


「だから頑張る代わりに待遇を良くしてほしいの」

 

 妙に理屈が通っている。


「怪我したらちゃんと治療してほしいし、休暇も欲しい。長期休暇。できれば温泉付き宿に泊まりたい。それと図書館に精霊がいて……」


「条件が増え続けてる!」


「あと、戦いが終わったら褒めてほしい」

「そこだけ可愛いな!?」


「頑張ったのに誰も褒めてくれないのは悲しいし……」

 少しだけ視線を逸らしながら呟く。


「あと帰る場所も欲しい。安心して眠れる場所。

 追い出されたりしない場所」

 その言葉だけは少しだけ重かった。

 だが次の瞬間には、またいつもの調子に戻る。


「あと働いた分のお給料」

「まだ増えるのか!?」


「貯金したいし」

「異世界来て数分だぞ!?」


「将来設計は大事」


 レンは頭を抱えた。

 かぐやは最後にもう一度欠伸をする。


「だから……衣食住全部保証してくれて、安全で、快適で、ちゃんと寝れて、美味しいご飯が出て、たまにお菓子もあって、できれば温泉もあって、個室もあって、ロマンス小説も読めて、休暇も取れて、怪我したら治してくれて、帰る方法も探してくれるなら……」


 そこで少し考え込む。

 そして眠そうな目のまま結論を出した。


「……戦ってもいいよ」

 かぐやは大きな欠伸をひとつ漏らしながら、まるで明日の天気でも話すような気軽さでそう言った。


 その場にいた全員が固まる。

 静寂。数秒前まで緊張と混乱に包まれていた《儀式の間》に、奇妙な沈黙が落ちた。


 誰も言葉を発しない。

 いや、発せなかった。

 

 なぜなら。

 異世界召喚された直後の人間とは思えないほど、生活設計がしっかりしていた。


 「…………」

 魔術官たちが顔を見合わせる。


「勇者ってこんな感じでしたっけ?」

「少なくとも歴史書では見たことがありません」

「もっとこう……世界を救う使命感とか……」

 ひそひそ声が広がる。


 レンは頭を抱えた。


「いやいやいやいや……。

 なんでそんな交渉慣れしてるんだよ!?」


「大事だから」

 かぐやは即答した。


「人生で一番大事なのは睡眠」

「世界の危機よりか!?」


「世界は明日でも救えるかもしれないけど、今日の睡眠は今日しか取れない」


「なんか言ってることがおかしいのに微妙に説得力あるな!?」


「そんな場合じゃないよぉ!?」

 ゆいは半泣きだった。


「わ、私まだ現実を受け止められてないんですけどぉ……!」

 すみれは震えている。


「でも……睡眠は大事かも……」

 みのりは小さく呟く。


「みのりちゃんまで!?」

 レンが叫んだ。


 ほのかは静かに額を押さえた。


(このメンバー、本当に勇者なんだろうか) 

 冷静な彼女ですら少しだけ不安になる。


 「ふふっ……」

 最初は小さな笑みだった。

 だが次第に肩が震え始める。


「くく……」

 周囲の者たちが驚いて振り返る。

 アークが笑っている。

 それも、心の底から楽しそうに。


「はははははっ!」

 ついに堪えきれなくなったように声を上げた。

 儀式の間に明るい笑い声が響き渡る。


 魔術官たちが困惑する。

 互いに目配せする。

 どう反応すればいいのか分からない。

 ダリウスですら僅かに眉を動かした。


 総帥アークは滅多に感情を表に出さない。

  出したとしても、それは興味や好奇心程度だ。    

 しかし今は違う。

  本気で面白がっている。


「素晴らしい。実に素晴らしい」

 アークは笑みを浮かべたまま言った。


「え?」

 かぐやが首を傾げる。


「多くの者は、この状況で世界だの使命だのを語る。」

 アークはゆっくり歩きながら続けた。


「異世界へ召喚されたと知れば、まずこう考える」

 アークは一人ひとりを見渡した。


『なぜ自分たちなんだ』


 レンが僅かに目を伏せる。

 確かに考えた。

 というより、今も考えている。


「『どうして選ばれた』『家族はどうなる』『元の世界へ帰れるのか』」


 六人の胸の奥がざわついた。

 まるで心の中を覗かれているようだった。


「そして多くは恐怖に支配される」

 アークの声が少しだけ低くなる。


「だが君は違う」

「そう?」


「自分に必要なものを最優先に考えている」

「普通じゃない?」


「普通ではない」

 アークは断言した。


「だから面白い」

 その瞳には強い興味が宿っていた。

 研究者が未知の宝石を発見した時のような。

 子供が新しい玩具を見つけた時のような。

 危うい輝き。


「白峰かぐや」

 名前を呼ばれる。


「はい?」


「君は欲深い」

「そうかな」


「実に良いことだ」


 周囲がざわつく。

 アークは続けた。


「欲望のない人間は伸びない。何かを求める者ほど強くなる」

「じゃあ私強くなる?」

「なるかもしれない」

「じゃあ頑張る」


「単純だな」

 レンが思わず呟いた。


 だがアークは満足そうだった。


「六人とも興味深い。実に興味深い」

 光の消えた召喚陣を見下ろす。

 そこには、世界を変えるかもしれない六人の少年少女が立っている。

 まだ未熟。まだ弱い。まだ何者でもない。

 アークの目には違う未来が見えていた。


「さて、君たちは、どこまで私を楽しませてくれるだろうか」

 総帥は静かに微笑む。


 ほのかだけが小さく眉をひそめた。


(やっぱりだ)

 彼女は確信する。


 この男は優しいのではない。

 慈悲深いのでもない。

 ただ純粋に。人間の可能性に興味を持っているだけだ。

 それが善へ向くか。悪へ向くか。

 そんなことは気にしていない。

 だからこそ。誰よりも危険だった。


「大丈夫だ。君たちには“神のギフト”が与えられている」

 アークの言葉は穏やかだった。

 しかし、その一言が六人の胸に与えた衝撃は決して小さくない。


 神のギフト。

 それはゲームや漫画、小説の中でしか聞いたことのない言葉だ。

 現実ではあり得ない。

 少なくとも、つい数分前まで彼らが生きていた世界では。


「ギフトって……能力みたいなものですか?」

 おそるおそるみのりが尋ねる。

 好奇心と不安が半分ずつ混ざった声だった。


「そうだ。この世界で生きるための祝福。そして可能性だ」

 アークは満足そうに微笑む。


「可能性って言われてもなぁ……。

 俺、昨日まで普通に高校生だったんだけど……」

 レンは頬を掻く。


「私もです……」

 すみれが半泣きで同意する。


「普通の高校生ね……少なくとも、ここにいる全員が同じ状況なのは救いかな」


 ほのかは静かに六人を見た。


「一人だけなら発狂しててもおかしくない。でも六人いる。だからまだ現実として受け止められてる」


「十分おかしい状況だからな?」

 レンが即座にツッコむ。


 かぐやだけが眠そうに手を挙げた。


「私は普通じゃないよ」


「なに?」

 レンが聞き返す。


「一日十二時間寝ないと体調悪くなる」


「それただのロングスリーパーじゃねぇか!」

 思わずレンが叫ぶ。


 張り詰めていた空気が少しだけ緩む。

 ゆいが吹き出した。

 みのりも思わず笑う。

 すみれですら少しだけ肩の力を抜いた。


 その空気を切り裂くように。

 ダリウスが一歩前へ出た。


「雑談は終わりだ。

 今から各人のギフトを確認する。順に前へ。抵抗しても無意味だと思え」


(事務的ぃぃぃ……!)

 六人の心が完全に一致した。


 巨大な測定装置が運び込まれる。

 複数の魔石と水晶球が組み合わさった巨大な機械。

 見るからに高価そうだった。


 レンが前へ出る。

 測定装置に手を置く。


 次の瞬間。

 バチィッ!!

 青白い雷光が走る。

 水晶球が激しく発光し、装置の針が限界近くまで跳ね上がった。


「うおっ!?」

 レンが飛び退く。


 検査官たちが一斉に立ち上がる。


「数値が異常です!」

「測定器の故障では!?」

「測定器が悲鳴を上げています!」


「測定器が悲鳴を上げるなよ!?」

 レンが叫ぶ。


 ダリウスは表示された数値を見る。


「……数値が跳ね上がった。未発動でこの値とは」


「面白い。覚醒前のギフトでこれは破格だ」

 アークが楽しそうに笑った。


(“面白い玩具見つけた”みたいな顔してる……)

 レンは嫌な予感しかしなかった。


 《時刻転写クロック・リライト》。


 続いて。


 黒瀬ほのかが静かに前へ出る。

 周囲を観察しながら測定器へ触れる。

 すると水晶球が静かに輝いた。

 測定器へ触れた瞬間。

 頭の中へ膨大な情報が流れ込んだ。


 検査官が紙へ数値を書き込もうとする。


「……その数字、盛ってるよね」

 ほのかが淡々と言った。


「え?」

 検査官の顔が固まる。


「本来の値はそっちじゃなくて。左手で隠してる紙に本当の数値が書いてある」


「なっ……!?」


 場が凍りついた。

 図星だった。

 ほのか自身も少し驚いている。


「見えた……?」

 頭の中に情報が流れ込んでくる感覚。

 それは知識ではなく“理解”だった。


 ダリウスが記録する。


 《真視領域オブザーバー・フィールド


「解析能力は本物。実用性は極めて高い」


 アークも興味深そうに頷いた。

 ほのかは何も答えない。

 ただほのかがアークを見る目だけが鋭かった。


 そして次々と検査は進んでいく。


「次。辻村ゆい」


「は、はいっ!」

 名前を呼ばれた瞬間、ゆいは肩を跳ねさせた。

 まるで先生に突然指名された生徒のような反応だった。

 おそるおそる前へ出る。

 足取りはぎこちない。

 緊張で顔も少し引きつっている。


「手を置いてください」

「えっと……置くだけでいいんですよね?」


「はい」

「爆発とかしません?」

「おそらく」


「おそらく!?」

 ゆいの顔が青くなる。


「なんでこの人たち説明が雑なんだよ……」

 レンが思わず額を押さえた。


「事実だからな」

 ダリウスは真顔だった。


 フォローする気は一切ないらしい。


「うぅ……」

 ゆいは恐る恐る水晶球へ手を伸ばした。


 触れた瞬間だった。

 ぽうっ。 淡い光が指先から零れる。


「え?」

 ゆいが目を丸くする。


 パァァァァッ!!

 眩い光が弾けた。


「きゃああああっ!?」

 本人が一番驚いた。

 水晶球から溢れ出した無数の光が細い糸となって空中へ飛び散る。

 それは糸というより光そのものだった。

 金色にも白色にも見える神秘的な輝き。

 美しいだけでは終わらない。


 シュンッ!

 一本の光糸が天井へ突き刺さった。

 続いて二本。 三本。十本。二十本。


「うわああああ!?」

 ゆいが慌てて手を振る。

 すると光糸も連動して暴れ回った。

 まるで主人の混乱をそのまま反映しているようだった。


 シュババババッ!!

 無数の光線が検査室を縦横無尽に駆け巡る。


「回避!装置を守れ!結界展開!」

 検査官たちが悲鳴混じりに飛び退いた。


 光糸は壁をかすめ。柱を回り込み。天井を走り。

 まるで生き物のように空間を駆け回る。

 その光景は美しくも危険だった。


「ご、ごめんなさいぃぃぃ!止まってぇぇぇぇ!!」

 ゆい本人は半泣きである。


 だが止まらない。

 むしろ光糸の数が増えた。


「増えたぁぁぁぁ!?」


「落ち着け!」

 レンが叫ぶ。


「無理ぃぃぃ!!」

 さらに暴走。

 一本の光糸がレンの目の前を通過した。


「うおっ!?」

 慌てて身を引く。

 その光糸は壁に触れた瞬間、花火のような光粒となって弾けた。


 大儀式区画が巨大なイルミネーション会場みたいになっていた。


「綺麗だけど怖い!」

 みのりが叫ぶ。


「ひぃぃぃ……!」

 すみれは完全に涙目だった。


「うるさい……」

 かぐやは半分寝ていた。


 そんな混乱の中心で。

 アークだけが楽しそうに眺めていた。

 まるで珍しい芸術作品でも鑑賞しているように。


「ふふ……素直な力だ」

 口元が綻ぶ。


「どこがですか!?」

 レンが即座にツッコんだ。


 誰が見ても大惨事だった。

 しかしアークは笑みを深める。


「力は使い手の心を映す。

 彼女は純粋だ。感情がそのまま力へ変換されている」

 視線はゆいへ向けられる。


「私は混乱してるってことですか!?」

「その通りだ」


「やだぁぁぁ!!」

 ゆいはさらに混乱した。


 当然、光糸もさらに暴れた。

 検査官たちは頭を抱える。

 ダリウスだけは冷静に記録を書き込んでいた。


 《光紡ぎ(ライト・スレッド)》


 さらさらと羽ペンが走る。


 「光属性高適性。感情連動型。制御難度やや高め」


「やや高めで済むんですかこれ!?」

 検査官の一人が思わず叫んだ。


 壁には無数の光の軌跡。

 天井では光糸が蜘蛛の巣のように張り巡らされている。

 もはや芸術作品だった。


「現時点では、本人が制御を覚えれば有用性は極めて高い」

 ダリウスは淡々と答える。


「ほう。攻撃、防御、拘束、探知。応用範囲も広そうだな」

 アークが頷く。


 その評価に周囲の空気が変わった。

 先ほどまでドジな少女にしか見えなかったゆい。

 その才能は本物だった。


 ようやく光糸が収束した頃には。

 ゆいは床にへたり込んでいた。


「むりぃ……私、勇者とか向いてないよぉ……」

 涙目で呟く。

 

 しかし。

 検査官たちが見つめる評価表には、間違いなく高い数値が刻まれていた。

 アークはそんな彼女を見て満足そうに笑う。


「いや。君は案外、大当たりかもしれないぞ」

 総帥の瞳が愉しげに細められる。


 その言葉に。

 ゆいだけでなく、他の勇者候補たちも息を呑んだ。

 異世界へ召喚された六人。

 その中で最も騒がしく。最も感情豊かで。最も臆病そうに見える少女。

 彼女の中には確かに常識外れの才能が眠っていた。


 続いて名前を呼ばれたのは、御堂すみれだった。


「ひゃいっ!?」

 呼ばれただけで肩が跳ねる。

 声まで裏返った。

 もはや緊張というレベルではない。

 怯えている。

 異世界召喚されてからというもの、彼女の心臓はずっと全力疾走を続けていた。


「前へ」

「む、無理ですぅ……」


「前へ」

「は、はいぃ……」


 ダリウスに二度言われ、半泣きになりながら前へ進む。

 その姿は勇者候補というより、職員室へ呼び出された生徒そのものだった。


「大丈夫かな……」

 レンが思わず呟く。


「大丈夫じゃなさそう」

 ほのかが即答した。


「私より緊張してる……」

 ゆいも小さく頷く。

 

 ようやく測定器の前へ辿り着く。

 すみれの手は震えていた。


「て、手を置けばいいんですよね……爆発しません……?」


「不明です」

「不明ぃぃぃ!?」

 涙目になる。


 この国の説明担当はどうなっているのだろう。

 誰も安心させる気がない。


 本当に恐る恐る。

 すみれは水晶球へ指先を触れた。

 何も起こらない。


「あれ……?」


 静かだった。

 水晶球も普通に光っている。

 ゆいのような大爆発もない。

 レンのような雷もない。

 ほのかのような異常反応もない。

 すみれは少し安心した。


「よ、良かったぁ……」

 胸を撫で下ろす。

 

 ピキッ。

 天井から小さな音がした。

 

「……ん?」

 ほのかだけが眉をひそめた。


 次の瞬間。

 ガコンッ!!

 天井を支えていた巨大な魔石の一つが外れた。


「え?」

 検査官が顔を上げる。

 魔石は真っ直ぐ落下を始めた。

 しかも。 落下地点は。

 すみれの真上だった。


「危ない!」

 レンが叫ぶ。

 だが間に合わない。


 巨大な魔石は人間一人など簡単に押し潰せる重量を持っていた。直撃すれば即死。


「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 すみれの悲鳴が儀式の間に響く。


 恐怖で目を閉じる。

 落下した魔石が。彼女へ触れる寸前。光になった。


「……え?」

 誰かが呟いた。


 巨大な魔石が粒子へ分解される。

 まるで雪が陽光に溶けるように。

 すべて光へ変換された。

 

 変換された光は行き場を失い。

 一点へ収束する。


 ドゴォォォォォォン!!

 検査装置へ直撃した。

 高価な測定機器が木端微塵に吹き飛ぶ。

 水晶球が砕け散り。

 魔導回路が焼き切れ。

 周囲の検査官たちが吹き飛ばされる。

 

「きゃああああっ!?」

 ゆいが悲鳴を上げる。


「うおおおっ!?」

 レンも慌てて身を伏せた。


「え……?」

 みのりは呆然としていた。


「派手……」

 かぐやだけが欠伸をした。


 煙が立ち込める。

 その中心にいるのは。

 無傷のすみれだった。


「……あれ?」

 本人が一番困惑している。

 周囲を見る。

 検査官たちが倒れている。


「えぇっ!?わ、私じゃないですぅぅぅ!!」

 顔が真っ青になる。


 ダリウスは煙の中でも冷静だった。

 壊れた装置を観察する。

 散乱した魔力の痕跡を調べる。

 そして結論を出した。


「攻撃を消したのではない。災厄を別の形へ変換した」

 ダリウスは記録用紙へ書き込んだ。


 《厄災転化カタストロフ・リバース》。


 羽ペンが止まる。

 珍しく。本当に珍しく。

 彼の眉が僅かに動いた。


「……危険だな。攻撃を防ぐだけではない、受けた災厄そのものを別方向へ反転させる能力だ」


「つまり?」

 ゆいが尋ねる。


「彼女を攻撃した場合」

 ダリウスは壊れた装置を見る。


「攻撃した側が被害を受ける可能性が高い」


「え?」

 すみれ本人も固まった。


「さらに制御不能」

 ダリウスは淡々と続ける。


「発動条件不明。転化先不明」


「えぇぇぇぇ!?」

 本人が悲鳴を上げた。


 「なるほど、厄災そのものを味方につける力か。

 非常に興味深い」

 アークの評価は高かった。


 だがダリウスは違った。

 彼は記録の最後にこう書き加える。


『最優先監視対象』


 続いて前へ出たのは、白峰かぐやだった。

 水晶球の前まで来ると、小さく欠伸をした。


 検査官が咳払いをする。


「魔力反応を確認します。水晶へ触れてください」


「はいはい……」

かぐやは水晶に、気の抜けた動作で触れる。


 水晶球が静かに輝いた。

 月明かりのような光が広がっていく。


「魔力の質が特殊だな……」

 ダリウスの目だけは鋭く細められていた。


「高い……いや、異常に安定しています

 まるで熟練の魔術師のような反応です」

 検査官は驚く。


 《月写し(ルナ・ミラー)》。



 「次は柏原みのりさん」

 検査官に呼ばれ、みのりはびくりと肩を震わせた。


「ひゃっ!?」

 まるで今気づいたかのような反応だった。

 先ほどまで魔法陣の構造に夢中になっていたため、自分の番が来ていることを忘れていたらしい。


 慌てて頭を下げながら前へ出る。

 三つ編みがぴょこぴょこと揺れた。


 恐る恐る水晶球へ手を伸ばす。


 ゴォォォォッ――!!

 突如、水晶球の内部で魔力が渦を巻いた。

 部屋の空気が揺れる。

 検査装置全体が低く唸り始めた。


「なっ……!?」

 検査官たちが顔色を変える。

 みのりは慌てて手を離そうとするが離れない。

 水晶球の方が彼女を掴んでいるかのようだった。


「ひぃっ!? な、なにこれ!?」


 バチバチバチッ!!

 魔力の火花が散る。

 水晶球の内部に浮かんでいた魔力結晶が、少しずつ崩れ始めた。

 いや、崩れているのではなく、吸われている。


「魔力が減少している!?」

「馬鹿な!検査装置の魔力を吸収しているぞ!」

 魔術官たちが悲鳴のような声を上げた。


「わ、私なにもしてません!?」

 みのり自身が一番混乱していた。


 水晶球に刻まれていた補助術式が淡く光る。

 みのりの頭の中へ、大量の情報が流れ込んできた。

 魔力循環。術式構造。魔導回路。

 装置内部の仕組み。

 すべてが一瞬で理解できる。


「えっ……?これ……こういう仕組みだったんだ……」

 みのりの目が大きく開かれる。


「なに?」

 レンが首を傾げる。


 みのりは無意識に装置へ触れた。

 検査装置の一部が勝手に分解され始めた。


「なんで分かるの!?」

 レンが叫ぶ。


「わ、私にも分かりません!?」

 みのりも叫ぶ。


 装置はさらに分解されていく。


「この部分が魔力変換機構で……ここが出力制御で……こっちは補助回路だから……」


「やめろぉぉぉぉっ!!」

 検査官たちの悲鳴が響いた。


 ついに装置が全壊する。


 沈黙。

 かぐや以外の勇者全員が言葉を失った。


「対象の能力を解析しています」

 検査官が震える声で報告する。


「違う」

 ダリウスは即座に否定した。


「解析ではない。このギフトは"喰らっている"」


「喰らう……?」

 レンが聞き返す。


「魔力、知識、技術、経験。

 対象の持つ要素を取り込み、自らの成長へ変換する能力だ」


「つまり私……食べるんですか?」

 みのりは青ざめていた。


「比喩表現だ」

「よかったぁ……」


 全然よくない。レンはそう思った。

 アークは楽しそうに顎へ手を添える。

 その瞳は完全に好奇心に満ちていた。


「危険だが……ふふ。実に面白い素材だ。

 敵を倒せば倒すほど成長する。強者を喰らえばさらに強くなる。

 しかも理論上、成長限界が存在しない」


 アークは続ける。


「育てば軍を一人で壊滅させる。国家を滅ぼす、あるいは天騎士を超えるかもしれない」


「む、無理です!私そんな怖い人じゃないです!

 虫もあんまり触れません!」


「関係ない」

 ダリウスが即答する。


「ひどい!?」

 涙目になるみのり。


暴喰進化グラトニー・エヴォルブ》。


 ダリウスが書類をまとめ、冷徹に宣言する。


「これより六名を“勇者育成区画”へ移送します。

 逃亡は不可能です。そのつもりで」


「ひっ……む、無理無理無理無理無理っ!

 育成ってなに!? 怖いんだけど!? その言い方がもう怖いんだけど!?」

 ゆいの顔色が真っ青になる。

 ぶんぶんと首を振る。


検査官「落ち着いてください」


「その台詞を言う人が一番怖いんだよぉ!!」

 半泣きで叫ぶ。

 ダリウスは眉一つ動かさない。



「帰りたいですぅ……!

 お母さんに連絡もしてないのにぃ……

 スマホも圏外だしぃ……知らない人ばっかりだしぃ……異世界とか意味分からないしぃ……」

 すみれはとうとう涙をこぼした。


 その周囲では小石が勝手に浮き始めている。

 感情に反応してギフトが暴走しかけているのだ。

 魔術官たちが慌てて後退する。


「危険です!」

「刺激するな!」

「本人が泣いてるだけで被害が出る!」


「ひどくないですかぁ!?」


 レンは頭を抱えた。

 召喚されてまだ一時間も経っていない。

 なのにもう精神的疲労が凄まじい。


(なんなんだこのメンバー……)


 隣を見る。

 かぐやは欠伸をしていた。


「……お布団ある?」

「聞くことそれ?」


「大事」

 即答だった。


「育成区画って個室?」

「知らないよ!」


「じゃあ重要事項だね」


「何を基準に生きてるんだお前!?」

 レンが叫ぶ。


 その様子を見ていたゆいが思わず口を開く。


「なんかもう……この人すごいな……

 私だったら泣いてるよ……」


「泣いてる人ならそこにいる」

 レンがすみれを指差した。


 レンが一歩前へ出る。

 震える手を握り締める。

 勇気を振り絞るように。


「……せめて……僕らは……帰れるんですか?」


 その問いを口にした直後だった。

 レンはふと気付く。


(……あれ?そういえば俺たち……何のために呼ばれたんだ?)

  今さらながら、とんでもなく大事なことを聞いていない。

  次から次へと情報を叩き込まれ、頭が完全に追いついていなかった。


 アークは微笑んだ。優しい声で。


「戦果をあげれば、帰すことも考えよう」

 その微笑みは、残酷なほど美しかった。


「ほ、本当ですか……?帰れる可能性……あるんですよね……?」

 すみれも涙を拭う。


 ほのかだけは違った。


(帰すとは言ってない。……この人、“興味”以外で動く気がゼロだな)

 心の中で冷静に分析する。


 勇者たちが連行される中、アークは光の消えた魔方陣を見下ろす。


「さて……この世界は、再び動き始める」

 その声には期待と愉悦が混じっていた。


ダリウス「魔族との戦況は、まもなく激化します。勇者たちの成長次第で戦略も変動を」


「良い。

 彼らがどこまで育つか……それこそが、私の楽しみだ」


 こうして――

 六名の少年少女は“異世界の戦争”へと組み込まれていく。


 異世界召喚の直後。

 現実を受け止める暇もないまま導かれていく六人。


 しかし、誰も知らない。

 この六名の勇者が、後に“天騎士”すら脅かす存在となり、世界の均衡を揺るがす存在になるかもしれない事を。


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