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22 冒険者の街 その5

「ワイルドローズの名前知ってるなら私達が王国最強って言われてることもあるの知ってるでしょ?」


 アンジェが食い下がっても兵士は首を縦に振らなかった。


「知ってますけど、エストレ地方のランクではEランクですから」


 イセリア王国は地方ごとに別々の領主がいる封建国家で、領主が変わると法も変わることが多い。

 少なくとも冒険者ギルドで認定される冒険者ランクも地方ごとだった。


「世界の危機かもしれないのよ?」

「え? 世界の危機?」

「魔……」


 レイが後ろからアンジェの口を押さえる。


「す、すいません。また来ます」


 詰所から少し離れるとすぐにアンジェが不満を言い出した。


「もう! お役所仕事で融通が効かないんだから! 突破しない?」


 レイが慌ててなだめる。


「おいおい……現実的に考えて犯罪者にされるぞ」

「別に良いじゃない。後で説明すれば」

「今のところ魔貴族はなにも人に害することをしてないからなあ。信じてもらえないだろ」

「これから痛い目見ても知らないんだから」


 ルシアが腕を組む。


「けど普通にランクをあげようとしたらBランクになるまで一年ぐらいかかるかもよ」


 冒険者パーティーのランクは実力を証明するという側面ももちろんあるが、もう一方で信用を証明するという側面がある。

 商隊キャラバンの護衛にギルドが紹介した冒険者パーティーが盗賊団に変わりましたではギルドに依頼が来なくなってしまう。

 そのため基本的には地味な仕事をこなして、ランクの昇段の申請をして徐々にあげるのが普通だった。

 リンスが言った。


「ここで待ってAランクの冒険者パーティーに頼んだら?」


 Bランク以上の冒険者パーティーしか通さない場所では一つ上のAランク冒険者パーティーが同行に了承すれば入ることができる。

 アンジェはまだイライラしていた。


「でも発見物とか全部そいつらのものにされちゃうじゃない」


 アンジェの言うようにこの場合の報酬は同行する高ランクパーティーのものになってしまう。

 ルシアもリンスに反対のようだ。


「確かにそれは美味しくないわね。私達はダンジョンの未発見層を確実に発見できるのだから」


 何十年も十層と思われているダンジョンの新層を発見するのは、莫大な報酬が約束されると推測できた。

 なぜならダンジョンは資源の炭鉱的な側面があるからだ。

 事実、この都市ダボスはその資源で成り立っている。

 アンジェが閃いたように手を叩いた。


「新しい階層を二層も発見したら凄い報酬になるね!」

「気がついてなかったの? その功績を他のパーティーに取られるのは悔しいわ」


 レイがまた慌てた。


「い、いや。そんな報告できないからね」

 

 アンジェとルシアが騒ぐ。


「な、なんでよ!」

「そこから上がる利益の一部をずっとくれるかもしれないのに」

「本当に危険かもしれないだろ。せっかくバレてないんだから魔貴族を倒してそのままに隠しておいたほうが良いじゃないか」

「むー」

「うーん」

「とにかく一旦戻ってアンナの酒場に行かないか? なにか良い方法や情報があるかもしれない」


 レイはアンジェとルシアの文句を聞きながら戻った。

 ワイルドローズ一行はダンジョンの外に出た。

 レイはダンジョン入口の詰所で、何か有益な情報が手に入らないか、と例の若い兵士に話しかけた。


「あ~そうなんですよ。二年ぐらい前からですかね。Bランク以上のパーティーしか地下8層より下は行けなくなったんです。強い魔物モンスターが沸くようになって」


 ひょっとすると魔貴族の影響かとも思う。


「どんな魔物モンスター?」

「それがゴールドスライム、ライトリザート」


 ゴールドスライムは金色に輝くスライムで死体からわずかに砂金が取れる。ライトリザートからは魔力で発光する鱗を持っていてライトの代わりにもなる。


「どっちも金になる魔物じゃないか。それほど強くもないし」

「そうなんですよね。だから当初は凄い数の冒険者が地下層を目指したんです。でも、少なくともBランクの冒険者パーティーが5チーム、Aランク冒険者パーティーが2チームも帰ってこなくなっているんですよ」

「え? チームごと」

「えぇ。一人も。Cランク以下はもっとです。だから二年前からBランク以下は通行不可にしたんです」


 ゴールドスライムやライトリザート相手にBランク以上のパーティーが一人も生還できないというのは考えにくかった。

 レイがアンジェとルシアを見ると彼女達も頷いた。

 魔貴族の仕業だろう。


「な、なんとか今すぐワイルドローズが入れる方法はないかな」

「そ、そう言われても。そうですねえ。Bランクになっていただかないと。それこそ新しい階層や未踏破部分を見つけるとか?」

「……」

「無理ですよねえ。あ、でも冒険者ギルドの本部が難度Sランクの競合の依頼を出すって聞いてますよ」

「難度S! しかも競合か」

「ええ。本来なら難度SはEランクパーティーでは受けられないですが、すべてを管轄している冒険者ギルドの本部で交渉すれば、ワイルドローズさんなら受けることができるかもしれませんよ」

 

 難度がSランクに認定される依頼は滅多にない。

 競合は複数のパーティーが同時に依頼を受けて成功したパーティーが報酬を受ける仕組みだ。

 ランクがBになるかはわからないが、一気に上がることは間違いない。


「ありがとう。とりあえず冒険者ギルド本部に行ってみるよ」


 レイ達はダボスの街の冒険者ギルド本部に行くことにした。

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