おまけ「太陽と月の王国」
おまけ①【太陽と月の王国】
むかしむかしの、そのまたむかし。
この世界には、太陽の王国と、月の王国がありました。
太陽の王国では、毎日暖かい日差しを作る為に、国民が力を合わせて働いていました。
月の王国では、毎日安らかな眠りを届けられるようにと、誰一人として言葉を発しませんでした。
そんな太陽の王国と月の王国は、一度も顔を合わせたことがありませんでした。
それは、太陽の王国は朝から昼間にかけて行動するのに対し、月の王国は入れ替わる様に夜、行動しているからでした。
そんなある日、太陽の王国の国民は、月の王国の国民に対し、怒りを爆発させました。
「我々はこんなにも汗水たらして働いているのに、どうしてあなたたちはそうしないのか」
太陽の王国にも、月の王国にも、国王がおりましたが、国王は一生を空に捧げるため、国民達と接する機会がありませんでした。
太陽の王国の国民のその一言によって、太陽の王国の国民たちは、その日から働くことを止めてしまいました。
自分達だって、月の王国の国民のように、働かずに暮らすのだと。
最初はただ国民達はおしゃべりをして、楽しくどんちゃん騒ぎをしていました。
だから、誰も気付くことが出来なかったのです。
自分達の世界を照らしている太陽が弱って行っていることを。
常に輝き続けなければいけない太陽は、使わなかったために錆びてきてしまっていることを。
「おい、太陽様が見えないぞ」
「どうしたんだろう。太陽の王国が暗いなんてこと、初めてだ」
「太陽様、太陽様」
太陽の王国の国民たちは、慌てて働き始めましたが、なかなか太陽は輝きません。
「どうしよう。どうしよう」
「なんてことをしてしまったんだ」
「なんでいつも大変な仕事をしている我々がこんな目にあうのに、月の王国はならないんだ」
「あまりにも不公平ではないか」
そんな文句があちらこちらから出てきていましたが、そんなとき、月の王国の国王が現れました。
「どうして月様がこんな昼間に?」
「いや、それよりも、月様の灯りで回りが明るくなったぞ」
太陽の王国の国民達は、一生懸命太陽を輝かせるために働きました。
七日間かかって、ようやく太陽は以前のような輝きを取り戻しました。
そのとき、太陽の王国の国民たちは、太陽にこんなことを言われたのです。
「月の王国の国民たちを羨ましいと思い、妬んでいた自分たちを恥じなさい」
納得のいかない太陽の王国の国民たちは、自分達がこんなにも頑張って働いているのに、と反論しました。
しかし、太陽は続けます。
「月の王国の国民たちは、孤独なのです。我々が寝静まる頃、彼らは誰とも話すことなく、ただ孤独に月を空に浮かべるために働き続けているのです」
何よりも、国王である太陽から、一時であっても輝きを奪ってしまったのは、自分達であると。
太陽と月は、決して一つにはなれない。
しかし、どちらかが消えてしまえば、その世界に明日が来ることはない。
「月の王国を崇めることが、太陽の王国を守ることでもあるのです」
その日以来、太陽の王国の国民達は、これまで以上に懸命に働いたそうだ。
「へー、こんな話なんだ」
「お前さ、俺に仕事させといて何なの?」
隼人に仕事を任せて、渋沢は初めてその本を読んだ。
本を閉じると、腕組をして何か考えるフリをして寝ようとしていた。
すると、勢いよくすぱん、と頭をスリッパで叩かれた。
「この資料を全部今この場で灰にしてやってもいいんだぜ」
「止めてぇぇぇぇぇぇぇえ!!!それだけはご勘弁を・・・!!!」
「ならお前もやれよ」
「はいはい」
「おいこら。もともとお前の仕事だからな」
「太陽と月か」
「ん?どうした?」
「別にー?ねえ、これ終わったら何するの?」
「何って、俺は筋トレだよ。読書だよ。昼寝だよ。あー、俺の分終わったから、じゃ」
「えー!酷いよ!」
「酷くねぇって。お前がそんな本読んでるから悪いんだろ。俺はちょっと出かけてくっから」
そう言うと、素早く部屋から出て行ってしまった隼人の背中を見て、渋沢は顔面からテーブルに伏した。
「もうダメだ」
そして、残りの仕事をチラッと見て、こう思うのだった。
隼人が帰ってきたらやってもらおう、と。




