サイキッカーGKの過去
「キャプテンの東周太郎がゲームを作り、埼玉フォルテの攻撃の柱だな」
「こいつは水月と似たタイプで上手くてフィジカルが強い」
立見の1軍が部室棟に集まると、ミーティングルームでプレミアリーグの11節に備えて、対戦チームの研究が行われる。
タブレットを操作する水月が黒髪で長身の選手を映し出た後、一夜から情報が伝えられた。
「攻撃的なチームで現在プレミアリーグ2位だけど、得点に関しては一番取っている」
「前線が良いタレント揃ってるからな。特に今年はエースの外国人がヤバいんだ」
水月と一夜のキャプテン、副キャプテンから次に当たるチームが特に強いと告げた後、水月はタブレット画面をスライドさせる。
そこに褐色肌で黒髪短髪の少年が映し出された。
「あ、ジャレッグだー」
画面の選手を見た瞬間、反応を見せたのは後ろの方で黙って聞いていた輝羅で、彼の顔に心当たりがある様子。
「なんだ。知っているのか輝羅?」
「彼なら僕の友達ですよー♪」
「友達!?」
ジャレッグと呼ばれる少年と知り合いだと聞かされ、驚く者は多数。
皆が埼玉フォルテの外国人選手を知っているせいだ。
「本当に知っているのか兄弟? ブラジルの天才ストライカーと言われるマリト・ジャレッグを」
「はい♪」
一夜の問いに、輝羅は友達だと笑顔で答えてみせる。
マリト・ジャレッグ
埼玉フォルテのエースFWで現在、プレミアリーグの得点ランキング1位に君臨する16歳のブラジル人。
あまり体は大きくないが、並外れたテクニックとスピードで大柄な相手も簡単に抜き去る。
「実は彼とは昔、イタリアのクラブチームで一緒になった事があるんだよー。それでサッカーだけじゃなく一緒に遊んだりして、上手かったなぁ〜」
昔を懐かしそうに振り返り、輝羅は当時の事を振り返っていた。
「ブラジルの天才とお友達って、どんなコネ持ってんだよ神明寺は」
望んでも仲良く出来ない凄い存在と交流を深めた輝羅に、門山は人脈が普通の同年代の中で、相当幅広いと感じる。
「知っているなら、ジャレッグについては対策も含めて神明寺に話してもらおうか」
この中で唯一、敵のエースとチームメイトだった後輩へ、水月は説明を託す。
「彼についてはそうですねぇ〜……ずば抜けて技術が高く、プレースピードが速いのは皆知ってると思いますから〜」
ジャレッグの長所に関しては、プレミアリーグの数試合を見れば自然と分かる事で、改めて言うまでもない。
「とにかく──狡賢いですね♪」
「狡賢いって、どんな風に?」
輝羅の明るい発言に、上城は更に問いかける。
「審判の見えない所で一瞬ユニフォームを引っ張るのは勿論、混戦で結構かましてましたよー」
「マリーシアって奴だな」
ポルトガル語で狡賢いを意味する言葉で、水月も知識として知っていた。
「なので、密集していて審判の目が届かない時は気をつけた方が良いですよー」
表面の動画やデータでは分からないジャレッグの裏。
天才と言われているが、死角の方で悪知恵を働かせるのは、彼と一緒に居た輝羅だからこそ知る情報だ。
「彼の才能と狡賢いアイデアの前に僕も当時、ゴールを割られてましたからね」
「え!?」
次に飛び出した輝羅の発言に、話を聞いていた1軍の間がざわつく。
公式戦だけではなく紅白戦でも決められていない、凄腕の1年GKからゴールを奪ったと聞けば、皆が衝撃を受けていた。
「紅白戦で何度か戦って、速いシュートで良いコースを突かれたり、シュートがDFに当たって決められてましたねー」
「やっぱブラジル凄ぇんだな……」
優れたストライカーとして元々知っていたが、輝羅から得点した事があると聞けば、余計に凄さが際立っていく。
「そんなサッカー王国の天才を抑える事こそ、俺達DFの仕事でしょうが」
驚く部員達に一夜は声を掛ける。
「インターハイの時もそうだけど、何かと1年の後輩キーパーに助けられている。相手が強豪とはいえ、最近ちょっと負担をかけすぎてるからね」
そう言いながら輝羅に近づくと、彼の肩に手を回して一夜は話を続けた。
「次の埼玉フォルテ戦は、輝羅ちゃんの負担を0にする勢いでジャレッグ封じ込めるぞ。良いね?」
「あ〜、その0もありがたいです〜♪」
部員達は一夜の言葉に頷き、皆がジャレッグを止めると張り切っている。
すっかりと輝羅は1軍においても、欠かせない不動の守護神となっていた。
☆
「はぁっ……! 大分ついて来て焦ったな」
「それでも僕、負け越してるからー。もっかいやるよー!」
「いや、ちょっと休ませてくれよ! 何回1on1やったと思ってんだ!?」
イギリス、ロンドンの練習グラウンドにて、ノアは芝生の上に座り込んでいた。
今日も与一を相手に1on1を何度も行い、勝ち越した事で彼から再戦をせがまれている。
「だって〜、後ちょっとで止められるかと思ったら、ノーモーションでボール浮かされて抜かれるの悔しいんだもんー!」
神の子と言われるノアの技を止めるまで、後一歩の所へ迫ったが止められなくて、与一は悔しさが強く残っている。
「それぐらいしないと、今の与一は抜けないんだよ。しかし……試合で決められたぐらいに悔しがってるな何時も」
これは失点が関わっていない、自分達の練習にも関わらず、与一は抜かれる度に本気で悔しがってきた。
英国で様々な選手と戦ってきたが、ノアは目の前の小柄な少年を越える負けず嫌いを見たことがない。
「そりゃ何時だって抜かれたくないし、ゴールはもっと決められたくないよー」
「イタリアのユースクラブに居た頃は決められてないだろ。特にキラは化け物かってぐらい凄かったぞ」
神明寺弥一の息子にして、双子の兄弟である与一と輝羅。
彼らが守るゴールは、同年代の強豪達を完封し続けて、驚異の無失点記録を続けている。
特にフィールドプレーヤーとGKの両方で優れる輝羅は、ノアから見ても化け物だと。
「──その輝羅もゴールを決められていたよ。チームの紅白戦で逆転ゴールをね」
「何……?」
興味深い事を聞かされ、ノアは疲れてるにも関わらず、身を乗り出す勢いで与一の話を聞く。
「チームにジャレッグってブラジル人の天才エースが居てさ。僕達に張り合うぐらい上手くて、輝羅は彼に2点を許したんだ」
「それは……お前も出ていたか?」
「ううん。その日に僕は風邪気味で見学だったから、あれは輝羅だけで守ってたよ」
公式戦には無い隠された物語。
ブラジル人の天才に興味を持ちながらも、ノアは耳を傾ける。
「紅白戦で敗れた後の輝羅は──大泣きしてた」
与一の頭に、その時の光景が蘇っていく。
「うわぁぁぁ────!!」
ゴール前で泣き叫ぶ輝羅の姿に、困惑する当時のチームメイトやコーチ達に混じって見ていた与一。
頼れる双子のそんな姿を見たのは、あれが初めてだった。
ただの紅白戦でもゴールを奪われて、逆転負けを許した自分を絶対に許せない思いから、溢れ出した結果だろう。
心配になったクラブから連絡を受けて、輝咲が迎えに来るまで、ひたすら輝羅は枯れ果てる程に泣き続けた。
「その悔しさからかな。滅茶苦茶練習しまくって、GKとしての実力がもっと伸びてって、それが今の輝羅になった」
「……お前や彼が強い理由が、これで分かったな」
与一の話を聞いて、ノアは神明寺兄弟が強い理由を知る。
紅白戦や公式戦など関係なく、負けるのが大嫌い。
異常なまでに拘り続ける完封への思いが、彼らの力となっているのだと。
輝羅「今回、イギリスまで場所が飛んでたねー」
与一「気分は今流行のリモート参戦な気分次第だよー」
輝羅「僕達2人というのも、あんま無いなぁ」
与一「初期が懐かしいね〜」
輝羅「次回は、ジャレッグとの再会で埼玉フォルテとのプレミアリーグだよー!」
与一「今回どうなっちゃうかなぁ〜?」




