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リグ・ヴェーダ 詩訳 ― 火の神が歌う世界の始まり  作者: はまゆう


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35/65

第1巻 第161讃歌 リブ神群讃歌(神業の職人と一つの盃の奇跡篇)

1

「なぜ最も優れた者が、

なぜ最も若い者が、

我らのもとへ来たのか?

彼はいかなる使者として来るのか?

我らは何を言ったというのか?

我らは名高き生まれの盃を、

非難したわけではない。

兄弟なるアグニよ、

我らはただ木の良さを讃えたのだ」

2

「単一である盃を四つにせよ。

神々はそう命じられた。

それゆえに我は来たのだ。

スダンヴァンの子ら(リブたち)よ、

汝らがこの事をなすならば、

汝らは神々とともに、

祭祀に与かる者となるだろう」

3

使者アグニへの返答として、

汝らが語りしこと。

「駿馬が造られねばならぬ。

戦車がここで組み立てられねばならぬ。

牛が創られねばならぬ。

父母たる二人が若返らされねばならぬ。

兄弟アグニよ、

我らがこれらの事をなした時、

我らは汝のもとへ向かおう」

4

リブたちよ、

汝らがこのように成し遂げた時、

汝らはこのように問い正した。

「使者として我らのもとへ来た彼は、

どこへ行ったのか?」

その時、トヴァシュトリ(工芸神)は、

四つに造り直された盃を見て、

神々の妻たちの間に身を隠した。

5

トヴァシュトリがこのように語った時。

「神々の飲み器なる盃を非難した、

この男たちを殺してしまおう」

ソーマの汁が注がれた時、

彼らは己に新しい名を与えた。

その新しい名のもとに、

乙女は彼らを歓迎したのだ。

6

インドラは己の栗毛馬らを繋ぎ、

アシュヴィン双神の車には馬が繋がれ、

ブリハスパティは、

あらゆる色の牛を連れてきた。

汝らはリブ、ヴィブヴァン、

ヴァージャとして神々のもとへ行き、

技に長けし者として、

祭祀における自らの分前を得たのだ。

7

汝らは己の智慧をもって、

一皮(皮袋)から牛を連れ出し、

あの古き父母に、

再び若さを与えた。

スダンヴァンの息子たちよ、

馬から一頭の馬を形作り、

戦車を整えて、

神々のもとへ行った。

8

「この水を飲め」と、

汝らは彼らに語った。

「さもなくば、

ムンジャ草を洗ったこの水を飲め」

スダンヴァンの息子たちよ、

これすらも認めぬならば、

第三の酌(ソーマ奉納)において、

歓喜し給え。

9

「水こそが最も優れている」と、

汝らの一人が言った。

「アグニこそが最も優れている」と、

もう一人が言った。

もう一人は多くの者に向かって、

雷雲を讃えた。

然るのちに真実の言葉を語りつつ、

汝らは盃らを造り上げたのだ。

10

一人は不自由な牛を水辺へと追い、

一人はまな板の上にもたらされた肉を整え、

一人は日没の時に、

糞(老廃物)を運び去る。

父母(天地)はいかにして、

彼らの作業において子らを助けたことか!

11

男たち(リブたち)よ、

汝らは自らの巧みな技術により、

高き場所に人間のための草を創り、

谷間に水を引き入れた。

リブたちよ、

何も隠し得ぬ者(太陽神)の家にて寝入った、

あの行いを、

汝らは今日繰り返すことはない。

12

世界を取り囲みながら、

汝らが滑るように進んだ時、

尊き父母はどこに居を構えていたのか?

汝らは己に腕を突き上げた者を呪い、

汝らに声を荒げて語りかけた者に、

語り返した。

13

満足いくまで眠り込んだ時、

リブたちよ、汝らはこう尋ねた。

「何も隠し得ぬ者(太陽)よ、

誰が今、我らを呼び醒ましたのか?」

山羊が、犬こそが汝らの覚醒者であると告げた。

満一年が経ったその日、

汝らは初めて我らの目を開いた。

14

マルト神群は天を動き、

このアグニは地上を動く。

大気を通じてヴァーユが近づく。

ヴァルナは海の集まりし水の中にやって来る。

力の息子たちよ、

汝らとともにあることを望みながら。



解説

第161讃歌は、神々の奇跡の職人三人衆「リブ神群(リブ、ヴィブヴァン、ヴァージャ)」に捧げる全14節の大作讃歌です。

工芸の神トヴァシュトリが造った1つの聖杯を4つに増やすという命令、老いた両親を若返らせ、枯死した牛の皮から生きた牛を創造し、インドラの2頭の駿馬を造り出すという「神業」の数々がドラマチックに描かれる、職人技を認められて人間から神々の一員へと昇り詰め、ソーマの分前を得るに及んだ伝説の神話が炸裂する圧巻の一曲です。

全14節にわたり、人間でありながら卓越した技術と知恵(神業)によって神々の仲間入りを果たした三大職人神「リブ神群」の奇跡の伝説が、対話劇のような臨場感をもって描かれた異色の讃歌です。

* 1–5節:トヴァシュトリの盃と、使者アグニとの対話

1〜5節では、工芸神トヴァシュトリが作ったたった一つのソーマ用の盃を、神々の命令によって「四つ」に複製・増量する劇的なストーリーが展開されます。トヴァシュトリは自らの技術を超越されたことに嫉妬と恐れを抱き、身を隠して殺意すら抱きますが、リブたちは己を証明して神々の歓迎を受けます。

* 6–10節:生ける牛の創造、老人の若返り、そしてインドラの神馬

6〜10節では、リブたちの成し遂げた不滅の神業が列挙されます。「皮から生きている牛を創り出す」「年老いた父母を若返らせる」「言葉で動くインドラの駿馬を造る」という人間離れした創造力により、彼らは祭祀の奉納物(ソーマの分前)を得る資格を勝ち取りました。

* 11–14節:太陽の館での12日間の眠りと、万物の祝福

11〜14節は古代の天体・季節伝承が絡む象徴的な場面です。リブたちは「何も隠し得ぬ者(太陽神)」の館で12日間(あるいは1年間)眠りにつき、目覚めとともに世界に水と草木を蘇らせます。自然界の諸神(マルート、アグニ、ヴァーユ、ヴァルナ)も彼らの神聖な手仕事を祝福して締めくくられます。


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