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21 冒険者の街 その4

なんとか今日も更新できました。

 ダンジョンには管理ダンジョンと非管理ダンジョンがある。

 アルカサのダンジョンは管理ダンジョンだった。

 管理されたダンジョンには、出入り口にだいたい兵士の詰所がある。

 基本的には魔物が街に溢れ出さないようにするために存在しているのだが、一応冒険者側が入る際もチェックされる。


「クレンカ地方で有名なワイルドローズ? ひょっとしてアンジェさんですか?」


 若い兵士の声は弾んでいた。

 ワイルドローズはクレンカ地方で有名なSランク冒険者パーティーでも、領主が違うここエストレ地方では登録したばかりのEランクの冒険者パーティーだ。

 クレンカ地方に活動拠点を移す前にCランクまではいっていたのだが、3年ごとの更新をしなかった。

 だからアンジェのことを知っている兵士は冒険者に造詣が深いのかもしれない。

 冒険者の愛好家もたまにいた。


「そうだけど」

「やっぱり! 大ファンなんです! 握手してもらっていいですか?」


 アンジェがうんざりした顔をしながらも手を出した。

 若い兵士は嬉しそうに手を握る。


「ということは貴方はルシアさん?」

「ワイルドローズなんだからそうに決まってるじゃない」


 ルシアが雑巾でも持つように若い兵士の手のひらを人差し指と親指で摘んだ。


「リンスさんですよね!」

「そーだよん」


 リンスは笑顔で握手に応じた。


「レイです」


 若い兵士が最後にレイの顔を見る。レイはいつものように、どうせお愛想で握られるものだと思った。

 名前も先に言った。思い出すことができずに気まずい思いをするからだ。


「あ、あれ? あなたひょっとしてアドバンスの」

「え?」

「剣鬼のレイさんですか?」


 若い兵士はは20歳前後に見える。よく知っているなと思う。

 レイがヴァン、マウアー、ユアと共にアドバンスという冒険者パーティーで活躍していたのが、15年ぐらい前だからだ。

 若い兵士は想像以上の愛好家なのかもしれない。

 アンジェ達の時以上に力いっぱい手を握られる。なかなか放してくれない。


「僕と同じように詰所の兵士をしていた親父に聞いてますよ。凄い冒険者だったって。まさかレイさんがワイルドローズにいたとは」


 レイはこれはこれで辛かった。


「そ、そう。もういいかな?」

「あ、す、すいません」


 レイ達はやっとダンジョンに入れた。

 パーティーで入り口からすぐの地下1層に降りる階段を降りているとアンジェがレイを見る。


「レイって凄い冒険者だったんだね」

「え? いや、そんなことないよ」

「アドバンスは私も聞いたことあるよ。凄いパーティーって聞いた」


 アンジェはどうしてそういうことを今まで話してくれなかったのかとも思ったが、自分も過去を深く聞かれたことはない。

 冒険者とはそういうものなのだ。ずっと一緒にいるお互いの過去のことが多い。

 アンジェが寂しさを感じているとレイが笑う。


「いや、ワイルドローズのほうが良いパーティーだよ」

「そ、そう」

「メンバーのバランスも良いからね」


 アンジェが軽くなった足取りで小さなスキップをしているのは岩のブロックを重ねて作られた遺跡風のダンジョンだった。

 地下五層までは松明や魔法石で冒険者のために明かりも確保されている。

 さらに聖剣による魔物除けのスキルが働いているのですぐに地下2層へ下る階段までたどり着けた。

 ルシアがつぶやく。


「けど、まさかこのダンジョンに地下10層より下があったなんてね」


 アルサカのダンジョンは歴史学者によって、英雄リクと魔族の王ヴァサーゴが戦った2千年よりも前に作られていると考えられていた。

 サキュラの話によれば、7千年前に作られた魔貴族ノエラの地下神殿だという。

 その玉座は地下12層とのことだ。

 アンジェが言った。


「アルカサのダンジョンは完全踏破ダンジョンで10層までっていうのが常識だったんだけどねえ。サキュラの言ってることは本当かしら?」


 ルシアがつばながの三角帽を深くかぶり直す。


「……他にも怪しいことがあるわ」

「なに?」

「今の魔貴族は本体を封印されていて〝影〟のような存在らしいけど、なぜ聖剣が抜けたのに魔貴族が封印されたままなのかは答えないのよ。答えたくないってね」


 レイはサキュラの真剣な目を思い出す。


「俺にはサキュラが嘘を言ってるように思えなかった。アイツは答えたくないことは答えないと言ってるわけだし、このダンジョンが12層まであるのは本当じゃないかな?」


 アンジェが答えた。


「ふーん。まあ本当のことを言っているとして、本体が封印されているままならいいんじゃないの?」


 レイが信じても、ルシアはサキュラになにか思うところがあるようだ。


「他にもサキュラが答えなかったことがあるわ」

「なに?」

「英雄リクはどうやって魔神結界を持つ魔族の王ヴァサーゴを倒したのかしら? それも答えなかったの」

「確かにそれは気になるわね。それがわかれば私も魔貴族を斬れるしね」

「でしょ」


 ルシアもうなづく。

 ガーランドの斬撃は魔神結界さえなければサキュラに届いていたとルシアは思う。

 影であるからかその強さはヴァサーゴの伝説ほどの迫力は無い。それでもルシアは慕っているレイ一人に危険を任せるつもりはない。

 レイはサキュラを信じることにしたようで、ルシアもそれは尊重しているのだが、パーティーのブレーンとして常に様々な事態を想定していた。 

 けれども今のところ罠もなにもない。

 10層までは完全に攻略されているダンジョンなので、そこまでの地図もある。

 まっすぐ迷わずに地下8層に降りられる階段が存在する部屋までたどり着いた。

 そこは地上のように兵士の詰所があった。

 優秀な兵士が交代で番をしているのだ。食料や飲料やマジックアイテムも地上の十倍の値段で売っている。

 レイが気さくに兵士に話しかける。

 ワイルドローズではこういうこともレイの仕事だった。


「どーも。ご苦労様です。なにか変わったことがありますか?」


 ダンジョンはたまに環境や出現する魔物が変わることがある。


「ないよ。たまに以前より強力な魔物が沸くぐらいかなあ」

「そうですか。では」


 魔貴族の影響かも知れないが、そんなことはたまにあることだ。

 レイ達は階段を降りようとした。


「あ、ちょっと待った。あんたらパーティー名は?」

「ワイルドローズですけど」

「ああ、あの有名な」


 レイが愛想笑いをして、今度こそ地下に降りようとする。


「ダメダメ。アンタ達は降りられないよ」

「え? なんでですか?」

「このダンジョンの地下8層からはBランク以上じゃないと入れなくなったんだ。危険だからね」

「ほ、本当?」


 レイはそう聞きながら管理ダンジョンではよくあることだと知っていた。

明日も更新予定です。

ここまでの感想や評価ありましたらよろしくお願いします。


傲慢ヴァサーゴ 魔神の頭 ×英雄リクの手で死亡

憤怒ダガン 魔神の右腕

嫉妬サキュラ 魔神の胸 エリース・アドレア伯爵(イセリア王国のテーリア地方領主) ◯同盟 

怠惰ノエラ 魔神の左腕 イセリア王国 エストレ地方 都市ダホス アルカサダンジョン

強欲ジオ 魔神の右足

暴食カーイ 魔神の左足

色欲ステラ 魔神の下半身


アルサカのダンジョンにいる魔貴族をジオからノエラに変更しました。

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