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ダンジョン配信で指示厨してたら師匠になってた。  作者: 指示厨


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20/22

閑話:ダンジョン時代の幕開け

人類史には、

“理解される前に世界を変えてしまった現象”がいくつか存在する。

火。

磁石。

電気。

遺伝子。

そして――核。

ダンジョンは、それら全てを凌駕した。

以下は、後の歴史家が「第一転換期」と呼ぶ時代の記録である。



◆ 概念物質との接触 ― “科学の死と再誕”


世界は“説明不能な資源”と出会った

最初に持ち帰られた“概念物質”。

それは、物質なのに物質ではなく、

エネルギーなのにエネルギーとも定義できない“曖昧な存在”だった。

その曖昧さこそが、新時代の始まりだった。

科学とは“説明できるもの”を扱う体系だ。

しかしダンジョンは、“説明以前の存在”を平然と提示する。

その瞬間、科学は死んだ。

そして、静かに再誕した。



概念物質がもたらした“理解不能の現象”

最初の研究報告は、研究者自身が理解できなかった。


板の上に置くと質量が半減し、

裏返すと二倍になる現象が確認された。


常温で鉄を液体化し、

逆に布を鋼鉄並みに硬化させる事例が記録された。


筋繊維の断裂が数秒で重合し、

骨折が“記憶”するように自然復元した。


家電を接続すると、

「消費電力ゼロで稼働する」という報告さえあった。

どれも、

既存科学の言語体系では記述不能だった。

研究者たちは理解できない現象を前に、

論文を書くことも、否定することもできなくなった。

結果――



学会は“沈黙”した。

科学という体系が初めて自ら沈黙した瞬間だった。

知らないふりをしてきた歴史はある。

予測できないふりをしてきた歴史もある。

だが“理解するふり”だけは、

この概念物質の前では通用しなかった。

科学者とは、人間だ。

そして人間は、理解できないものの前で沈黙する。

以後、研究報告はすべて閉鎖され、

国家機関に封じられる。

科学の死は宣言されなかったが――

誰もが気づいていた。

(世界の土台が変わったのだ、と)



◆ 資源戦争の転換 ― “血を流さない戦争”

科学が死に、概念物質が生まれたとき。

同時に、戦争の形も変わった。


戦争の目的は“領土”でも“資源”でもなくなった

歴史上、戦争は土地を奪うために行われてきた。

やがて石油・金属・希少資源を奪うためへと移行した。

しかし、ダンジョン出現後は違う。

国家間の戦争は、“血を流さなくなった”。

なぜなら――

陸海空の兵器では、ダンジョンそのものに勝てないからだ。

核も、戦車も、航空戦力も、

“階層”という異世界的構造の前では無力だった。

そもそもダンジョンは破壊できない。

爆撃しても、内部構造が数時間で再生する。

攻める意味がない。



各国が奪い合ったのは“ダンジョンではなく探索者”

だから戦争はこう変化した。

各国がダンジョンを奪い合うのではなく、

 中層まで踏破可能な探索者を奪い合うようになった。

生きて帰る可能性のある人材が、

 世界で最も価値の高い“資源”となった。

国境を越えて“探索者亡命”が発生した。

 ──石油外交ならぬ、探索者外交である。

有能な探索者は「国家戦略資源」として扱われ、

 企業ではなく“国”がスポンサーについた。

これはもはや、

血を流さない戦争だった。

しかし、血より重い“人的資源”が奪い合われた。



世界は三つの時代区分を経て、いまに至る

歴史家たちは言う。

土地の時代(領土の占有)

物質の時代(石油・レアメタルの奪い合い)

人間の時代(探索者の争奪)

三段階の進化を経て、

世界は“ダンジョン文明”へと移行した。

もはや国を動かすのは、政治家でも企業でも軍隊でもない。

《何層まで踏破できるか》という、

たった一つの基準だった。



アキトはその潮流の“入口”に立っている

第三層を突破したアキトは、

まだ世界の片隅にいる一人の探索者にすぎない。

だが、国家は、協会は、社会は、

“そういう人材”に目を光らせている。

概念物質を持ち帰り、

三層の歪みに耐え、

帰還できる探索者。

それは、

企業でも軍隊でも持てない“未来そのもの”だ。


世界は静かに形を変え続けている

ダンジョンは今日も世界のどこかで息を潜め、

誰かが挑み、

誰かが倒れ、

誰かが帰還する。

そして帰還者の一歩が、

また世界地図を書き換えていく。

アキトの次の階層――第四層。

そこもまた、

“世界の歴史を作る断層”のひとつにすぎない。

だがその断層の向こうで、

世界の理はまた一つ壊れ、

別の理が生まれるだろう。

それは科学でも宗教でも説明できない、

ただ一つの真実だった。

世界は、ダンジョンによって書き換えられ続けている。

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