表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/5

おまけ「太陽と月の王国」

おまけ①【太陽と月の王国】














 むかしむかしの、そのまたむかし。

 この世界には、太陽の王国と、月の王国がありました。

 太陽の王国では、毎日暖かい日差しを作る為に、国民が力を合わせて働いていました。

 月の王国では、毎日安らかな眠りを届けられるようにと、誰一人として言葉を発しませんでした。

 そんな太陽の王国と月の王国は、一度も顔を合わせたことがありませんでした。

 それは、太陽の王国は朝から昼間にかけて行動するのに対し、月の王国は入れ替わる様に夜、行動しているからでした。

 そんなある日、太陽の王国の国民は、月の王国の国民に対し、怒りを爆発させました。

 「我々はこんなにも汗水たらして働いているのに、どうしてあなたたちはそうしないのか」

 太陽の王国にも、月の王国にも、国王がおりましたが、国王は一生を空に捧げるため、国民達と接する機会がありませんでした。

 太陽の王国の国民のその一言によって、太陽の王国の国民たちは、その日から働くことを止めてしまいました。

 自分達だって、月の王国の国民のように、働かずに暮らすのだと。

 最初はただ国民達はおしゃべりをして、楽しくどんちゃん騒ぎをしていました。

 だから、誰も気付くことが出来なかったのです。

 自分達の世界を照らしている太陽が弱って行っていることを。

 常に輝き続けなければいけない太陽は、使わなかったために錆びてきてしまっていることを。

 「おい、太陽様が見えないぞ」

 「どうしたんだろう。太陽の王国が暗いなんてこと、初めてだ」

 「太陽様、太陽様」

 太陽の王国の国民たちは、慌てて働き始めましたが、なかなか太陽は輝きません。

 「どうしよう。どうしよう」

 「なんてことをしてしまったんだ」

 「なんでいつも大変な仕事をしている我々がこんな目にあうのに、月の王国はならないんだ」

 「あまりにも不公平ではないか」

 そんな文句があちらこちらから出てきていましたが、そんなとき、月の王国の国王が現れました。

 「どうして月様がこんな昼間に?」

 「いや、それよりも、月様の灯りで回りが明るくなったぞ」

 太陽の王国の国民達は、一生懸命太陽を輝かせるために働きました。

 七日間かかって、ようやく太陽は以前のような輝きを取り戻しました。

 そのとき、太陽の王国の国民たちは、太陽にこんなことを言われたのです。

 「月の王国の国民たちを羨ましいと思い、妬んでいた自分たちを恥じなさい」

 納得のいかない太陽の王国の国民たちは、自分達がこんなにも頑張って働いているのに、と反論しました。

 しかし、太陽は続けます。

 「月の王国の国民たちは、孤独なのです。我々が寝静まる頃、彼らは誰とも話すことなく、ただ孤独に月を空に浮かべるために働き続けているのです」

 何よりも、国王である太陽から、一時であっても輝きを奪ってしまったのは、自分達であると。

 太陽と月は、決して一つにはなれない。

 しかし、どちらかが消えてしまえば、その世界に明日が来ることはない。

 「月の王国を崇めることが、太陽の王国を守ることでもあるのです」

 その日以来、太陽の王国の国民達は、これまで以上に懸命に働いたそうだ。




 「へー、こんな話なんだ」

 「お前さ、俺に仕事させといて何なの?」

 隼人に仕事を任せて、渋沢は初めてその本を読んだ。

 本を閉じると、腕組をして何か考えるフリをして寝ようとしていた。

 すると、勢いよくすぱん、と頭をスリッパで叩かれた。

 「この資料を全部今この場で灰にしてやってもいいんだぜ」

 「止めてぇぇぇぇぇぇぇえ!!!それだけはご勘弁を・・・!!!」

 「ならお前もやれよ」

 「はいはい」

 「おいこら。もともとお前の仕事だからな」

 「太陽と月か」

 「ん?どうした?」

 「別にー?ねえ、これ終わったら何するの?」

 「何って、俺は筋トレだよ。読書だよ。昼寝だよ。あー、俺の分終わったから、じゃ」

 「えー!酷いよ!」

 「酷くねぇって。お前がそんな本読んでるから悪いんだろ。俺はちょっと出かけてくっから」

 そう言うと、素早く部屋から出て行ってしまった隼人の背中を見て、渋沢は顔面からテーブルに伏した。

 「もうダメだ」

 そして、残りの仕事をチラッと見て、こう思うのだった。

 隼人が帰ってきたらやってもらおう、と。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ