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リグ・ヴェーダ 詩訳 ― 火の神が歌う世界の始まり  作者: はまゆう


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16/22

第1巻 第142讃歌 アープリー讃歌(聖なる儀礼の全プログラム篇)

1 火を点じられ、アグニよ、

柄杓ひしゃくを捧げる者のために、

今日、神々を招き寄せ給え。

贈り物を携え、

ソーマの祝汁を注ぐ者のために、

いにしえの糸(伝統の織り糸)を

紡ぎ出し給え。

2 身から生まれた者(Tanūnapāt)よ、

汝は油によって満たされた、

甘き祭祀を授ける。

贈り物を差し出し、汝のために働く、

私のような歌い手によって

もたらされた祭祀を。

3 驚くべき者、浄化する者、

輝く御方は、

蜜をもって祭祀に振り注ぐ。

天からのナラーシャンサ(Narāśaṁsa)は、

神々の中で崇められるべき

三度の祝福をもたらす。

4 アグニよ、乞われて、

友なるインドラを、驚くべき御方を、

こちらへ連れて来たり給え。

舌の甘やかなる者よ、

汝に向かって、

私のこの称賛の讃歌が

歌い上げられているのだから。

5 柄杓を掲げる者たちは、

この整えられた祭祀において、

刈り揃えられた草を敷き詰める。

インドラのための住処が彩られる、

神々を受け入れるにふさわしい、

広大なる住処が。

6 神々の門よ、

解き放たれ給え。

祭祀を助ける、絶えることなき門よ。

高く、浄化し、切望される門よ、

神々が中へとお入りになれるように。

7 讃歌によって称えられ、

打ち解け合い、

見目麗しい夜と朝(昼)よ。

祭祀の力強き母たちよ、

草の上に、

共に腰掛け給え。

8 二人の神なる祭司、

賢者であり、甘き声を持つ

讃歌の愛好者たちが、

私たちのこの祭祀を全うしてくれますように。

今日、天へと届く、

霊妙なる祭祀を。

9 浄らかなホートラー(Hotrā)女神が、

神々の間に据えられますように。

マルート(Marut)の間に舞う

バーラティー(Bhāratī)女神、

イラー(Iḷā)女神、

サラスヴァティー(Sarasvatī)女神、

マヒー(Mahī)女神が、

崇められつつ、草の上に憩いますように。

10 トヴァシュタール(Tvaṣṭar)神が、

私たちに恵みの露を、

豊かで、驚くべき、

賜物に満ちた露を送り給いますように。

富の増殖と成長のために、

私たちの親族であり、

友であるトヴァシュタールが。

11 植物の主(Vanaspati)よ、

汝みずからを差し出し、

神々を祭祀へと呼び寄せ給え。

聡明なる神アグニが、

私たちの捧げ物を

神々の元へとお届けしてくれますように。

12 プーシャンと、マルートと、

神々の全軍勢と結ばれたヴァーユへ、

讃歌に霊感を与えるインドラへ、

「栄光あれ(Svāhā)」と叫び、

贈り物を捧げよ。

13 「栄光あれ」の叫びとともに

用意された贈り物を楽しむために、

こちらへ来たり給え。

インドラよ、人々の呼び声を聞き給え。

彼らは汝を、祭祀へと招いているのだ。



解説

ヴェーダの祭祀(特に供物を捧げる儀式)において用いられる、きわめて特別な構造を持った「アープリー歌(祝典詩)」です。

祭祀の各工程(薪への点火、供物への注油、聖草の準備、神々の門の開放、夜と朝、神官、三女神など)を順を追って呼び起こす、いわば「聖なる儀礼の全プログラム」を完璧に進行させる祝祭の一章になっています。

* 1–6節:神々を迎え入れるための完璧な準備

1–2節では、アグニ(火)の点火とともに「いにしえの糸を紡ぐ」という表現が使われ、古代から受け継がれてきた伝統の継承が語られます。5–6節では、聖草バルヒスを敷き詰め、神々が降臨するための「神々の門(Doors Divine)」を観念の中で大きく開放するダイナミックな描写がなされます。

* 7–13節:時を司る母たちと、三女神の降臨

7節の「夜と朝(昼)」を祭祀を支える「力強き母たち」と捉える美学、そして9節の語り(ホートラー、バーラティー、イラー、サラスヴァティー、マヒーといった神聖なる女神たちの勢揃い)は、儀式に華やかで格調高い気品をもたらします。10–11節で万物を象形するトヴァシュタール神や植物の主が呼ばれ、12–13節で祝号「スヴァーハー(Svāhā/栄光あれ)」の合唱とともに、主神インドラをはじめとする万神が祭壇へと一気に集結する圧倒的なクライマックスを迎えます。


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