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【問題】お姉さんに人の心はありますか?(配点:2)

 さて、ようやく合流した勇者と俺は、俺のリハビリも兼ねて、久しぶりの冒険の旅に出かけることとした。今回の冒険先は、俺様勇者が選んだという、魔物の調査の依頼らしいのだが……。


「というか、話せないのによく依頼選べましたね」


「受付嬢の人と、けっこう絵で会話できるようになってさ。……あ、そこ、段差気をつけろよ!」


 2センチくらいの段差を指さし、大声で注意喚起をしてくる俺様勇者。うーん……。完全に過保護になっている……。






 今、俺の目の前に広がるのは、穏やかな草原と小さな丘、そして色とりどりの花々が咲き乱れる景色だった。小川がキラキラと光を反射し、可愛らしい小鳥たちがチュンチュンと囀っている。


「……ここ、本当に調査が必要なんですか?」


 俺は思わず漏らした。魔物がいると聞いてきたはずなのに、まるでピクニックエリアだ。子供向けに整備されたと思われる小道まである。


 俺様勇者はそんな俺をじろりと睨むと、剣の鞘を軽く叩いて胸を張った。


「油断するな! こういうところに限って変な魔物が出るんだよ!」


 その声には妙に力が入っていて、俺は小さく笑いそうになる。なんだそのふわっとした注意。




 そして、俺が、芝生みたいな丈の低い草原を歩き始めた途端、勇者が振り返り、こちらに向かって手を挙げた。


「おい! そんなに草むらの中を歩くな! 足元が滑るかもしれないだろ!」


「草……むら……?」


 俺が「でも、ここ短く刈られてて大丈夫そうですけど」と答えても、彼は納得しなかった。


「いや、万が一ってことがあるだろ! ほら、こっちの石畳を歩け!」





 小川のそばで一息つこうと、さらさらと流れている水を飲もうとした瞬間、俺様勇者が慌てて駆け寄ってくる。


「ダメだ! その水が本当に安全か分からないだろ! 毒でも入ってたらどうすんだ!」


 ……公害かな?


「いや、さすがに大丈夫じゃないですか? 明らかに観光地みたいな感じですし……」


「関係ねぇ! 俺様が用意した水があるからそっち飲め!」


 勇者は自分の持ってきた水筒を差し出し、俺に飲ませようとした。彼の真剣な表情に、俺は断ることもできず、素直に一口飲むしかなかった。ちなみにカボチャの口の所は結構大きめにくり抜かれているので、水を飲んだり何か食べたりは普通にできるのだ。





 さらに道中で、草むらから小さなウサギがひょっこり顔を出した。俺はその愛らしい姿に思わず足を止める。おお、耳がぴょこぴょこ揺れていて、とってもかわいい。


「ほら、おいでおいで」


 そう言って手を伸ばした瞬間、俺様勇者が前に飛び出し、ウサギを睨むように見下ろした。


「待て、それ、本当にウサギか? 変な魔物の化けた姿かもしれねぇぞ!」


 ウサギは俺様勇者の迫力に驚いてぴょんぴょん逃げていく。俺は思わずため息をつきながら呟いた。


「本物のウサギに見えましたけど……」








 結局、調査というよりピクニックのような時間を過ごして冒険は終了した。澄んだ青空が広がり、空には白い雲がぽっかり浮かんでいる。どこまでも続く草原は、太陽の光を受けて鮮やかな緑色に輝き、風が吹くたびにまるで波のようにそよそよと揺れる。風に乗って漂ってくるのは、草の青い香りと、近くに咲く野花のほのかな甘い匂い。その空気を深く吸い込むと、身体の内側まで浄化されるような気がする。うん、なんというか、どんな人の心も落ち着かせてくれる、みたいな感じ。


 そんな中、勇者は俺のすぐそばで剣を構え、ギロギロと辺りを見回し、常に周囲を警戒していた。……いや、いったいどうした。


「……いやぁ、平和ですねー」


 俺がぽつりと言うと、勇者はちらりとこちらを見て、むっとした顔で応えた。


「平和なわけねぇだろ! こんなに危ねえのに、何かあったらどうすんだ!」


 お前にはいったい何が見えてるんだ。いや、これはさすがにいけない。




 俺は勇者に向き直り、しっかりと目を見た。いや、向こうから見たら白い霧しか見えなかったかもしれないが。


「あの、心配してくれるのは嬉しいんです、けど……気を遣われすぎるとかえって困るというか……」


 いや分かるよ。親切心からやってくれてるんだってことは。それに、俺が魔物に一瞬で殺されたのが原因なので、どの面下げて言ってるんだってなるけど。でもさ、俺がいるから普通に振舞えないなら、そっちの方が申し訳ないから。


 俺がわたわたしながら説明すると、勇者は渋々ながらも頷いてくれた。すっごい不満そうだった。まるで5歳の子供が嫌いなピーマンを食べなさいと母親に言われた時みたいな顔だった。





 しかし、ようやく剣を置いて腰を下ろしてくれた勇者は、少し力の抜けた感じで、こちらを振り向いた。その表情はさっきよりも自然で、俺は少しホッとする。


「そういや、お前ってどうやって生き返ったんだ?」


 俺は少し考え込んだ。……えーっと、王都の人には俺が生き返ったとバレてはいけない。つまり、俺様勇者には言ってもいいのでは……?


「館のお姉さんが生き返らせてくれましたよ」


「あの人ほんとに何者だよ……」


 それは俺も不思議に思ってる。そして、俺様勇者は、少し躊躇った後、おずおずと顔を近づけてきた。そして、遠慮がちにペタペタと肩や腕を触ってくる。おいこら触診やめろ。主治医か。


「何かおかしなところとか、ないか? 本当に大丈夫なのか? ほら、顔とか見えないし……」


「あー。これは、まあ、はい。なんか普通は生き返ったりしないみたいで、顔を隠すためにやってる感じです。バレたらちょっとやばいそうなので」


「……やばい?」


 ぴくり、と俺様勇者の眉が動いた。ごめん間違えた。いや違うんだよ。やばいってそんな身の危険がどうとかじゃなくてほんとはバレたら誰かに殺されるみたいなんだけどそんなこと言える雰囲気じゃないし!


「ひ、引かれちゃうらしいです。そんなの悲しいですよね。だからしばらく顔は隠しておきますね」


「ほー」


 あ、よかった。納得してくれたみたいだ。俺はほっと胸を撫で下ろす。そんなこちらの様子を、じーっと見つめる俺様勇者。そして彼は、鞘から剣を抜いて、何やらカチャカチャと手入れを始める。なんだ急に。


「ならさ、俺様、館のあの人に、お礼を言いに行きたい。詳しい事情も聞きたいしな」


「そんなの別にいいと思いますけど……」


 だって間違いなく趣味だし。たぶん1ミリも労力掛かってなさそうだったし。生き返られるようにしたのも、「面白いから」以外の何もないって!


 しかし、俺の消極的な反対を押し切り、俺様勇者は館に戻ると言って聞かなかった。……なんか、嫌な予感がする。だって、お姉さんって、誰かで遊ぶためなら結構むちゃくちゃ言うっていうか。嘘はつかないけど、誤解されやすい言い方も敢えてする、みたいな……。いや、まあ、こんな過敏になってる勇者に対しては、さすがにそんなことしないか……。うんうん。お姉さんにも人の心くらいあるはずだ。











「彼女は私が蘇らせた。普通、人は生き返ったりしないんだが……便利な能力を持っているし、永久に館でこき使いたかったからね。常識的に考えて、生き返るのに代償がないわけないだろう。いやぁ、きっかけを作ってくれて礼を言うよ」


 ――境界の館に戻った俺様勇者の前で。お姉さんは、俺をそっと抱き寄せ、包み込むように肩を抱いて、そう言った。見えないけど、俺の背後で凄く邪悪そうな笑みを浮かべているに、違いなかった。


「言い方……っ! いやっ、ちがっ、違いますよ……⁉ 信じちゃ駄目ですっ!」





 すると、俺様勇者は、屋内だというのに、躊躇なく剣を抜き、お姉さんに切っ先を向けた。


「俺様と勝負しろ……! もし勝てば、そいつを解放してもらう‼」


「うーん、これは困ってしまったなぁ。どうしようかなぁ」


 ……やばい。お姉さん、めちゃくちゃ楽しそう。

私が蘇らせた(本当)

普通、人は生き返ったりしない(本当)

永久に館でこき使いたい(と思ってるけど、辞められたら仕方がないなぁ)

常識的に考えて、生き返るのに代償がないわけない(普通じゃないから別に代償はない)

きっかけを作ってくれて礼を言うよ(なんだか面白そうな物が見られそうでわくわくしている)

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― 新着の感想 ―
やはり……w というか、勇者くんはこれに懲りて連れ回すのやめて現地語覚える努力始めたら?と思わないでもないですが、それはそれとしてもっと曇ってほしい。
人の心はあるが適用されるとは限らない。 世界から孤立したらある意味それは一つの新しい世界なのでは(´・ω・`)? 前々回の活動報告のうちうちさん (今回守りたいルール) ①一人称は俺 ②主人公は…
人外の寿命と能力を持ったやつの口からこんな冗談が出てきたらそらビビるわ。やらないだけで出来そうだし。 お姉さんの主人公に対する友好度は40/100ぐらいかな?それでもお姉さんの交友関係の中では比較的…
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