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王の裏切り、俺の無双劇〜 追放英雄ライル、王国を無双で討つ  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第46話 王国滅亡、その余波は世界を揺らす

 その報せは、夜の静寂を砕く雷鳴のように、世界に走った。


 ――アルヴェリア王国、滅亡。

 ――アルトレウス三世、反乱軍により討伐。

 ――新王女エルシア、即位。


 それを運んだのは、青い翼を持つ鳥だった。

 夜空を裂き、魔力の尾を引きながら、各国の通信塔へと突き刺さるように降り立つ。

 各国の政庁や軍部は一夜にして修羅場に変わる。


「王都が……? 落ちた……だと?」

「反乱軍? いや、内部の抗争だったのか!?」

「王族はどうなった!? 生存者は!?」

「新王女が即位したらしいぞ!」


 ざわめきは国境を越え、街から街へ、

 王から民へ、商人から冒険者へと伝播していく。


 世界が、“同じ話題”で揺れる。

 その揺れ方は、国によってまったく違っていた。


 ――ある国は、混乱と恐怖に震え。

 ――ある国は、これを権益拡大の好機と見た。

 ――ある国は、魔族の影を疑い警戒を強めた。


 だがこのとき世界は、まだ知らなかった。


 この滅亡はただの崩壊ではなく、

 もっと巨大な嵐の“最初の風鳴り”にすぎないことを。



 世界有数の浄域国家・聖王国ルミネリア。

 その中心にそびえる、

 白亜の聖堂――ルミエール大聖堂。


 朝陽を受けて黄金に輝き、空気そのものが祈りに満ちている。

 神聖な光は、柔らかく、しかし確かに世界を“浄化”していた。


 その祭壇の前。

 静かに祈りを捧げていた少女がひとり。


 セラフィア・ルミナス。

 聖女であり、王。

 穏やかな気配を纏いながらも、どこか“人ならざる威厳”を漂わせる少女だ。


 重い扉が乱暴に押し開かれた。


「せ、聖女様! 大変です!」


 駆け込んできたのは、神官長エルミア。

 息は荒く、額には珍しく汗が浮かんでいた。


 セラフィアはそっと瞳を開く。


「落ち着いてください。何があったのですか?」


「聖女様。アルヴェリア王国が……滅びました」


 短い沈黙が落ちる。

 それはとても長く感じられた。

 聖女は目を伏せ、祈るように胸元にそっと指を添えた。


「……ついに、その時が来たのですね」


「反乱軍が王を討ち、新たな王女エルシアが即位したと、報せが……!」


「即位、ですか?」


「は、はい! しかし反乱の中で立った王女など、認めるべきか」


 セラフィアは小さく息を吸い、目を閉じた。


 しばしの沈黙。

 だが神官長は知っていた。

 彼女が沈黙するとき、それは“覚悟を決めているとき”なのだ。


「認めましょう」


「……! せ、聖女様!?」


「血筋だけで国は救われません。

 民を守りたいと願い、前に立つ者。

 それが誰であろうと、私はその背を支えます」


「しかし……反乱で立った王など!」


「それでもです。もし彼女が、民を守りたいと願うのなら、私はその想いを尊びます」


 その声音は静かだが揺るぎない。

 神官長は胸の内に熱を感じ、ひざをついた。


 そこへ、別の重臣が慌ただしく飛び込む。


「聖女様、魔族穏健派との“和平交渉”の件ですが……

 この騒ぎで、いったん凍結すべきと他の聖騎士たちが」


「続けなさい」

 聖女は迷わなかった。


「……っ!? ですが」


「争いを望まない者がいるのなら、

 対話の価値は必ずあります」


 淡々と言いながらも、

 その瞳には強い光が宿っていた。


「しかし、魔族は古来より」


「憎しみだけで世界は回せません。

 憎しみが支配するなら……

 世界はいつか、ほんとうに終わってしまいます」


 朝光が差し込み、

 聖女の横顔を神々しいまでに照らす。


 その姿を見た者は皆、胸の奥に熱いものが生まれるのを感じずにはいられなかった。



 鉄と血で覇を築いた北方最大の軍事国家・クロイツ帝国。

 黒鉄の城塞――皇帝城グラディウス。


 黒鉄造りの砦城、軍旗が翻り、武具の金属音が響く。

 その中心である皇帝の執務室。

 巨大な軍略地図を前に、帝王クロイツ・グラディウスがゆったりと椅子にもたれていた。

 その瞳はいつも冷えたまま、情を感じさせない。

 重い鉄靴の音を響かせ、軍務卿が進み出てひざをつく。


「陛下……アルヴェリア王国、滅亡しました。

 反乱軍が王を討ち、新王女が即位したとのことです」


「くだらん」

 帝王は、ため息のように言い捨てた。


「は、は?」


「王が変わろうが、国の価値は変わらん」

 指先で地図を軽く叩く。


「重要なのは、どう利用するかのみだ」


 軍務卿はごくりと喉を鳴らす。

 帝王にとって、他国の滅亡など“ただの数値”でしかない。


「では……今こそ、軍を進める好機かと。

 混乱したアルヴェリア領を帝国の保護下に」


「焦るな」


 帝王はゆっくり地図をなぞり、

 国境を滑らせ、 敵対国家の位置を確かめた。


「混乱は熟すほど旨味が増す。

 こちらが動けば連邦が警戒し、

 南方同盟も余計な介入を始めるだろう」


「……静観、ですか」


「ああ。

 いずれ王女エルシアとやらが統治に失敗すれば、

 その時こそが喰らう時だ」


 薄く笑う。


「潰す価値がある国なら、とっくに潰している」


 この男は本気でそう思っている。

 帝国は、あくまで“冷静に”、滅亡の余波を見定めるつもりだった。


 世界の端々で、“小さな波”が同時に立ち上がる。


◆ 海運国家・スレイオス


「王国崩壊?

 交易路の再編チャンスじゃないか!」


◆ 砂漠の遊牧部族国家


「新王女?

 力を見せたら認めよう。」


◆山岳同盟


「反乱……魔族の影はないのか?」


 波紋は広がっていた。

 ただまだ“静かな揺れ”。

 嵐の前触れに気付く者は、ほとんどいなかった。



◆アルヴェリア王国


 すでに瓦礫の修繕が始まり、兵士と民が右往左往し、混乱はなお続いていた。


 王城の謁見の間。

 玉座に座る少女。 新王女エルシア・アルヴェリア。


 その表情には不安も動揺もある。

 だが、それ以上に宿っていたのは“覚悟”だった。


 次々と側近たちが報告を持ち込む。


「聖王国より正式に返答が!

 “新王女エルシアを承認し、友好関係を結ぶ”とのことです!」


 場の空気が一瞬止まり、次いで歓喜が広がる。


エルシア

「聖女セラフィア様が……受け入れてくださったのですね」


 胸に手を当て、そっと笑みを浮かべる。

 場がどよめき、侍従たちが歓声をあげる。


「しかし、帝国は……沈黙を貫いております。

 軍を動かす気配はなくとも……これは不気味です」


「我が国の弱体化を待っているのかと」


 エルシアは小さくうなずいた。


「帝国が静かなときが……いちばん危険です。

 彼らは必ず“隙”を狙ってきます。

 警戒を強めましょう」


 彼女の声は震えていない。

 国を背負う覚悟が、確かに芽生えつつあった。

 その眼差しは、王を討った反乱の夜を思わせるほどに鋭かった。


 その頃。


 遠く離れた“エルディナ連邦”。

 連邦魔導院の最奥で、

 巨大な魔法陣がゆっくりと輝きを増していた。


「魔力値、上昇中! あと七十秒で完成します!」


「次元座標、安定! 勇者召喚の準備は整った!」


「……本当にやるのか?

 異世界召喚なんて、大陸史でも数えるほどだぞ……!」


 魔法陣が白鏡のように光り始め、

 異世界とこの世界をつなぐ“門”が開きつつあった。


 ――異世界召喚の儀。

 ――新たな勇者の到来。


 世界は確かに動き始めていた。


 アルヴェリア王国の滅亡は、ただの終わりではない。


 戦乱と召喚と陰謀が渦巻く、

 新たな世界の序章にすぎなかった。


 そして――

 これから起こる“本当の激震”を知る者は、

 まだどこにもいなかった。


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