第1巻 第169讃歌 インドラ讃歌(王の軍勢と不滅の防衛篇)
1
インドラよ、汝が大いなる裏切りから、
まことに、我らに近づく者らを狙う大いなる謀略から、
我らを護るように。
マルートたちの制御者よ、よく見定めて、
我らに彼らの祝福を授け給え。
彼らは汝の最も愛しき者たちなのだから。
2
死すべき人間のあらゆる行いは、
インドラよ、汝の智慧において指示されている。
マルートたちの軍勢は、
光をもたらす戦いの略奪物を獲得せんとして、
歓喜しつつ前進するのだ。
3
インドラよ、汝のあの槍は、
我らのために固く据えられた。
マルートたちは、
己の恐ろしい威力のすべてを動かした。
アグニ(火神)すらも、柴(低木)の中で眩しく輝く。
水流が島を抱き抱えるように、
ごちそう(奉納物)が彼を包み込むのだ。
4
インドラよ、最も強大なる賜物として勝ち取られた、
報償(手当て)としてのあの富を、
今我らに与え給え。
汝を歓ばせる讃歌が、
蜜の爽やかな甘みによるように、
ヴァーユ(風神)の胸を膨らませんことを。
5
インドラよ、汝とともに、
正しく生きるすべての者を前進させる、
最も豊かな財宝がある。
今やこれらマルートたちが、我らに慈愛を示さんことを。
古より常に、
我らを助けるのに迅速であった神々が。
6
インドラよ、恵みの雨を降らせる男たち(マルートたち)を、
前へと連れ出し給え。
広大なる大地の領域において、己の力を尽くし給え。
胸の広い彼らの斑点の鹿たちは、
戦場における王の軍勢のごとくに、
並び立っているのだから。
7
前進するマルートたちの咆哮が聞こえる。
恐ろしく、光り輝き、素早く動く彼らは、
その突進をもって、
彼らを愛する者たちと戦おうとする死すべき人間を、
あたかも罪人のごとくに投げ倒すのだ。
8
マルートたちを伴うインドラよ、
マーナの者たち(詩人一族)に、
万能の贈り物を、何よりも牛の贈り物を授け給え。
神よ、汝は称賛されるべき神々とともに讃えられた。
我らが十分な豊穣の中に、
活力を与える食べ物を見出さんことを!
解説
偉大な裏切りや敵の罠から人々を護るインドラと、王の軍勢のごとく戦場に並び立つマルト神群。水の中に浮かぶ島のごとくに燃え上がる火神アグニの比喩や、風神ヴァーユの胸を膨らませる甘き讃歌など、神々の共闘と圧倒的な防衛力が力強く描かれた一曲です。
全8節という重厚かつ引き締まった構成の中に、主神インドラの絶対的な防衛力と、王の軍勢のごとく並び立つマルート神群の整然とした威圧感が描かれた傑作讃歌です。
* 1–3節:裏切りを防ぐインドラの槍と、島を囲む水流
1〜3節では、背後から忍び寄る「大いなる謀略(裏切り)」から人々を保護するインドラの頼もしい姿が描かれます。インドラの固定された槍と、低木の中で燃え上がるアグニが「水に囲まれた島」のごとく奉納物に包まれる比喩は、揺るぎない安全と防壁を強く象徴しています。
* 4–6節:風神ヴァーユの歓喜と、戦場に立つ「王の軍勢」
4〜6節では、詩人の讃歌によって風神ヴァーユの胸が膨らみ、インドラが恵みの雨をもたらすマルート神群を戦場へ引き連れてきます。「胸の広い斑点の鹿(マルートの乗用獣)」が立ち並ぶ様を「戦場の王の軍勢」に例えたフレーズは、整然とした威容と圧倒的な軍勢の威圧感を鮮明に伝えています。
* 7–8節:罪人を打ち倒す咆哮と、マーナ一族への祝福
後半では、神愛を受ける人々に害をなそうとする敵を、罪人のごとく一蹴するマルートたちの激しい突進が響き渡ります。古代の詩人マーナの一族へ、万能の富と牛の群れが与えられることを祈願して締めくくられます。




