3-2:邂逅
引き出しが少ない、拙いバトルですが・・・がんばるっ
伏線の入れ方が雑で、回収が上手く出来なさそうなのも…がんばる…
禊。贖罪。懺悔。
自身の行いを認め、その罪をすべて認め。
男、レイサードは再び。
鋭い中にも、今は少し悲しさも見えるような気もする、そんな眼差しをした少女、シェルンへと。
「ゆくぞ。」
静かに告げ、己の全てを懸けて突進した。
最初に対峙した時とは違う、様子見など一切なしの、全力の踏み込み。
ウィンスト、実力はともかくフィルメリア騎士の一人から見ても勝てない位置にいるシェリーヌが、あのバケモノと認める男である。
孤高の騎士団長や、王国の至宝である姫君は別格として、フィルメリア騎士団で序列上位の騎士と相対しても、決して引けは取らない。それだけの実力は持っている。
その男の想いを、過去の自分に重ね合わせた姿を。
シェルンは避けることもなく、真正面から受け止める。
ズン!と拳が少女の鳩尾あたりに吸い込まれるように入り、それを確認するでもなく、男の残された左手は、横から首筋を手刀で狙う。
ドスッ!
どちらも綺麗に、想定通りに極まり。
(なんだっ!?これは?)
同時に違和感を覚える。
戦いの場にあって、レイサードは昼に聞いたラファイヴの報告を思い出す。
シェリーヌはこの娘との戦いに、全力を出した。
つまりフレアバーストとカーズスネークの複合魔法、シェリーヌの最大の攻撃を出したうえで、負けている。
という事は、全員に周知されている。
この攻撃は、おそらくフィルメリアの騎士であっても、単体戦闘であれば防ぐことはできないだろう。
もっともレイサード並の判断力と速度があれば避けることはできる為、上位の者たちには通じないと思われる。
だがそうなると、この少女の戦闘スタイルについて。
考えられるのは、レイサードと同じ高速度の格闘を得意とするものか、シェリーヌの魔法を破るほどの、圧倒的な魔法の使い手ということになる。
シェリーヌが得意とするもう一つの攻撃、ナイフでの攻撃がどうなったか。さすがにそれは分からない。
そして実際に対峙したのは、明らかに魔法型の人物。
肉弾戦は向かないはずの、小柄で華奢な娘。
ただ先の攻防、というのもおこがましい一方的な少女の攻撃で、隊の男は既に四人、一切の抵抗も許されず素手で倒されている。
ここまでに見たのは、その圧倒的な速さと、的確に相手の急所を狙い、落としていく一撃だけ。
防御に関しては戦闘服を着ているでもなく、甲冑を纏っているわけでもなく。
戦闘には向かない、防御力などまるで期待できない、メイド服を纏っているだけである。
そんな少女にレイサードの拳も手刀も、見る限りクリーンヒットしているはず!
だというのに少女は全く微動だにしない。まるで攻撃そのものが、無かったことのように。
レイサードの困惑を余所に、シェルンは自分の身体に直撃していない拳から発せられる、新たな衝撃を確認する。
「風属性ですね。その手甲に施された魔法、拳を打ち込んだ場所に真空の刃で追撃ですか。」
冷静にレイサードが装備している手甲、それに常時付与してある、エアサイズの魔法を。
真空の刃、カマイタチを発生させる魔法を看破する。
その上で打撃も魔法も、レイサードの攻撃に対して、まるで何事もなかったかのようにその場に佇む。
(こ、こいつは・・・)
シェリーヌも感じたであろう、違和感。
いや、シェリーヌは目の前で受け止められ、その表面に小さく浮かんだ防御結界を視認する事は出来た。
だがレイサードの攻撃、狙い通りその鳩尾に入っているように見える拳は、直撃しているように見える。
首筋に打ち込んだ手刀の接点は、レイサードからは見えない死角となる斜め後ろ側に入っているため、レイサード自身の感覚、見た目では直撃しているように見える。
どちらも届いていないことに、即座には気付かない。
その防御結界は、決して無限の魔力を持つわけではないシェルンの為にセラフィーナが編んだもの。
シェルンが常時使える魔力量に合わせて、魔力消費量は抑えられているが、相手の攻撃によって発生する衝撃を、それどころか魔法すらも、全て吸収し無力化する。
カーズスネークのような浸食型の魔法も、浸食を感知した瞬間に逆解析して分解する。
必要になった瞬間だけ、必要になった部分だけに生成される、セラフィーナが長年の研鑽で編み出した、アクティブシールド。
常時展開型の結界と比べ、消費魔力は劇的に少なく、しかし術式を編んだものの実力を反映し、その防御力は絶大である。
もちろん無効化できる上限はあるが、その上限には一般的な人の域にいる者たちでは、まず届かない。
もちろんレイサードはソレに気付けるわけもなく。
この自分よりはるかに軽く体格も小さな少女が、拳の勢いで吹き飛ばされることもなく、態勢が崩れることもない。
明らかに異常であるとしか、認識できない。
更に重い攻撃の直撃を受けても無傷で、二段構えでダメージを与えるはずの魔法まで解析までしてくる。
もとより届かないことは分かっていたが、ここまで話にならないとは!
避けられるならまだ分かる。この少女の尋常ではない速度は、既に体感している。
だが、今の状況は理解できない。
シェリーヌも感じた「ありえない」という感覚。
「くっ!」
拳を難なく止められ追撃も無効化された今、拳を突き入れたままで静止するのは危険!
シェリーヌはここで一度下がったが、レイサードは既に下がることは考えていない、ここを終わりと決めている男は、さらに追撃を試みる。
初撃の腕を引き、そこからすさまじい勢いで回し蹴り!
彼の靴も手甲同様、戦闘用の鋼鉄製であり、徒手空拳を主とするレイサードの武器である。
手甲同様魔法も仕込んであり、そのつま先とかかとは鋭利な刃物として機能する。
その靴、ブーツのかかとにある、金属製の刃が仕込まれたその部分を、少女のこめかみに向け。
バキンッ!
振り切ろうとした脚がはじき返され。
鋼鉄製のブーツがバラバラに砕け散る!
レイサードの高速回し蹴りを、シェルンとは比べられない体格の男が繰り出した重い一撃を・・・
明らかに体重が半分にも満たない、華奢な少女が左手の裏拳、その一撃ではじき返す!
「ぐっ!?」
物理的におかしい。
普通は攻撃が正面からぶつかった場合、当たり前だが軽い方が弾き飛ばされる。
ウェイトが同格であれば、同じ勢いの攻撃をあてて、やっと両者ともその場に留まる。
だが自分の体重と目の前の少女の体つきでは、物理的にありえない現象。もし仮に少女が床に固定されているのであれば、確かにその限りではないが。
回し蹴りを弾き返したシェルンの一撃は、セラフィーナの力を一切使っていない、彼女自身の力。
自分の魔力を瞬間的に凝縮、圧縮し、相手と接触する箇所に、指向性を持たせて爆発させる。
裏拳はあくまでも形だけ。
小柄な少女であるシェルンにとって、物理的な攻撃はさほど意味がない。
彼女の攻撃は専用の武器を用いた場合を除き、基本的に魔力を様々な形に編み、凝縮して、相手に爆発的な衝撃をぶつける。
自身には影響が無いよう、全ての攻撃は相手への指向性を持たせ、弾き飛ばす形で。
シェルンはセラフィーナと同じ期間、生き続けている。
キャパシティは比べられないとはいえ、同じ期間鍛錬を重ねている。
その量は常人の人生何回分の修練を積んでいるのか。
それは決して才能だけでも、鍛錬だけでも、人の域にいるうちは、決して届かない。
シェルンに足を弾き飛ばされた瞬間、その足から伝わる激痛がレイサードの脳を貫く。
見た目だけであれば、回し蹴りをはじき返しただけの、殆ど動いてない一撃。
だがその一撃は、当然レイサード自身が放った蹴りの破壊力と、少女の放った裏拳に乗せられた、回し蹴りをはるかにしのぐ魔力爆発の破壊力。
その二つが加算された衝撃を生み出している。
そして一方が無傷であれば、当然その破壊力はもう一方だけに集中する。
弾き飛ばされ最低でも踵の骨は砕けているであろう、下手をすれば足首から下の骨が全て砕けているかもしれない。
そんな激痛に痺れる脚を何とか引き、もう片足でなんとか後ろに飛び下がって距離を取る。
この一瞬の攻防でわかった。
この少女は所属する組織の中でも第二位、フィルメリアの騎士団上位ともやり合える、レイサードから。
シェリーヌにとって「あのバケモノ」から見ても。
人外であると。
―― 対象の戦意喪失を確認。
「もう少し、抵抗されるかと思いましたが。」
冷静に男の力量と、自分との差を推し量り。
そして男の今の心境。おそらくはここを墓場にすると決めていたであろう、その心情を考慮し。
この男は、もう少し抗戦する。そう考えていた。
だがレイサードにとっては、これ以上この場で戦っても、あまり意味がない。
彼我の力量差は同じ土俵に乗せる事すらおこがましい、レベルの桁が違うという事を、この一瞬で思い知った。
そしてこの少女はおそらく自分に合わせて、気持ちを汲んで、贖罪の場として受け止めてくれてはいる。
だが決して、この少女は自分を断罪などしない。
それも、見えてしまった。
「戦っても勝ち目はない。そして、お前は俺を止めるだけで、決して命は奪わない。そうだろう。」
脚の怪我は尋常ではない痛みを齎しているが。
レイサードは冷静に、これ以上交戦しても、決して自身が望む最後の戦いにはならない。
そのことを、悟った。
「そうですね。」
彼は特に返事を期待していたわけではなかったが、その耳に、少女が呟くように返す言葉が届く。
「もとより命を奪うつもりも、傷つけるつもりもありません。あなた方を裁くのは、私ではなくこの国。いえ。」
言葉の途中で、その姿がブレてその場から消え。
黙って戦いを見守っていた、既に何もできず動けなくなっていたラファイヴを、手刀で落とす。
その瞬間も一切動けなかったレイサードの耳には、変わらず冷静な、感情を感じさせないはずの声が。
「あなた方の行いで、悲しい思いをした方々です。」
今までと違い、まるで自分のことのような。
悲しい響きを持って、届く。
冷徹な雰囲気を纏っているが、この少女は戦う事、相手を倒すことは一切目的とせず。
何かを護ること、止めることに徹している。
最初に魔石を狙った行動も、その後も誰一人痛めつけることなく、一撃で綺麗に意識だけを刈り取ったことも。
自分の禊に、付き合ってくれた事も。
護り、止めるその対象には。
敵であるはずの自分達も含まれていた。
見た目は若いが、外見に全く一致しない能力。
年齢にそぐわない、冷静で達観した雰囲気。
自分の知る歴史とは全く違うが。
この少女が、もしかしたら?
「お前がミリエラを攫ったという、魔女か?」
そうであれば、かの魔女であればこの力も理解できる。
言葉は平坦だが。
雰囲気は怜悧冷徹だが。
本質は優しいと思える、この少女が魔女であれば。
そんなレイサード自身の希望も、含まれた言葉は。
「まだやることがありますので。今この場では、違うとだけ言っておきます。」
即座に否定される。
そこには逡巡も何もなく。
本当に違うという事だけは、伝わって。
「こちらからもひとつだけ。シェリーヌの他にもう一人、催眠暗示を、それも短期間の記憶だけは完全にすり替えられる者がいるはずです。その者はどこですか?」
レイサードは少女の回答、違うという言葉に。
少し安堵したような、それでいて残念なような表情を浮かべ、続けられた質問は、その意味を正確に理解して。
「シェフィールド卿の奥方のことを・・・
そこまで分かっているのか。すまんがそのものは今ここにはいないと、それだけしか言えない。」
シェルンにもそれは、ここにいない事は分かっていた。
そしてその所在を言えないのであれば、これ以上ここで問答してもあまり意味はない。
「そうですか。」
シェルンはそれだけを言い、裁きを待つ男の意識も。
その手刀で刈り取った。
―― ほんの少しだけ、何かを考えるように佇み。
その後屋内の男たちに、お眠りの魔法をかけてまわる。
(これで全員。いえ、一人いなかった。)
もう一人。ミリエラの母を殺めた実行犯。
所在がつかめない以上、それは置いておく。
(できればこの場で確保したかったのですが。)
何にせよ、シェルンの担当する今日の任務は四つ。
そのうち三つは、これで終わった。
レアニールの救出。
アジトの探索・制圧。
そして先ほど、魔法陣を広域破壊魔法へと作り替える仕掛けの解除も完了した。
残りは魔法陣の無効化。
全てを無効化し、そのうえでセラフィーナとミリエラが協力して、傀儡にされた領主を元に戻せば。
あとは、対処した工作員を国に引き渡し。
ミリエラに街の者たちへの説明を任せ。
足りないところは王宮にフォローさせ。
出来れば避けたいが、最悪自分達も表に出れば。
シェフィールドを救う事は、可能なはず!
最後の詰めをどうすべきか、セラフィーナがどう考えているか思案しつつ、シェルンは一度玄関から出る。
外で見張りをしていた男、ルシックスを家の中へ。他の者を寝かしつけた部屋に運び込もうと持ち上げ。
「そこで何をしている。」
そのタイミングで、月明かりの届かない、建物の陰に佇む者から、誰何の声がかかる。
(奴らの残りの一人?
では、ないですね。いえ、これは。)
「もう一度問う。そこで何をしている。」
冷静な、落ち着き払った声。
シェルンは自身の超感覚に頼らず、魔力視の要領で肉眼の暗視能力を強化し、その姿を確認する。
そしてシェルンの目に映った者は。
(これはまずいですね。)
魔力視で強化した視界にうっすらと映ったのは、巡回と思われる騎士。
シェフィールド卿の娘を攫っているのだから、当然岬だけでなく、シェフィールド領都にも人は送るだろう。
外に出たところを、運悪く巡回と当たったか?
だがシェルンもセラフィーナも、もとより騎士団と事を構えるつもりはない。
面倒事になる前に即座に離脱しようと、いつもどおり予備動作を見せず、跳躍を。
(っ!!!速いっ!?)
・・・ィィィィン!
透き通った硝子の食器を、軽く金属棒で叩いたような。大きさは桁違いだが、そんな澄んだ音が、鳴り響き。
常人には見えない予備動作を、いや。
ほんとうに予備動作がないはずの跳躍を、見切られた?
そもそも声をかけられるまで、シェルンですら検知もできていなかった。何者?
シェルンの両手にはセラフィーナの剣と同じ、美しい湾曲した刀身を持つ、透き通ったクリスタルの如きダガー。
今までどこにもなかったはずの武器が、それぞれの手に一本ずつ握られた。
セラフィーナの剣と違い、その刀身から柄までが全て、クリスタルの一体成型のように見える透き通った武器。
そしてその二本のダガーを交差して、シェルンですらかろうじて受け止めた形となっているのは。
一振りの剣。
少し幅広でセラフィーナの剣よりもかなり長めの剣、その白銀の刀身は磨き込まれ、シェルンの透き通ったダガーと共に、月明かりに美しく輝く。
剣の鍔元には魔石が四つ、嵌め込まれており。
先ほど戦ったレイサードの武器、それに一時付与していたものとは全く違う、そして一般的に出回っている魔石とも全く違う、膨大な魔力を籠められたソレは。
おそらく一定レベル以下の魔獣は、剣に触れただけで消滅する程の密度を秘めている。
魔石は籠められた属性により、その特性に沿ったそれぞれの色に輝くが、その剣の魔石は、暖色系の白。
神聖魔法のような色に輝いている。
物理攻撃、魔法攻撃問わず、一定の水準未満であれば全て吸収、無効化する、セラフィーナ謹製の防御結界。
シェルンの魔力量を考慮し、最大限低燃費に抑えられているとはいえ、それを。
貫通しうる、洗練された、神速の剣閃。その威力と。
貫通しうる、魔石に籠められた。超高密度な魔力で。
シェルンも自分専用の武器で受け止めざるを得なかった、その速さ、強さ。
ここ数十年、セラフィーナとの手合いでしか抜かなかったダガーは、押し込まれぎりぎりと震えながらも、その長い剣を受け止め続ける。
剣を受け止め、間近で直接視認した相手の姿。
その身に纏うは、要所に結界が常時展開された。
白銀の軽装鎧。
その手に握るは、高度な魔石を複数あしらった。
白銀の長剣。
(そんな!この方がなんでシェフィールドに!?)
シェフィールドの町を元に戻す仕込みの為に、姿を隠し暗躍していたシェルンと。
「私の剣を受けるか。貴様何者だ?」
凛とした、意志の強さを感じさせるその声。
王国騎士団筆頭団長。
セティス・エル・クレーディアが。
邂逅する!
とうとう主要メンバー四人のうち、三人目が動き始めました。
…時系列的にはもっと前から動き続けてるのですが、なかなか表現がむずかしい!
前回のあとがきで書いた「次回、ついに」はシェルンさんの過去を期待してたかた、ごめんなさい。
アレをここで入れてしまうと、余計進みが遅くなっちゃって・・・
セティス様は、聖騎士とかヴァルキリーといったイメージを想定しているので、セラフィーナやシェルンと違い、どこまでも正統派でまっすぐな騎士様です。魔法騎士だけど…
たぶんツンデレでクッコロです。クッコロシチュはたぶん…ありません^^;




