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第七話

 火曜日からは、いつも通りの日々。だけど、夜には少しまたアニメを配信で流し見ながらぼんやりした。今まで知らなかった世界だけど、女の子向けのアニメも良いなぁと思う。

 木曜日になり、いよいよ一周年ライブの前日になった。ごはんやシャワーなど済ませて、キョウカ様の配信を待機する。

 キョウカ様の配信が始まって、配信アプリを開いた。

「みんなこんばんは~」

 キョウカ様が挨拶をされて、挨拶コメントが次々と流れている。私も「こんばんは!」とコメントした。キョウカ様が順番にコメントに返事をしていかれて、私も名前を呼ばれた。

「明日はもう一周年だね」

 キョウカ様が言うと、色々なコメントが流れていった。私も「一周年、楽しみですね」とコメントした。

「楽しみだよね~! 今からすごいドキドキしてる」

 私のコメントを読んで、そう言われた。私はコメントを読まれたことが嬉しくてドキっとする。

 キョウカ様は次々にコメントを拾われて、ライブの話題から、雑談に切り替わっていた。

 雑談というのが、私はどうにも苦手だ。意味のない会話ができない。発達障害だから、仕方ないのかもしれないが、こういうのを楽しめるようになれたら幸せなのかなと思う。

 コメントを読むキョウカ様を見るだけでも、楽しいけど、自分のコメントが読まれたら嬉しいのかもしれない。でも、雑談の流れみたいなものが私にはよくわからなかった。

 気が付けばもうすぐ一時間が経つ。

「そろそろ終わるから、改めて! 明日はティアスタの一周年ライブです! ここにいる人はもうチケット取ってくれてると思うけど、みんな来てね。一緒にめいっぱい楽しみましょう!」

 楽しみです、ドキドキするね、と次々にコメントが流れていった。「すごく楽しみにしています」と私もコメントした、ついさっきも同じことをコメントしたような気がするが……。

「楽しもうね! じゃあ、そろそろ、みんなおやすみ。明日に備えてちゃんと寝てね〜。また明日!」

 キョウカ様が画面に手を振られた。私は急いで「また明日」とコメントする。「また明日」って言えるの、なんだか素敵なことだと思った。

 配信が終了して、画面が暗くなる。今回もあんまりコメントはできなかったけど、明日が楽しみという気持ちはキョウカ様と分かち合えた気がする。

 昔よく漫画家さんにファンレターを送っていた時に使っていたレターセットを棚から取り出した。キョウカ様にお手紙を書く、そう意気込んで書こうとしたものの、なんて書けばいいんだか、少し迷う。

『新村キョウカ様へ。一周年ライブおめでとうございます』

 そう書き出したけど、次の文章がなかなか頭に浮かばなかった。私は深く考えすぎなのかもしれない。素直な気持ちを込めればいいんだよな……。そう思って、手を動かした。

『私はティアスタに出会ってからまだ日が浅いけど、一周年っていうのは、すごいことなんだろうなと思います。始まりは遊園地でのフリーライブでした。偶然に通りがかって、キョウカ様の歌声が、私の心を掴んで離しませんでした。

 それから何度もライブに行って、ライブに行くたびに、キョウカ様のことが大好きな気持ちが増していきます。特典会では、たくさん褒めてくれたり、大好きと伝えてくれたり、ありがとうございます。

 少し自分語りになってしまうのですが、私は今まで、「かわいい」なんて言われたことのない人生でした。私は自分のことが嫌いで、自分のことを好きになる人なんて存在しないと思っていました。

 だから、キョウカ様からの「かわいい」や「大好き」などの言葉に、戸惑ってしまいます。でも、そういう言葉を素直に受け止められるようになりたいと思いました。

 キョウカ様のまっすぐな言葉は、とても愛を感じられて、それはすごく幸せなことだと思います。私にまっすぐな愛を向けてくださって、本当にありがとうございます。

 私もキョウカ様のことが大好きです。これからも応援しています。

 たくさんのありがとうと大好きを贈りたいです。私はキョウカ様に出会ってとっても幸せです。

 ありがとうございます。

 藍音リオンより』

 私の素直な気持ちを綴った。時間が時間なので、今日は寝なくちゃいけない。明日になったらSNSにイラストを投稿する。

 寝る前にSNSを見ると、キョウカ様の投稿があった。「配信ありがとうございました! 明日はめいっぱい楽しもうね〜。また明日!」と書かれている。私はその投稿にいいねをして、「明日すごく楽しみです、また明日ですね!」と返信した。

 アラームを確認しているあいだに、キョウカ様から返信をいいねされた通知が来る。相変わらずの反応の早さに驚きながら、嬉しい気持ちを抱えて、布団に入った。


 遂に一周年ライブの日。午前中は仕事をして、お昼になったらすぐに帰宅した。ごはんを食べて、出かける準備はなにからすればいいんだ、と少し混乱する。メイク、ネイル、着替え……着替えをしてから、メイクをして、ネイル?

 バタバタしながら、どうにかこうにか仕上げた。ヘアアレンジも、少しがんばってみる。キレイにはできなかった気がするけど、なにもしないよりはいいと思った。

 ペンライトと、お手紙をカバンに入れる。イラストをSNSに投稿する時間を考えてなかったけど、どうしようか。今やってしまおう。「ティアスタ一周年ライブおめでとうございます! とっても楽しみです!!」と書いて、キョウカ様へのメンションを添えて、イラストを投稿した。

 あとはもう、ライブを楽しむだけ。楽しみな気持ちを抱えて、電車に乗った。

 会場のライブハウスに着いたのは、開場時間の四十分前くらいだった。微妙な時間に着いてしまったから、少し周辺を歩く。カフェにでも入るか迷いながらふらふらして、クレープ屋さんが目についた。

 クレープなんて滅多に食べないけど、たまにはいいかと、バナナとチョコレートのトッピングのものを買った。甘くてちょっと喉が乾く。でも、ライブ会場に入ればドリンクがあるからなぁ、と思う。

 そんなことを思いながらぼんやりとケータイを見たら、キョウカ様からいいねをされた通知が来ていた。私の描いたキョウカ様のイラストの投稿に、キョウカ様がいいねをされた。とても嬉しくて幸せな気持ちになる。

 クレープを食べ終わって、少し周辺のお店を見るだけ見て時間を潰した。開場時間が近付いてきたので、会場に戻る。

 入場列が形成されていたから、チケットの整理番号を確認して並んだ。ほどなくして開場されて、列が動き出す。

 入場して、ドリンクチケットを受け取る。そのままドリンクカウンターに並んで、ペットボトルの紅茶とチケットを交換した。ここのライブハウスはペットボトルの選択肢が多いみたいだった。

「事前物販こちらです!」

 スタッフさんの声が聞こえて、そちらを見ると、特典券の販売がされているようなので列に並ぶ。

「キョウカ様、六枚お願いします」

「キョウカ六枚ですね」

 そんなにたくさん写真を撮りたいわけではないんだけど、今日は特別な日だから、少し多めにした。物販の横に、プレゼントボックスと書かれた容れ物があるのに気が付いた。

「お手紙はこれに入れればいいですか?」

「はい、そうです、ありがとうございます」

 スタッフさんに確認して、お手紙をプレゼントボックスに入れた。

 会場の様子を見ると、もう半分以上は人で埋まっている。どの辺りにいればいいのか少し迷って、少し端の方に寄った。

 開演時間までまだ少しあるけど、どうしていればいいんだろう。周りを見ると、話している人もいれば、ケータイを見ている人もいた。私はとりあえずぼんやりケータイを見ることにする。

「ご来場の皆様にご案内いたします。本公演は撮影禁止となっております」

 アナウンスが流れてきて、少しびっくりした。そういえば、今までフリーライブには何度か行ったけど、こういうライブハウスでのライブで開演前から会場にいたことはない。開演前には注意事項のアナウンスが流れるのか、と、今になって初めて知った。

「間もなく開演になります。お楽しみください」

 アナウンスが終わって、周りの雰囲気が変わる。ソワソワドキドキしている空気が伝わってきた。私もすごくドキドキしている。

 スタートの曲が流れて、ライブが始まった。ドキドキが、最高潮に高鳴る。

 なんて言えば伝わるのか、わからないけど、私は胸いっぱいにライブを楽しんでいた。ステージの上で輝くキョウカ様が、最高にかっこいい。キョウカ様のソロの落ちサビ、歌声が響き渡る瞬間、世界がキョウカ様を祝福していると思った。

「僕たちが、煌めく星々の雫、ティアスタです!」

 三人がステージ中央に並んで、自己紹介が始まった。

「想いを届ける流れ星! 白峰ミユキです! メンバーカラーはホワイト、ミユキって呼んでください!」

「ミユキ〜!!」

 今までのライブの中で一番ってくらいの大きな声が自分の喉から自然に出ていた。

「煌めく笑顔の元気印! 横谷サトリ、メンバーカラーはヴァイオレットです。サトきゅんって呼んでねー!」

「サトきゅん〜!!」

 あちこちから掲げられるペンライトが、すごくキレイに見える。

「始まりを告げる一番星! 新村キョウカ、メンバーカラーはイエローです。キョウカ様って呼んでほしいな」

「キョウカ様〜!!」

 黄色のペンライトを掲げて、自分の中で一番の声が出せた。

「今日はティアスタの一周年ということで、ここで映像をご用意しています」

 サトきゅんが言って、後ろに映像が流れ始めた。「デビューライブ」という文字が見える。デビューからのライブの、始まる前や、終わった直後、ライブ中など、色々な角度からの映像が流れた。「本日、一周年、そしてこれからも……!」という文字で、映像が終わる。

 客席から歓声と拍手が起こった。ティアスタに出会ってから日が浅くてデビュー当時のことなんて知らない私も、なんだか感極まって涙が出てくる。

「というわけで、僕たちはこれからも全力で走っていきます! 応援よろしくお願いします!」

 ミユキくんが言って、キョウカ様とサトきゅんも「よろしくお願いします!」と頭を下げた。再び拍手と歓声が会場を包み込む。

「それでは次の曲、聞いてください」

 曲が流れ始めた瞬間、会場の熱が高まった気がした。

「あっという間ですが、次で最後の曲です」

「えぇえ〜!!」

 心から残念そうな声が上がる。ここまで何曲も聞いてるはずなのに、一瞬だったように感じて、楽しい時間っと本当にあっという間なんだと思った。

「ありがとうございます、では、聞いてください」

 最後の曲が流れ始めたかと思えば、夢中になっていたら本当にまたたく間に終わったように感じる。

「僕たちが、煌めく星々の雫、ティアスタでした! ありがとうございました!!」

 三人が声を揃えて言って、頭を下げる。頭を上げると、ステージの端まで歩いていって、手を振られていった。拍手をしている人もいれば、手を振っている人もいる。私も、拍手もしたかったし、手も振りたくて、手が足りないと思った。

 キョウカ様が目の前に来て、目が合った。バチっと火花が散るような、煌めきが見えた気がする。手を振るのも拍手をするのも忘れて、ただ息をしていた。この一瞬、世界に私とキョウカ様だけが存在しているような感覚だった。

 三人の姿が見えなくなって、ひときわ大きな拍手が起きる。

「本日の公演は、すべて終了しました」

 アナウンスが流れても、拍手が止まなかった。

「特典会の準備に入ります!」

 スタッフさんの大きな声が響いて、ようやく拍手が収まる。物販と撮影待機の列形成が始まったので、撮影待機列に並んだ。

 少し待って、三人が会場に出てきた。

「ティアスタ、特典会を始めます! よろしくお願いします!」

 挨拶があり、撮影が始まって列が動き始める。前を確認すると、今日は荷物置き場の長机が用意されていた。今日はたくさん撮る人が多いのか、列の進みがいつもよりゆったりしている。特別な日だから、それは当然かもしれないが、待ち時間は落ち着けない。

 少しずつ列が進んで、私の順番が来た。

「サインチェキ一枚と、写メ四枚お願いします」

「サインチェキ一と写メ四ですね」

 カバンを置いて、ケータイをスタッフさんに手渡す。キョウカ様が嬉しそうな顔で待ち構えてくれていた。

「リオンちゃん〜! ありがとね! ポーズはおまかせでいい?」

「あ、おまかせで……」

 キョウカ様に合わせて、ポーズを撮る。撮影が終わって、スタッフさんからケータイを受け取り、サッと写真を確認した。問題はなさそうだった。

「今日はいっぱい撮ってくれたね、ありがと!」

 キョウカ様が満面の笑みで、すごく眩しい。私はただ笑顔を返した。

「ねえ、イラスト見たよ!! イラスト描いてくれるの、めっちゃ嬉しくて……!! 本当にありがとね、今日のために準備してくれたんだよね。お洋服もメイクも、髪型も! 今日すごいかわいい!」

「あ、ありがと、ございます……」

 私はキョウカ様の言葉に少し戸惑いながら、お礼を口にした。

「俺ばっかり喋っちゃってごめんね? 今日のライブ、どうだった?」

「すごかった、です……! すごい、感動して、すごくて、……あの、本当に、楽しすぎました……」

 なにかもうちょっとうまく言えないのかと我ながら思う。

「えへへ、ありがと〜。すっごい嬉しい!! 俺もめっちゃ楽しかったし、リオンちゃんにもいっぱい楽しんでもらえたなら、よかった! 衣装も見て、新しいの!」

「あ、新しいのなんですね……見たことないやつだとは思いました」

「そっか、リオンちゃんはまだ衣装あんまり違うの見たことないよね、最近は同じ衣装が多かったから……。なんかいつもいてくれるから、ずっと前から見てくれてるような気がしてた! この衣装、どう? かっこいい?」

「すごくかっこいいです」

「なんか言わせたみたいになっちゃったね〜。でも、本当に楽しんでもらえてよかった! 改めてこれからもよろしくね」

「は、はい……これから、も、応援しますっ」

「ありがと!! すっごく嬉しい!」

 キョウカ様の笑顔がすごくキラキラしていて、ずっとこの笑顔を見ていたいと思った。

「そろそろお時間でーす」

 スタッフさんに声をかけられて、キョウカ様からチェキを受け取る。

「またね、リオンちゃん! 本当に本当にありがとう!」

「ま、また……」

 キョウカ様とハイタッチをして離れた。カバンを持って、とりあえず会場の隅に立つ。チェキをサッと問題がないか確認するだけしてカバンにしまって、会場を出た。

 電車に乗って座ってから、チェキのメッセージを確認する。「一周年ありがと! これからもよろしくね」と書かれていた。すごく嬉しくて、なんだか気持ちがふわふわしている。現実じゃないみたいな……。

 電車に揺られているあいだ、ずっと夢見心地だった。ふわふわとした気持ちのまま、スーパーに寄ってごはんを買う。

 帰宅して、シャワーを浴びてスキンケア、髪を乾かして、ネイル落としをして、そうしていると少しずつ現実に戻る感じがした。お洋服を洗濯機に入れて、ごはんを食べる。

 ライブで熱狂していた時間は一瞬のように感じたのに、現実に戻ると、時間の流れがやたらと遅い。いや、ライブだって現実なんだけど、まるで夢のように感じてしまう。

 幸せな時間だった。本当に幸せすぎてどうにかなってしまいそうだった。

 明日の土曜日は、のんびり過ごそう。日曜日は遊園地のヒーローショーに行く。服装をどうしようかなと思った。いつもヒーローショーに行く時は無難な服をと考えてたけど、無難な服よりも、かわいいお洋服を着る方が楽しい気がする。

 明日はまたお洋服を見に行こうか、それもいい。とりあえず今日は早く寝てしまおうと思ったが、寝る前にSNSをチェックする。

 キョウカ様の投稿があった。「今日は一周年ライブ本当にありがとうございました! 出会ってくれたみんなに特大の感謝を。これからも応援よろしくお願いします! 今日はゆっくり休んでね」と、ステージに立つキョウカ様の写真が添えられている。私はその投稿にいいねをして、「一周年お疲れ様でした! ティアスタに、キョウカ様に出会えてとっても幸せです。これからも応援しています」と返信を送った。

 アラームを確認して、布団に入ろうとしたら、キョウカ様に返信をいいねされた通知が来ていた。幸せな気持ちで、布団に入る。


 土曜日は、特撮ヒーロードラマを見ることで朝が始まる。私にとってかけがえのない大切な時間。

 テレビを見終わって、余韻に浸りながらごはんを食べた。明日に着ていくためのお洋服を買うために、今日はまたロリィタ古着のお店に行こう。少しお金を使いすぎな気がしたけど、安い古着なら大丈夫だと判断した。

 服を買いに行く服がない、とはよく言われることだ。着ていく服をどうしようかと迷う。かわいいお洋服はまだそんなに持っていないから、とりあえず無難な服にした。メイクはしっかりして出掛ける。

 ロリィタ古着のお店に着くと、やっぱりロリィタ服ってすごく素敵だと思った。今日に欲しいのはヒーローショーに着ていくお洋服……色をどうしようかと迷う。ティアスタのライブに着ていくお洋服は黄色しかないけど、特撮ヒーローにメンバーカラーはない。いや、戦隊ヒーローならそれぞれ色があるし、バイクに乗るやつも、巨大なやつも、イメージカラーみたいなのはあるような……。

 明日に見に行くのは、バイクに乗るヒーロー。イメージカラーみたいなのはあるような気はするが、別にそれにこだわらなくてもいいような気もする。

 それにしても、店内は見渡す限りかわいいお洋服ばかりで、あれもこれもと目移りしてしまう。私って、そもそも何色が好きなんだろうか。前にも考えた気がするけど、結局まだわかっていない。

 水色がかわいいような気もするし、緑や紫もキレイで、赤は目立つかわいさがあるし、ピンクもかわいい。黄色は今回はやめておこうかなと思った。黒もシックだけどかわいい感じもするし、白だってやっぱりかわいい。

 どれも素敵だから、値段が安いものにしてしまおうかとも思った。色ではなく、デザインで選ぶかなとも考える。セーラー襟のブラウスがかわいい。このセーラー襟のブラウスに合わせるならジャンパースカートかなと、ジャンパースカート系を探す。星柄のかわいいのが目についた。

 少し迷ったけど、値段を見て、大丈夫そうだったので、それらを買うことにする。お会計を済ませてお店を出て、まだ時間はあるけど、今日は帰ろうかと思った。

 途中でスーパーに寄ってごはんを買って帰る。帰宅して部屋着に着替えて、ごはんを食べた。まだシャワーを浴びるには時間が早い。マンガを読んだり、アニメを配信で見たりした。

 アニメもマンガも、この世にはおもしろい作品が溢れすぎている。こないだから見始めた女の子向けアイドルアニメも、一話からちゃんと見たい気持ちもあるけど、シリーズ五年間の歴史があってさすがに話数が多い。時間を圧迫されるのは少し困るかなと思ってしまった。

 気が付けばいい時間になっていたので、シャワーを浴びて、今日は早めに寝る準備をする。明日のヒーローショーもとても楽しみな気持ちで、布団に入った。


 日曜日、朝の特撮ヒーロードラマを見て、その後に女の子向けアイドルアニメを見る。特撮ヒーロードラマだけだったこの長年の時間に、女の子向けアイドルアニメが加わって、少し感情が忙しい。

 余韻に浸るのはそこそこに、ごはんを食べて、出掛ける準備をした。昨日に買ったかわいいお洋服に着替えて、メイクをする。髪型はどうしようか迷って、とりあえず二つ結びにした。

 かわいいお洋服を着て出掛けると、気分が上がる。電車に乗っているあいだも、なんだかふわふわしていた。

 遊園地に着いて、ヒーローショーの行われる会場のベンチに座る。大人の一人客なんてお呼びじゃない存在だとは思うので、なるべく後ろの方に座った。割りといつも同じくらいの位置に座っている席。

 時間になって、ヒーローショーが始まった。テレビで見るようなエフェクトは当然ないけど、アクションがかっこよくて、何よりも、目の前に実際に存在している。ヒーローが目の前に実際に存在しているのが、ヒーローショーの最大の魅力だ。

 三十分ほどのステージはあっという間に終わって、撮影会の列形成が始まった。私は大人の一人客なので目立たないようにと思い、他のお客さんの様子を見つつ、なるべく最後の方に並ぶ。

 撮影会が始まって、列が動き出した。少し待って、私の順番が来る。ヒーローの決めポーズで一緒に撮影してもらった。

「かっこよかったです……!」

 ハイタッチをしながらそう伝えた。ヒーローショーのヒーローはこういう時は喋らないものだから、当たり前に返事はないけど、伝えることが大事だと思う。

 ベンチに座って、撮影した写真を確認する。キレイに撮れていた。かわいいお洋服を着てきてみて、よかったなと感じる。写真を見ていて、気分が上がった。

 ヒーローショーは二部制で、この後また二部がある。二部あるからと言ってストーリーは同じで、なにも変わらないけど、何度見ても楽しいものは楽しいから、二部も見ていく。

 二部の撮影会は、ヒーロー単体で撮ってもらった。自分が一緒に写るのはいい記念になるけど、単体の写真もそれはそれでいい。

 遊園地内のレストランで、ごはんを食べる。今日も幸せな日だった。

 私は、私の好きなものをたくさん、全部、大事にしていきたいなと改めて思った。アニメもマンガもたくさんありすぎて少しパンク気味になってしまってるような気もするけど、それだけたくさん好きなものがあるのは幸せなことだろうか。

 私の好きなものを大事にする、その中に、自分の存在も入ればいいなと思う。私は自分を好きになりたい。自分をちゃんと愛せるようになりたい。

 これから先、少しずつでも、自分のことを好きになっていくことができたら、幸せだと思った。

 私は私を愛したい。そのためにどうすればいいか、まだわからないけど、一歩ずつ、一歩ずつ、自分の「好き」を抱きしめて進んでいこう。


〈了〉

ここまで読んでくださってありがとうございました。

リオンちゃんの物語は、一旦ここで一区切りです。

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