瑠璃花倒れる?!
翌日の学区内の体育会の朝、体重計に恐る恐る乗ってみたの。そしたら、一kg減ってたの。あと一kg減れば元に戻るよ。
「瑠璃花! 早くしないよ!」
「は―い!」
台所からママが呼んでる。
簡単に身支度をすると、ママと一緒に学校に向かう。
パパは役員だから三十分前に学校に行ったんだ。
実は昨日の晩ご飯と朝ご飯食べなかったんだ。そのせいで、
くぅ〜〜〜〜〜〜っ。
お腹鳴っちゃったの。
仕方ないよね。
学校に着いて、真理が私の住んでる地域のテントまで来てくれたの。
「瑠璃花、おはよう。早速だけど彼はどんな人なの? 来てるでしょ?」
真理に催促されると、私は翔太君を探す。
「前列に座ってる紺のジャージ着てる人だよ」
翔太君を見つけると、真理に教える。
「後ろ向いてるから顔が見えないよね」
「そうだね。あ、こっち向いた」
真理ってばまるで好きな人を見つけたような感じで、私よりキャピキャピしてる。
「あの人か。結構、いい感じじゃん」
「そうかな?」
「うん。お似合いだよ」
「ありがとう」
思わず、真理が言った“お似合い”って言葉に反応しちゃった。
お似合いだなんて嬉しいよね。片想いだけど嬉しいよね。
クラッ。
ヤ、ヤダ。目の前がクラクラしちゃった。ご飯抜いちゃったからかな? お昼まで我慢しなきゃ。
そして、九時に学区内の体育会は始まった。
プログラムの一番は、小学生の100m走。最初は一年から三年までが走って、その次に四年から六年まで走るの。参加賞がもらえるんだけど、一位から三位まではもっといい参加賞がもらえる。
私が出るダンスは、十一時半からだからまだ先だ。
その間、翔太君と話してた。
「ダンス頑張れよ」
「目一杯、頑張るね」
「写真いっぱい撮るよ」
「変な顔してるのはダメだよ」
「わかってるって…」
私達の間に、幸せな一時が流れる。
街中、バレンタインで一色。甘い香りに包まれてる。なんだか、ウキウキしてる。
公園でお姉さんに言われた。後悔だけはしちゃダメよって…。
ハァ…。
深いため息。
バレンタインの事でため息ばっかりついてる。
後悔してる? ううん。後悔なんてしてない。
翔太君、バレンタインにあなたに私の“好き”を伝えるね。その時まで待っててね。
ダンスの出番まで、あと十五分。体育館で衣装に着替えて、出番まで待機する。
「今までの練習した成果を見せなきゃね。みんな、頑張ってよ!」
ダンスを教えてくれた他の地域の人が、私達に頑張れコ―ルを送る。
「みんななら大丈夫だからね」
「ハイッ!」
みんな気合いを入れて返事をする。
急に緊張してきたよ。大丈夫かな。間違えたらどうしよう…。きっと大丈夫だよ。
いよいよ本番がやってきました。
♪♪♪〜
一曲目の曲が始まって、全員が一斉に踊り出す。
一曲目の終わりのほうになると、また私のお腹がなったの。一つ一つの動きがよいしょって感じになってる。
下を向くと、地面がクルクルと回る。
あれ、あれれっ…。な、何…?
クルクル…クルクル…。
全部がクルクル…。目の前の物が回ってる…。私、地面に落ちていくの…。
一体、何が起こったの? もしかして、ダイエットのせい? 昨日の晩ご飯と朝ご飯抜いちゃったせい? バレンタインで翔太君の事で悩んでて食べなくて、ダイエットしたからこんなことになったんだ。
誰にも翔太君を取られたくない。絶対に誰にも渡したくない。ずっと翔太君の側にいたい。気持ちを伝えるまでは気が張ってるけど、私は勇気を出して気持ちを伝えたいの。
ぼや〜ん…。
目の前のものがだんだんとはっきりしてくる。
がばっ!
私は勢いよく飛び起きたの。
「大丈夫か?」
翔太君が心配して声をかけてくれる。
「…翔太…君…?」
「いきなり倒れたからビックリしたよ。瑠璃花ちゃんの家族がさっきまで見てたんけど、交代で見ることになったんだ」
翔太君は安心しきったように言った。
時計を見ると、二時前を指してる。
翔太君は午前中だけ参加するって聞いてたから、今いるって事は仕事休んだって事だよね。
「仕事は…?」
「休みにしたんだ。ホントは出なければいけないんだけど、無理に休んだよ」
笑って答えてくれ翔太君。
そんな翔太君を見てると、自分が情けなくなってくる。こうやってみんなに迷惑かけてるよ。ホント情けないよ…。
そう思うと、涙が出てきた。
「瑠璃花ちゃん? どうしたんだよ?」
「翔太君に仕事休ませて、みんなに迷惑かけてるって…」
「仕事はオレが勝手に休んだだけだし、瑠璃花ちゃんが倒れたのは瑠璃花ちゃんのせいじゃない。みんなに迷惑かけてないし、誰だって協力していくもんだよ。わかった?」
翔太君、キッパリ言い切ってくれる。
「…そう…かな…?」
「そうだよ」
翔太君、笑顔になる。
「そういえば、瑠璃花は貧血だって。もう少し寝てたらいいよ」
翔太君がそう言った後に、私ベッドから降りたの。
「オ、オイ? 大丈夫かよ?」
「もう大丈夫だよ」
「でも、もう少し寝てた方がいいって…」
「大丈夫だから…」
そう言って出て行った。
「瑠璃花、もう大丈夫?」
グラウンドに戻ると、真理が近付いてきて心配してくれる。
「うん。もう大丈夫よ」
無理に笑顔を作ってみせる。
大丈夫だけど私の心は大丈夫じゃない。また不安が広がっていく。胸がズキンズキンと痛くなる。翔太君が優しくしてくれたのに逃げてきちゃった。なんてことしちゃったんだろ。後悔だよ。私ってばヒドイよね。好きな人から逃げるなんて最低だよね。




