78.探索開始
「驚きました。ここまでなす術なく完封されたのは初めてです。しかも双剣とは……」
バンナさんは、手に持ったロッドをクルクル回しながら、感心したように言った。
模擬戦闘は、あっけなく僕の勝ちで終わって、今は応接室に案内された。
正直、結構危ういところもあったけどね。
――ダークエルフって、本当に魔法が苦手なのかな?
バンナさんは魔術のクラスレベルも高かったし、詠唱なしでバンバン魔法撃ってくるし、むしろ得意なんじゃない?
そうなると、ここではAOLの公式設定と違ってダークエルフも実は魔法が得意とか?
うーむ、本人に直接聞いてみたいところだけど、さすがに自重しておくか……。
「いえ、たまたま上手くいっただけですよ。ところで、これで許可はいただけますか?」
僕は両手を広げながらバンナさんに聞いた。
バンナさんは「ふふっ」と少し笑ってから、
「もちろんです。こちらが許可証になります」
そう言って、バンナさんは1枚の紙を僕に手渡した。
さすが仕事が早い。
見るからに出来る見た目だもんなぁ、バンナさん。
「ありがとうございます」
これでようやく『嘆きの迷宮』に潜ることができる。
ウィーゼルさえ手に入れば、伯爵の奥さんも助かる。
そう思うと、俄然やる気が出てきた。
「お時間を取らせてしまい、申し訳ありません。ポタシクル冒険者ギルド長として、また私個人としても、ソーコさんにはこの街で冒険者として活動をお願いしたいところです」
バンナさんは、僕の目をじっと見つめてそう言った。
「残念ながら、ソーコさんには予定がびっしりですの。またの機会に、ということで、これで失礼いたしますわ」
フランさんが、間髪入れずにきっぱりと断りを入れてくれた。
さすがはやり手の商人、こういう時の対応が的確だ。
「そうでしたか。では、またの機会を待つことといたしましょう」
バンナさんは、少し寂しそうだったけど笑顔で返してくれた。
◆◇◆
「それじゃあ、ダンジョンへ出発しますわ!」
昼食を済ませた僕たちは、馬車に乗り込んで『嘆きの迷宮』へ向かった。
伯爵が馬車を用意してくれたので、目的地まで歩かずに済むのは助かる。
「馬車だったら、街からそう遠くない場所にあるみたいですね」
「ええ、そうですわ。半日もあれば着ける距離だと思いますわ」
フランさんの言う通り、馬車は順調に進んでいった。
道中は、フランさんとアリシアさん、セラフィの3人が楽しそうに話していた。
チヨメはというと、フランさんの隣に座って無言で景色を眺めている。
そして、その後ろにはリリスが座っていた。
彼女は瞑想でもしているのか、ずっと目を閉じたままだ。
「主様、とうぞこちらでお休みになってくださいまし」
「へ? あ、うん……」
リリスが急にそう言って、僕の頭を優しく撫で始めた。
――ん? あ、もしかして、これって膝枕……?
リリスの膝に頭を乗せると、いい匂いが僕の鼻腔を擽る。
これは……。
「……ソーコさん? ソーコさん、大丈夫ですか?」
「んんっ、あ、はい、大丈夫です!」
――ハッ!
フランさんの声で、僕は我に返った。
しまった、つい油断して変な妄想しちゃってた……。
気をつけないと。
「大丈夫じゃないみたいね。顔が真っ赤になってますわよ?」
「え、あ、それは……」
フランさんは、何かを察したのかニヤニヤと意味深な笑みを浮かべていた。
◆◇◆
街を出発し、半日以上かけて、僕たちは『嘆きの迷宮』に到着した。
AOLでさんざん見てきたダンジョンの入り口とは少し違って、門のようなものがあって、そこに警備の人たちがいた。
「ダンジョンを探索する者か?」
馬車が門の前に差し掛かると、兵士が槍を携えて僕たちに確認した。
「冒険者ギルドからの許可証なんですけど……」
僕は馬車を降りて、バンナさんからもらった許可証を兵士に見せた。
兵士はそれを受け取り、ジロジロと確認したあと、
「うむ、冒険者ギルドの許可証だな。一応本物かどうか確認させてもらうぞ。おい」
「かしこまりました!」
兵士はそう言って、許可証を別の兵士に渡した。
その兵士は、許可証を持って門の奥へと走っていった。
しばらく待っていると、兵士は戻ってきて、
「隊長! 間違いなく本物です!」
「よし、わかった……ん? ――お前たちは、Eランク冒険者か?」
「え、はい、そうですけど」
どうしてランクがわかったのか不思議に思いながらも、僕は素直に答えた。
冒険者ギルドで発行してもらった許可証に、それが記載されてるのかな?
「『嘆きの迷宮』は、Dランク冒険者以上でなければ入ることができないはずだが。一応確認だが、お前たちに、その実力があるのか?」
「もちろんですわ。私たちはあなたたちよりも――」
「リリスっ」
リリスがまた余計なことを言いそうだったので、慌てて止めた。
余計な揉め事を起こすのは避けたいところだしね。
「えっと、確かにランクは足りてないんですけど、一応手合わせして許可を得ているので問題ないかと……」
「手合わせ? 誰とだ?」
「ポタシクル冒険者ギルドのギルド長であるバンナさんです」
「バンナ様と手合わせだと……?」
「はい、そうです。他にも質問とかありますか? 僕たちは急いでるので……」
少し急かすように言うと、
「あ、いや、問題ないぞ、うむ。門を開けよ!」
兵士は門を開けてくれた。
どうやら、バンナさんの名前を出せば問題ないみたいだね。
これでようやくダンジョンに潜ることができる。
「ありがとうございます」
――さあ、いよいよ探索開始だ!
新しく投稿を始めました!
『アラサーから始まる異世界無双ライフ 〜スキル『シャドウマスター』は最強でした〜』
https://ncode.syosetu.com/n7861jt/
チートスキルを授かうも役に立たず、おっさんになってから覚醒する物語です!
本日複数話投稿するので、ぜひ読んでみてください!




