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リグ・ヴェーダ 詩訳 ― 火の神が歌う世界の始まり  作者: はまゆう


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42/66

第1巻 第168讃歌 マルト神群讃歌(自生せる戦士と大地の微笑み篇)

ー1

あらゆる儀礼において、

汝らを近くに抱く者には、

速やかな獲得(勝利)がある。

汝らは神々に仕える者の、

すべての歌を歓迎するのだ。

されば我は美しき称賛の讃歌をもって、

汝らをここへと向かわせよう。

二つの世界(天地)の幸福のために、

大いなる援助を与えんとして。

2

取り囲むようにして、

あたかも自ら生まれ、

自ら強大であるかのように、

食物と光を振り落とす者たちは、

生命へと躍り出る。

数なき水流の波立ちのごとくに、

近くにある時、称賛に値する者たち、

牡牛らのごとく、牝牛らのごとくに。

3

充分に育ちし茎が絞り出され、

心の中に吸い込まれ、

そこに友愛をもって留まるソーマ酒らのごとく、

彼らはある。

彼らの肩の上には、

あたかも戦士の槍が載るかのごとくであり、

彼らは手の中に、

短剣と環(腕輪)を握り締めている。

4

自ら軛を繋ぎ、

彼らは天から軽やかに降り立った。

不滅の者たちよ、

己の鞭をもって自らを打ち、

速度を加速させよ。

塵に汚されぬマルトたちは、

その威力において強大であり、

燦然たる槍で武装し、

堅固なるものすら投げ倒したのだ。

5

稲妻の槍で武装したマルトたちよ、

汝らのうちの誰が、

舌が顎を動かすように、

自らの意志で汝らを動かすのか?

汝らは食を求めるかのように、

天の床から突進する、

太陽の日々の駿馬のごとく、

数々の使い(使命)のために。

6

語り給え、この強大なる領域の、

最果ての限界はどこにあるのか。

マルトたちよ、汝らが到達した、

最も深き底はどこなのか。

堅固に打ち立てられた山(積載物)を、

汝らがもみ殻のごとく投げ倒し、

山から光り輝く水流を、

送り出す時に。

7

汝らの獲得は強大であり、

眩しく、天の光を放ち、

熟した果実を伴い、

マルトたちよ、豊穣に満ちている。

汝らの賜物は吉兆なり、

自由な施与者の報償のごとくに、

不滅の神々のごとくに、

勝利に満ち、遥か遠くまで広がるのだ。

8

汝らの戦車の輪渕リムの前で、

河川らは轟き渡る、

彼らが雨雲の声(雷鳴)を発する時に。

地上の上の閃光(稲妻)らは笑い声をあげる、

マルトたちが己の油脂(恵みの雨)を、

撒き散らすその時に。

9

プルシュニ(母神)は、

大いなる戦いで戦うために、

絶え間なく動くマルトたちの、

光り輝く軍勢を生み出した。

ともに育まれた彼らは、

怪物(巨大な嵐)を生み出し、

然るのちに己を強める食物を求めて、

周囲を見渡したのだ。

10

マルトたちよ、詩人たるマーナの息子、

マンダーリヤによって歌われた、

この汝らへの称賛が、この汝らへの歌が、

我らを養う食べ物とともに、我らに子孫をもたらさんことを。

我らが十分な豊穣の中に、

活力を与える食べ物を見出さんことを!



解説:

自ら生まれ、自ら軛をかけ、天から軽やかに降り立つマルトたち。彼らが自らの鞭を打って駆け巡る時、河川は轟き、閃光(稲妻)は大地上で笑い、不滅の恵みの雨が降り注ぐ。荒ぶる戦士の槍と短剣を携えた彼らの躍動美が、鮮烈な比喩とともに弾け飛ぶ一曲です。

全10節という引き締まった構成の中に、マルト神群の「自律的な強大さ」と「自然界との鮮烈な交歓」が極めて生き生きとした比喩で描かれた傑作讃歌です。

* 1–4節:自ら生まれ、自ら駆け下る不滅の戦士たち

1〜4節では、誰かの指示ではなく「自ら生まれ(自生)」「自ら戦車に軛を繋いで」天から降り立つマルトたちの自律した神威が歌われます。肩に槍を担ぎ、手に短剣と環を握り、自らの鞭で馬を急かして疾走する彼らは、堅固な建造物や岩をも粉砕します。

* 5–8節:もみ殻のごとく山を砕き、笑う稲妻

5〜8節の情景描写は本讃歌の圧巻のハイライトです。太陽の駿馬のごとく天空を舞い、堅い建造物を「もみ殻」のように吹き飛ばして恵みの水流を開放します。戦車が駆け抜ける時に河川は雷鳴のごとく轟き、雨とともに奔る稲妻は「大地上で笑い声をあげる」という、眩しいまでの表現美が炸裂します。

* 9–10節:母プルシュニの軍勢と、不滅の祝福

後半では、斑点の牝牛(雲)である母神プルシュニから生まれ出でたマルトたちが、さらなる活力を求めて世界に恵みをもたらす様が描かれます。詩人マーニャによる一族の繁栄の祈りで堂々と締めくくられます。


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