上を狙う3軍の紅白戦
「今日って紅白戦あるんだよな?」
「そうみたいだよ。誰と誰がどう組み合わせるのかは分からないけどね」
何時ものように3軍での朝練を済ませ、竜斗は星夜に午後の予定を確認していた。
「おっし! 2軍に上がれるチャンス!」
「そうなのー?」
午後の練習に向けて張り切っている竜斗に、輝羅が首を傾げる。
「先輩から聞いてんだよ。立見の紅白戦ってのは最大のアピールチャンスで、2軍に上がれる可能性がある。現にそうやって1軍まで行った人もいるってさ」
何時の間にか同じサッカー部の先輩と交流を深めたらしく、色々と情報収集が出来ていた。
今日の練習は3軍全員にとってのチャンスで、2軍に昇格して公式戦へ出場があるかもしれない。
輝羅から見れば皆がやる気を出しているせいか、昇格への意欲が心の声として聞こえてくる。
「紅白戦って事は僕達、敵同士になっちゃう可能性あるんじゃない〜?」
「勿論そうなるだろうね。1年が5人固まって同じチームはバランスが悪いだろうし」
皆一緒に上がりたいから敵同士は嫌だなと、影丸は眠そうにしながらもネクタイを結ぶ。
星夜が言うように、5人が都合良く同じチームになる可能性は相当低く、分かれて昇格を競い合う方が充分考えられる。
「そうなったら僕、一切の手加減しないで勝つからね♪」
制服に着替えた輝羅は何時もの明るい笑顔を見せれば、紅白戦を絶対に勝つと宣言。
「当たり前だろ。加減したら昇格へのアピールにならねぇしな」
右掌に左拳をバシッと当てた竜斗は不敵に笑い、絶対に上へ行ってやろうと気合を入れる。
「……皆、意気込んでるけど……時間……」
「あ!」
そこに着替えを済ませた影二が現れると、静かに今の時間を伝えた。
時計は授業開始の時間まで迫り、輝羅達は教室へと急ぐ。
☆
放課後を迎えると、何時も通りにサッカー部は練習を開始。
その中でフィールドに集まった3軍の前へ、1人の男が現れる。
「今日の紅白戦は俺が直々に見る事になった。お前ら、これを本当の試合だと思って臨めよ」
「「はい!」」
何時もは2人のコーチが練習を見ていたが、今回は監督である間宮が自ら紅白戦を見届ける事になった。
監督の登場に3軍の間では緊迫した空気が漂う。
「そんじゃ、紅白戦の組み合わせを発表するぞ」
間宮はタブレット画面を見ながら伝える。
「此処は同じチームになったみたいだね」
「……1人だけになるかと思った……」
組み合わせの結果、Aチームで輝羅、影二、星夜が同じチームでBチームに竜斗と影丸の2人と、1年組は分かれていた。
「(まさか、こうなっちゃうなんてねぇ)」
輝羅の前には相手チームが見えて、1年2人の他に坂口、西、佐藤の3人と理勝の姿もある。
千里の親衛隊が揃って敵チームとなり、これ以上無いぐらいの勝負が実現。
「昨日の約束、覚えてるな?」
そこに親衛隊の3人が輝羅へ近づいて来た。
「僕のチームが負けたら六峰先輩に近寄らない。勝ったら仲良くして構わない、でしたよねー?」
「若干違うが、まぁ大体そうだ」
昨日の約束について確認を終えると、坂口は得意そうな顔を浮かべる。
「けど──運が悪かったな。俺達3人が揃った上に理勝もついている。お前のゴールを叩き割って終わらせてやるよ」
親衛隊の彼らは3軍の中で上位の実力者。
加えて成長著しい理勝もついているので、この紅白戦は行けるだろうと。
「それ絶対ありませんから」
「っ!?」
ゾクッ
先程まで陽気に笑っていた輝羅の笑みは冷たい物へと変わり、3人の背筋に寒気が伝わってきた。
目の前の小さなGKを恐れてるのか。
戸惑いが生じてくる。
障害を粉砕する為に、上を目指す為に、輝羅は全ての者に今の自分を見せつけてやろうと紅白戦に臨む。
「此処は運命共同体。勝って晴れ舞台を目指そう!」
「「おおっ!」」
それぞれ円陣を組み、昇格への意気込みを表した後に互いのチームがフィールドへ散る。
「(3軍については翔馬から聞いてるけど、この中で昇格なぁ……)」
間宮はフィールドの選手達を外から眺めていき、そこで輝羅に目が止まった。
「(っと、全体を見ねぇとな)」
つい、後輩の息子で気になりはするが、3軍を満遍なく見ようと気を引き締める。
ピィ────
立見の監督が見守る中、紅白戦の始まりを告げる笛が鳴らされた。
Bチームのボールから試合は始まり、ボールを坂口と佐藤が繋ぎ、前線から寄ってくる相手を躱す。
「左行ってー!」
輝羅の指示が聞こえて1人の選手が左を向くと、影丸の走る姿が見える。
フリーとなっているのは佐藤からも見えていて、そこにパスを出していた。
「よっとー!」
眠気の覚めている影丸が右足でパスを受け、目の前には輝羅の指示を受けた選手が立つ。
「!?」
影丸は軽くボールを右足で蹴って、前へ転がした球に向かって走る。
相手が一度出そうと、スライディングでボールを狙って滑り込むが、その前に影丸の右足が触れていた。
蹴り出す足が届く寸前、自分の方へ球を引き寄せて右足のインサイドで中央へパス。
影丸は個人技でアピールを行う
「(取れる……!)」
「おわっ!?」
ボールを相手が受け取る前に影二が忍び寄り、気づいてなかった相手に驚かれながらパスをカットする。
こういう混戦の方が、影の薄い影二の長所が活かされた。
「(此処は……)」
ボールを持つ影二の目は守備への切り替え直後で、フリーとなっている前線の星夜に向く。
左足でグラウンダーのボールを送り、影二からのパスを星夜が受けようとしていた。
「オラァァ!!」
ガッ
「ぐっ!?」
星夜の左肩に強い衝撃が伝わると、理勝が強引に星夜を押し退けてパスを奪い取る。
体格が良い事に加え、荒々しくも凄まじい気迫の守備。
「来るよゴール前ー!」
そこに輝羅はカウンターが来るとDFへコーチング。
「走れぇ!」
理勝の叫びから右足が振り抜かれると、矢のような速さのボールが放たれた。
「おおっし!」
この時、竜斗は相手DFの裏へ飛び出して理勝のパスに走る。
追いつけばGKと一対一の得点チャンス。
「させないよっとー!」
「うお!?」
そこへゴール前から飛び出した輝羅がボールへ迫ると、竜斗より先に右足で蹴り出していた。
「くっそ! 間に合うかと思ったのに、輝羅に先越されたか!」
「良い飛び出しをしてくるから、ちょっと焦ったよー。竜斗やるねー♪」
悔しがる竜斗に輝羅は彼のプレーを褒めた後、自軍のゴールへ戻る。
「(流石の飛び出しだな神明寺)」
「(けど、まだ始まったばかりで時間はたっぷりある)」
「(俺達、女帝親衛隊に対して守りきれると思うなよ!)」
「(って偉そうな事を思ってるけど、あんたらはただの踏み台だからね)」
3人の心の声は輝羅に聞こえ、まだまだ彼らは余裕そうだ。
そんな彼らを踏み台にして次に進もうと、サイキッカーは企む……。
輝羅「久しぶりの試合だけど、アピール合戦になりそうだなぁ〜」
竜斗「監督が来てるし、良いプレーは見せなきゃだろ」
星夜「とりあえず動かなきゃ上には行けないよね」
影丸「今回は流石に寝てる場合じゃないなぁ〜」
影二「……次回……昇格に向けて輝羅が猛アピール……!?」
輝羅「親衛隊でも凶暴な人でも、なんでも止めちゃうからね〜♪」




