認められる者達
「何何? 男子の試合?」
千里が3軍の試合に注目していると、他の女子サッカー部員達も見学に近づいてくる。
「あれって古神君だよね。イギリスの大会で活躍してた」
「年下だけど格好良いなぁ〜」
「私は火岡君の方が良い〜」
その中で女子達はイギリス遠征を戦った選手たちに目を向けた。
好みは異なり、あの男子が良いと皆が語る。
「ねぇ、千里は誰が良いと思う? やっぱ古神君?」
「それとも火岡君?」
「え? あ〜……」
良いなと思う男子の話題を振られた千里の目は、自然とゴールを守る輝羅に目が向く。
色々なタイプのGKを見てきたが、あそこまで彼のような小柄なタイプは見た事が無い。
普段、話す時の明るい顔とは違う。
獲物を狩りに行くような目で、サッカーをやっている輝羅が次はどんな動きをするのか。
千里が見守る前で紅白戦は続く。
「右上がってるよー!」
輝羅の目が右サイドから迫る相手選手に気づき、すかさず指示を出す。
小さな守護神からの声を受けると、AチームのSHはマークにつき、自由に相手のサイド攻撃をさせない。
「(だから何で今日はこんなパスしづらいんだ!?)」
ボールを持つ佐藤は思うようにパスを出せず、彼の中で苛立ちが芽生え始める。
「(奪える……!)」
「のわっ!?」
心の乱れが視野を狭めたか、影二が忍び寄っていた事に気付かず奪われていた。
此処までAチームの方がシュート数を重ね、Bチームの方は未だにまともな形が作れていない。
「(先を読むような、嫌な守備をしてきやがる……!)」
DFラインから状況を確認する理勝は、相手に攻撃を完全に読まれていると思った。
そうでなければ向こうがチャンスを作ってるのに対して、こちらが止められ続けている今の状況に説明がつかない。
「(時間は少し──攻めるしかねぇだろ!)」
一瞬、時計の方を確認した後で理勝はポールを持つ星夜へ突っ込む。
「っ……!」
此処まで理勝の強い当たりに苦しめられ、星夜は彼を突破する事が出来ていなかった。
このまま屈する気など無く、上を狙うなら負けている場合ではない。
「(まともに正面からぶつかれば負ける!)」
パワーと体格差があるので競り合いは不利な為、彼を躱すのなら技とスピードが求められる。
先程のゴールのように、突進してくるタイミングを見極めて躱す。
「おおおっ!」
理勝が右肩から星夜の左肩に当てる刹那──。
ヒュッ
体を後ろへ反らし、強烈なショルダーチャージを躱す事に成功。
相手が空振りをしてバランスを崩す間、星夜はボールを再び足元に収めてBチームのゴールを捉える。
「ぐおおっ!」
ダンッ
躱された後に理勝が右足で芝生を強く踏みつけ、転倒を免れると直後に反転して追う。
一度躱されても執念深く追い続けていた。
ガッ
星夜が右足のシュートを放つと共に、理勝が体を当てて防ぎにいく。
ボールがBチームのゴールへ向かうもコースが甘い。
GKの正面でキャッチした事で、Aチームの攻撃を断ち切る。
「(本当にやるなぁ牙崎先輩。星夜を何度も止めるぐらいに強いって)」
かつては双子の兄弟、与一も星夜を止めるのに手を焼いていた。
それをあそこまで止めてくる理勝のプレーに、輝羅はDFとして優れてるなと素直に感心。
「カウンター!!」
相手GKの声がフィールドに響くと共に、ボールが空高く舞う。
「うおっ!」
竜斗とAチームのDFが空中戦で激しく競り合い、ボールが西の方へ向かってキープする。
カウンターと聞いたBチームの選手達は皆がAチームの陣内へ迫り、残り時間の少ないタイミングで総攻撃を仕掛けた。
「落ちついてー! 左来るよー!」
押し寄せてくる人の波を前に、Aチームの選手達の中には戸惑う者が出てくるも、輝羅は声を出して指示を送る。
「折り返せ!」
そこへ理勝の指示が間髪入れずに出て、中央の坂口へパスが渡った。
「上がってるよ中央ー!」
「!」
輝羅の声が聞こえた影二の前には、自軍ゴールから離れて攻撃参加に走る理勝の姿。
そこにパスが行くだろうと察知して、影二は再び忍び寄る。
中盤でBチームのパスが繋がり、坂口に渡ると素早く上がってきた理勝へ送った。
「(やっぱり……!)」
理勝の前に現れると影二はパスをカット。
再び攻撃を断ち切ったかと思われたが──。
ドガッ
そこに待っていたのは理勝の強烈な当たりで、影二の体が浮き上がると地面に転倒。
これだけの激しさにも関わらず、ノーホイッスルで試合は続行される。
「(来るね!)」
ボールを持った理勝が蹴ってくると、輝羅は察知して身構えた。
振り抜かれる右足のインステップキックが、ボールを剛球へと変えて輝羅のゴールを強襲。
強いシュートにも関わらず、正確に右のコースを突いて飛ばされる。
ただ、輝羅は既に動き出してサイドステップからのダイブで、シュートコースに飛び込む。
バシィィンッ
正面で完璧に受け止めてのキャッチが、理勝の放った剛球を打ち砕く。
「……!」
一対一の時に続いて、またしても輝羅にゴールを阻止された理勝の顔は、決められなかった事で悔しさに染まっている。
「(あんな強い牙崎のシュートを取っちゃうんだ……)」
輝羅のキャッチした姿を目の当たりにして、千里は彼が凄いGKだと強く感じた。
「そろそろ行くよー! 皆走ってー!」
「名残惜しいな〜。星夜君もうちょっと見たかった〜!」
キャプテンの声で女子達は再びランニングを再開し、千里はもう少し見ていたいと思いながら、自らも集団と共に走る。
紅白戦は1ー0のまま動かず、主審の笛が終了を告げるとAチームの勝利が確定。
3軍の紅白戦終わりの休憩を経て、間宮は選手達の前に進み出る。
「存分にアピール出来た奴も出来てなくて悔いを残した奴も皆お疲れ。互いの真剣な激突を見せてもらった」
皆が監督の言葉を真剣に聞くと、緊張した面持ちになっていた。
此処で昇格が決まるかもしれないと。
「今から名前を呼ばれた奴は俺の前に来い」
3軍が固唾を飲んで見守り、間宮の口から名前が告げられる。
「神明寺輝羅!」
「はーい♪」
呼ばれた輝羅は軽い足取りで間宮の元へ向かう。
「古神星夜!」
「! はい!」
続いて呼ばれた星夜が輝羅の隣へ並び立つ。
「闇坂影二!」
「!? は……はい……」
影二は自分の名前を言われ、驚きながらも駆け寄る。
「牙崎理勝!」
「! うっす……!」
最後に理勝の名前が呼ばれた後、間宮の口から他の選手の名前を言う事は無かった。
「お前ら4人、明日から2軍に行け。昇格だ」
間宮から昇格を伝えられると、1年の3人は喜び合って理勝の方は小さく右拳を握り締める。
紅白戦で彼ら4人なら2軍でも行けるだろうと、プレーを見て判断したようだ。
「神明寺は当然か。練習を平気な顔でこなしたり、GK技術も凄いし」
「理勝の奴は最近えらく上達して、調子が良いから当然だよな」
「その理勝と互角にやり合ったり、ゴール奪ってる古神も分かるけど……闇坂は何でだ? 目立ってなかったのに」
「あいつ地味にセカンドを結構拾っていて、攻撃繋いだり防いだりと活躍してたぞ。一対一も止めてたから」
部員達は4人の昇格ついて話し、いずれも上がった事が頷ける猛者ばかりだ。
「(先越されちゃった〜……)」
「(あいつらが先に上がったか……)」
昇格が出来なかった竜斗、影丸の2人は輝羅達の昇格を喜びながらも、内心では上がれない悔しさがあった。
星夜「昇格出来たけど、揃っては駄目だったか……」
輝羅「流石に1年5人が都合よく、上に登れる訳じゃなかったみたい〜」
影二「……そこは厳しい……」
星夜「これで次は何が待ってるかな?」
影二「……次回、ようこそ2軍へ……」
輝羅「2軍の皆さん、よろしくお願いしまーす♪」




