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王の裏切り、俺の無双劇〜 追放英雄ライル、王国を無双で討つ  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第41話 終紅・世界葬滅

 王城最上階――王国の栄華を象徴した大聖堂と呼ばれた場所は、今や光も、秩序も、理すらも蕩けてしまった狂気の渦。

 地面は歪み、瓦礫は宙に浮かび、崩れた塔の破片だけが重力を思い出したように落ちてくる。


 そんな大聖堂の中心で、一人と九人が激突していた。

 アルヴェリア王国の王、アルトレウス三世。

 対するは――血盟の九人。

 ライル、セリア、ルネ、エリシア、カラム、ゼイル、ミレーヌ、グロス、ゼス。


 激突は、既に百合以上。

 誰が最初に攻撃したか。

 そんなもの、もう覚えてはいない。

 ただ、永遠のような時間。

 互いに決定打を打てず、力と力だけがぶつかり合う、無慈悲な均衡。


「――っく! やっぱり、固いんですけど、このオッサン!!」


 ルネの矢が王の防御術式に弾き返され、閃光と共に空へ散る。


グロス

「“オッサン”と呼ぶなら全力で逃げる準備しとけ。怒るぞ、あれは」


 ゼスが無表情に呟き、次の瞬間、王の白銀の剣撃を受け流す。


「受け流しのレベルじゃねぇよ! 骨ごと持ってかれんぞォ!?」


 グロスが盾を構えて突っ込み――

 盾ごと吹っ飛ばされ、壁だったはずの瓦礫にめり込んだ。


「オイ! てめぇ、ライル!! あとで治せよ!! 俺の肋骨!!」


「俺じゃねえ! エリシアだエリシア!」


「わ、わたしですか!?」


 エリシアが慌てて駆け寄り、両手を掲げた。

 白銀の光輪が仲間全体へ降り注ぎ、 再生、強化、結界補助

――すべてを同時に展開する。

 その顔は青ざめていた。


「……神聖力の消費が……っ。でも、まだ立てます! 全員、下がらないでください!」


「頑張れエリシア! 父親ぶっ倒すのは今しかないよ!」


「ルネ、言い方ァ!!」


 そんな掛け合いすら、王にとっては戯れ言。


 アウレリウス三世は、ただ静かに剣を振るう。

 それだけで、世界がひっくり返りそうな衝撃が走る。


「――ほう。まだ立つか、お前たち」


 その声は淡々としていて、しかし底に燃える“王の本気”を隠さない。


セリア 「魔力循環、もっと上げるわ! 攻撃班、動き止めないで!」


カラム 「強化三段……五段……七段っ! 十秒後、攻撃効率最大! 撃ち続けろ!」


 二人の魔力演算が重なり、魔力が舞う。

 魔法演唱の加速、魔力回路の増幅、精神耐性、身体能力―― 仲間全員の能力値が劇的に跳ね上がる。

 ライルが黒焔の斬撃を振り抜く。


「――ッらぁ!!」


 王は片手の掌底で黒焔を跳ね返す。

  ゼイルが手裏剣を投げ、ミレーヌが鎌を旋回させ、 グロスが斧で地ごと叩き割り、ゼスが無言の高速連撃を叩き込む。


 が――

 いくらやっても王の防御を貫けない。


 そして、王の一撃もまた仲間の連携で止められ、互いに“勝ち切れない”まま時間だけが溶けていく。


ルネ 「……ねぇ、これ、本当に終わるの? ねぇ!? なんであの王様、死ぬ気ゼロなの!?」


ゼイル 「うるせぇ! 叫ぶ暇あんなら撃て!」


ルネ 「撃ってるよ!? 撃ってるけど効かないんだよぉ!?」


アルトレウス三世「小娘。騒がしい」


ルネ 「ひぃッ!?」


  徐々に、仲間たちの息が荒くなる。


カラム 「……不味い。バフ効率……落ち始めた……」


セリア 「エリシアの神聖力、限界が……!」


エリシア 「だ、大丈夫です私は……へ、平気……!」


 まるで戦いそのものがループしているように、同じ攻防が繰り返される。

 

 完全な膠着。


 ――このままでは、どちらかが魔力切れで先に死ぬ。


 だが、その役目は絶対に自分たちではない。

 その確信を、ライルが持っていた。


 ――そして。


 沈黙の中、ひとり――歩み出す影があった。

 黒焔剣を肩に担ぎ、

 真剣、静か、だが熱を秘めた瞳。

 ライルだ。


 彼の足音だけが、壊れた神域に響いた。


セリア

「……ライル?」


ゼイル

「おい……団長?」


 アルトレウス三世の視線が細められる。


 ライルは――淡々と言った。


「……なぁ、アルトレウス」


 仲間が振り向く。


 敵であるはずの王でさえ、わずかに眉を動かした。


「そろそろ終わりにしないか。

 次の一撃で――全部決める」


 その声音は静かだが、燃える核心があった。

 勝利に飢えた獣でもなく、英雄でもなく――

 ただ、仲間の未来を守る男の声。


 アルトレウス三世はゆっくりと剣を掲げた。


「……神の門が開くまで、残り半刻。

 持久戦で勝つのは美しくないな」


 そして――笑う。


「良かろう。次の一撃に、全てを乗せよう。

 私の全霊――お前たち全員の“死”と共にな」


 その瞬間、世界が震えた。

 重圧。覇気。聖光。

 世界が、王の一言で色を変える。


エリシア

「ライル……どうか……どうか無事で帰ってきて……!」


 白銀の魔法陣を同時展開。

 ライルとセリアを包む。

 筋力上昇、魔力上昇、速度付与――

 エリシアは限界が近いのに、それでも笑おうとしていた。


カラム

「魔力安定、ライルに最優先!

 セリアさん、術式圧縮します!」


セリア

「任せるわ! ライル、呼吸合わせて!」


グロス

 「ついでに俺にもなんかくれ!」


 「グロスは黙れ」

 ゼイルが黒影を肩にまとわせ、ライルの背へ叩き込む。

「ほらよ……影纏だ。死ぬなよ、団長」


「死なねぇよ、俺は」


 ミレーヌは漆黒の鎌を掲げ、黒い幕をライルの背へ。

「黒鴉の護刃――《クロウ・ヴェール》。

 あなたを死なせるつもりはないわよ?」


ゼス

「……後ろ、任せた。行け」


 全員の力が、ライルとセリアに流れ込む。


 ライルの黒焔は赤黒い太陽に、

 セリアの紅蓮魔力は地獄の華のように燃え上がる。



アルトレウス三世

「神聖術 第六等級――

 《聖冠賜与》

 《光華盾環》

 《聖華譚詠》

 《天光供儀》」


さらに。

 神聖術 第七等級――

「《光冠黎明》

 《聖統万象》――!」


 六重の光が王を包み、

 視界すら奪うほどの神聖光が戦場に咲き誇る。


ゼイル

「やっべぇ……あいつ、完全に本気モードだ……!」


ミレーヌ

「冗談じゃないわね……!」



 王の詠唱が進む中――

 ひとり、そっと立ち上がる少女がいた。

 ルネだ。

 その目だけが、獣のように鋭かった。


ルネ

「……標的、捕捉。

 弱体矢……射出――!」


 金属よりも冷たい矢が空を裂き、

《弱体の矢》が王へ突き刺さる。


さらに、

《閃光炸裂矢》が眩い光を放ち、王の視界を奪う。


アルトレウス三世

「……小娘。私の術を妨げるか」


 凍てつく視線が飛ぶ。


ルネ(ビビってる)

「わ、わっ!? 怒ってる!?

 いやそりゃ撃ちますよ!?

 敵が完全に無防備で光ってたら撃つでしょう!?

 はよ倒れろバカーッ!!」


ゼス

「……お前、本当にすげぇよ」


ルネ

「えっ、褒められた? 今の褒められた!?」


ゼイル

「違ぇよ。呆れたって意味だよ」


ルネ

「ひどっ!!」


 だが――

 そのほんの一瞬、王の詠唱が揺らいだのは確かだった。


 空気が凍りつく。


アルトレウス三世

「来い。

 最後の一撃を決めよう――

 黒焔の剣士、紅の魔女よ」


ライル

「……セリア」


セリア

「ええ。落ち着いて。

 あなたとなら、やれるわ」


 二人が並び立ち、

 赤と黒の魔力が絡み合っていく。


 地鳴りが止まり、

 光と影が交錯し――


 世界が、この一瞬を見守るように沈黙した。

 アルトレウス三世の血が逆流し、天へ昇る。


 黒紅の光柱が空へ突き上がり――

 そのまま、災害のごとく落ちてくる。


アウレリウス三世

「その身で受けるがいい――

 《神威・王血天衝》!!」


 空間が悲鳴を上げた。


 セリアの足元に巨大な赤蓮魔方陣が咲く。


セリア

「最終術――《紅蓮葬華グレナ・リクイエム》……開放ッ!!」


 真紅の魔力が天を裂き、空間そのものが燃え落ちる。

 そこへライルが歩み出る。

 黒焔剣は赤黒に輝き、光をすべて飲み込んでいく。

 

ライル

「黒焔剣 最終理――

 《終焔・断罪エクリプス》!」


 黒と赤がぶつかる直前――世界が静止した。

 

 次の瞬間。

 二つの最終技が、融合した。

 赤黒の双螺旋が天へ伸び、

 巨大な光核が生まれる。


セリア

「合わせるわ、ライルッ!」


ライル

「ぶち抜くぞ、セリア!!」


 地表が割れ、空が焼け、 “世界が軋む”ほどの魔力が一点に収束する。

 赤黒の災害が一直線に走る。

 触れた大地は無音で沈み、

 遅れて爆ぜる紅黒の華が戦場を覆い尽くした。

 まるで宇宙の誕生と滅亡を同時に見たかのような光景。


 そして――


《終紅・世界葬滅》が、《神威・王血天衝》を砕いた。


 王の神威が軋み、砕け、

 紅黒の刃がアウレリウス三世の胸へ突き刺さる。


アウレリウス三世

「……馬鹿な……この我が……

 人の……技ごときに……」


 王は、静かに崩れ落ちた。



 突如、戦場を包む狂気が消えた。

 世界の色が戻っていく。


セリア

「っ……ライル……!」


 術式の反動で崩れそうになる彼女を、ライルが優しく支えた。


ライル

「大丈夫だ。……よくやったな」


セリア

「あなたこそ……馬鹿、無茶しすぎ……」


ルネ

「うぉぉぉぉぉっ!! 勝ったぁぁ!! 生きてるぅぅ!? ねぇ生きてる!? 私死んでない!?」


ゼイル

「落ち着けうるせぇ!!」


グロス

「ライル!! お前マジで化け物かよ!!」


ミレーヌ

「ふふ……最後まで、無茶する人ね」


カラム

「……終わった。やっと」


 そして――

 震える足で、ゆっくりと。

 エリシアが父の元へ歩き出す。


エリシア

「お父様……」

 その声は、涙で震えていた。


 壊れた王国の中心で、

 ひとつの戦いが終わり――

 次の物語が、静かに幕を開けようとしていた。

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