もう少しダイエット
学校に帰ってから、洗面所に置いてある体重計に乗ったの。
ガガ―ン。
な、なんと、二kgも増えてたんだ。
冬休みたくさん食べたからだよ。どうしよう…。あと十日だよ。十日で二kg減らすなんて無理だよ。それに、無理なダイエットなんて禁物だもんね。とりあえず、運動して間食やめなきゃいけないよね。
そして、私のダイエットは始まった。
間食やめるって決めたけどやっぱりキツイよ。運動はジョギング。家から一kgのとこにある公園まで走って、公園まわりを五周走って、そしてまた家まで戻る事にしたの。
元気よく外に出るけど、すごく寒いよ。だけど、星はとても綺麗。
「う―、寒いっっ」
私は独り言のように言うと走り出した。
十日であまり痩せないかもしれないけど、少しでもいいから体重を減らしたい。好きな人のためにこんなに真剣になるなんて思わなかったよ。
走り始めて半分もたたないうちに疲れちゃった私。
ゼェハァ…ゼェハァ…。
キ、キツイよ。でも、頑張らなくちゃ。自分が決めた事だもん。翔太君のためもあるけど体重増えた自分のためでもあるもんね。
公園まで来ると、少し休憩。ベンチに腰をかけた。
その時だった。
「こんばんは」
声を掛けられて、顔を向けると可愛い子犬を連れたお姉さんがいた。
その人は二十歳くらいで、優しそうな感じなの。
「こんなとこで何してるの?」
「ちょっと太ったからジョギングしてるんです」
「もしかして、バレンタインのため?」
私、バレンタインって言葉が出たらうつむいちゃった。
これってそうですって言ってるようなもんだよね。
「やっぱり…。後悔だけはしたらダメだよ」
「ハイッ!」
元気よく返事しちゃった。
そうだよ。後悔だけはしたくない。お姉さんに言われたもん。私、バレンタインまでにダイエット成功してみせるよ。
「ダイエット―――――?!」
真理ってば声がでかい。
慌てて真理の口をふさいじゃう。
翌日の朝、真理にダイエットをすることを伝えたらビックリな大声を出したわけ。
「真理、声がでかいよ」
私は頬をふくらませる。
「ゴメンって…。マジで言ってんの?」
「うん。昨日からやってるんだ。まぁ、無理はしない程度にやってるんだけどね」
「そっか。頑張ってね」
「ありがとう」
真理の頑張れコ―ルを受けた私。
「ダイエットかぁ…。私はやったことないなぁ」
「え?!」
「何ビックリしてんのよ? 当たり前じゃない。中学生なんだよ?」
「そりゃそうだよね。真理は太ってないからダイエットの必要ないかも…」
「そうなのかな。とりあえず、無理は禁物だよ」
真理の忠告を聞きながら、バレンタインの事を考えていた。
ダイエットをしてから六日。バレンタインまであと四日。
明日は学区内の運動会。明日は子供から大人まで町内で参加出来る運動会。出入り自由、見学だけでもOKな運動会だから解放感に溢れてる。当然、私と翔太君一家は同じ町内だから同じチ―ムなんだ。
それに、抽選で各町内から小四から中三までの男女二人ずつダンスをするのに当たっちゃって、ダンスを踊らなきゃいけないんだ。各町内からだから三十人はいるんだ。一週間前から練習して、すごくキツかったんだけど今日のために頑張ってきたから成果を発揮したい。二曲だから余計に練習キツかったけど、ダイエットには効果あったかもしれないな。ダンスの練習があったこの一週間は、ジョギングは学校終わってからしてたよ。
だけど、明日は翔太君にいっぱい会えるから嬉しいよ。でも、午後から仕事あるみたいだから午前中だけ見るってママが言ってた。午前中だけでもいい。翔太君に会えるなら…。彼女でもなんでもないから、わがままは言えないよね。
お菓子はどうしよう…。もし、翔太君に「お菓子食べよう」って言われたら、ほんの少しだけならいいよね。少しだけなら食べてもいいよね。