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王の裏切り、俺の無双劇〜 追放英雄ライル、王国を無双で討つ  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第45話 総帥アーク、玉座にて世界を見下ろす

 エルディナ連邦・首都ヴァルガード。


 その中心にそびえる白銀の塔――総帥宮殿。


 最奥にある“総帥の間”は、まるで世界のすべてを俯瞰するためだけに造られたかのように広大で、静寂に満ちていた。


 床には円形の“世界投影陣”が淡く輝き、

 神代の技術で作られた魔導投影が、大陸全土の状況を立体映像で映している。


 漆黒の玉座に、ひとりの青年が座っていた。

 青年、と言ってもその実年齢は五百。

 だがその姿はどう見ても二十歳前後。

 銀髪をさらりと流し、深い蒼の瞳はまるで世界そのものを見透かすように冷静だった。


 エルディナ連邦 総帥。

 アーク・エルディナ・ヴァルガード。


 「……退屈だ」

 

 空気を震わせることなく、ただ静かに言葉が落ちる。


「世界はいつになれば、僕の期待を超えてみせる?」


 その声には怒りも焦りもない。

 ただ、底なしの知性と“退屈への飽き”があった。

 抑揚の少ない低い声が、静かな玉座の間に落ちた。


 重い扉が静かに開く。


 膝をついたのは、鋭い双眸を持つ一人の男。

 宰相ダリウス=クローヴァン。


 総帥アークの代理にして、連邦の実務すべてを担う男。

 青黒い長衣をまとい、無駄な動きの一つもない。

 その目は常に冷静、常に計算している。


「総帥アーク様。

  魔族戦線より……最新の戦況報告が届きました。」


 アークは微動だにせず、もう一度瞳を閉じた。


「話せ」


 魔導投影が戦争地帯を拡大し、赤い炎と黒煙のような光が波打つ地帯が映し出される。


「魔族との交戦区域。

 防衛線は……さらに後退しております」


 黒い領域が、じわじわと広がる。

 人の領域が、侵食されていく様が淡々と映し出される。

 抑揚はない。

 だが、深刻であることは明らかだった。

 

「……天騎士は?」


「五名中、三名を前線に派遣済み。

 しかし戦域が広く、全域の制圧は困難です」


 「そうか」


 アークは、ため息の代わりのように玉座の肘掛けに手を置いた。


「人という種は、やはり脆弱だな」


 ダリウスは、無言で頭を下げた。

 その評価に異論はない。

 だが続く言葉は、宰相が想像したものとは違った。


「“魔王に辿り着く前で散ってしまう”ほどに、だ」


「……!」

 わずかに、ダリウスの肩が揺れる。


「誤解するな。天騎士は弱くない。

 僕が育てた、人類最高到達点だ」


 だが、とアークは視線を投影地図へ向けた。


「魔族の王。“あれ”を倒すには、万全で辿り着く必要がある」


 アークの声には、今までと違う熱があった。


「僕は……魔王との一騎討ちなら必ず勝つ自信がある。

 ただし、道中で魔族に手傷を負わなければ、の話だ」


 投影地図の“黒い領域”が大きく瞬いた。


「今の戦況では、魔王まで辿り着く前に僕が消耗する。

 それでは勝算は、限りなくゼロに近い」


「だから僕は“素材”を集め続けている。

 世界を、設計し直すために」


 ダリウスは戦慄した。


 総帥アークの最終目的。

 それは『人類統治』でも『世界支配』でもない。


 ただひとつ。


『自分に敗北を与えた魔王を殺すこと』


 それだけ。

 そのためだけに、五百年という時を生き続けている。


 玉座に座ったまま、アークは小さく息を吐いた。


「続けろ、ダリウス」


 ダリウスは姿勢を正し、次の資料を広げた。


「次に、アルヴェリア王国に関して。

  反乱軍と名乗る者たちが国王アルトレウス三世を討ち、王都を制圧したとの報告が」


 アークは瞼すら動かさない。


「……で?」


「反乱軍“血盟”が……」


「知っている。

 アルトレウス三世との戦闘を見たが……

 退屈だった」


 アークは首をわずかに傾ける。


「天騎士であれば誰でも処せる相手だ。

 あれでは素材にもならん」


「脅威には……?」


「まったく。興味もない」


 冷たく切り捨てる。


「弱い国は淘汰される。

 この大陸では、それが自然の摂理だ」


 ダリウスは深く頷く。


「承知しております。

  この件は総帥の時間を奪うほどの案件ではありませんので、  私が処理しておきます」


 ダリウスが一冊の魔導書を開く。


 その瞬間――

 アークの瞳がわずかに光を帯びた。


「……総帥様が求めていた“儀式”。

  異世界召喚の準備がまもなく整います」


「ようやくだ」


 小さく笑う。しかし、その笑みは氷よりも冷たかった。


「この世界だけでは、素材が足りない」


「今回も地球――日本と呼ばれる地から

  勇者適性者を強制召喚いたします」


 アークは静かに頷く。


「あの世界の勇者因子は優秀だ。

 天騎士の原型にした異世界人の血も、

 やはり質が高い」


「しかし毎回、召喚された勇者は魔族に倒され、

  捕虜となるか、失踪しています」


 アークは目を閉じ、感情のない声を落とす。


「失敗作は処分すればいい。

 何度でも呼べる」


 その冷酷さに、ダリウスの背筋がわずかに震えた。



 魔導投影が切り替わり、巨大な円陣が映る。

 異界の言語、神々の符号、光の線。


「“異世界召喚陣”の構築、すべて完了しました。

  あとは総帥様の指示ひとつで、発動できます」


 アークの指が軽く動く。


「……そうか」


「準備を整えておけ。

  次の素材は、少し期待している」


 ダリウスは一瞬だけ、薄い笑みを浮かべた。


「勇者という存在には感心します。

  理不尽に召喚され、戦わされ……

  それでも必死に従う。

  あれほど従順な」


 アークの声が遮った。


「奴隷ではない」


 その一言で、部屋の温度が一瞬下がる。


「あれは“素材”だ。

  勘違いするな」


 ひざまずくダリウスの肩がわずかに震える。

 アークは続けた。


「僕はただ、この世界を“再設計”するために

  必要な力を集めているだけだ」


 異世界人=材料

 世界=作り替える対象

 魔族=研究材料

 天騎士=試作品


アーク「世界は、私に何をもたらす?」


 呟いた瞬間。

 宮殿地下から、

 ゴォォォォ……ッと不気味な光が立ち上る。


 “異世界召喚陣”が起動を開始したのだ。

 床が震え、空気が軋む。

 アークは一歩も動かず、その気配を受け止めた。


「さあ、始めよう。

  世界の再設計を」


眩い閃光が宮殿を貫いた。


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