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最終話~新世界より①~

相手のコピーした能力を逆手に取り、志村再を倒すことに成功した輝木光と御貫真。

しかし、戦闘で負ったダメージにより輝木光は瀕死に。

御貫真は彼女を死なせまいと一心不乱に願う。


その時――。



最終話になります。

--------(side:輝木光) ---------


朝8時を告げるアラームが鳴った。


「ふぁーあ…………」


普段はこんなにハッキリ起きることが出来ない。

なんだか、とても長い夢を見ていた気がする。


私の名前は輝木光(かがやき ひかり)

東京都武蔵野市出身で、現在は板橋区に下宿し私立大学に通っている22歳だ。


来年度は大学を卒業して、社会人になる。


今は春休みなので、吉祥寺の実家に帰省中。


人生最後の長期休暇を、本日も謳歌したい。


「いただきまーすぅ。おはーで姉チュッチュー!」


不気味な替え歌を歌いながら、私の妹……輝木影華(かがやきえいか)がドアへ近づいてくる。


「おぞましい替え歌だな……」


素直で明るく、ちょっとわがままだったり、ズレてる所もある、私の自慢の妹。


「おっはよー! お姉ちゃーん!」


勢いよく私の部屋のドアが開く。


「あぁ、おはよう影――」



「お姉ちゃん……? そ、その髪と目…………どうしたの……!?」



妹にそう言われて、慌てて洗面台へ向かい、鏡を見る。


私の髪の左側は白く染まり、左眼が紅く変色していた。



--------



「父さん! 車借りるよ!」


何かがおかしい。

私は、大切なことを忘れてしまったような……。


夢中でキーを挿してエンジンをかける。


「夢じゃない……! 私の中にあるこの記憶は……」


目指す先は一つ。

行ったことすらない場所。



霞ヶ関駅から、歩いて30分ほどのあの空き地。



「ここだ……」


今朝、夢で見た場所。

ここで、私は――


「ハァイ。待ってたよ。輝木」


「あ、アンタは……」


「間に合った、みたいだね」


「間に合った……?」


(この人は……?)


「さて、誰か分かるかな? 輝木」



(! あるはずのない記憶がまた流れ込んでくる! なんだこれは!? 夢の続き……?)



「み、御貫さん……?」



もしかして、夢じゃない……?



「……ふぅ、良かった。キミが助かって本当に良かった」


「これはどういうこと……なんだ?」


「……。混乱してるキミに、何が起きたか教えてあげよう。と言っても憶測だけどね」


1ヶ月の記憶が2つあって、整合性が取れない。


だが、この髪と眼は……。


もしや、正しいのは今朝から流れてきた記憶の方なのか?


今朝に夢で見ていた、1ヶ月間戦い続けてきたあの日々。

これは現実だったのか?


そうでないと、私の体の異変、

そして目の前の『知らないはずの人物を知っている』説明がつかない……。



「まず1つ目。『志村再はこの世から消えた』」


「志村再……?」


知らないはずのその名を聞くだけで、憎しみの感情が湧き出す。


「アイツは私が殺しただろ。アンタにも手伝ってもらったけど」


(! 今のはなんだ……?)


考えがまとまる前に言葉が出た。

まるで、それが当然であるかのように。


「ノンノン。違うよ。『殺した』じゃない。『消えた』んだ」


「同じことじゃ……」


「死ぬより、遥かに残酷かもしれない。志村再は『過去にも未来にも存在しない』んだ。

『初めから存在そのものがなかったこと』になったんだよ」



「なぜ、そんなことが……」


「ってワケで、結論を言うよ。輝木、キミの記憶は全て現実だ。全部実際にあったことなんだよ」


「!」


「でも、世界は書き換えられたんだ。『もしも、志村再がいなかったら』とね」


「そ、その能力は――」


伊武有人……!

経済産業大臣の伊武有人……。


(いや、違う。『内閣総理大臣の伊武有人』!)


「死にそうになるキミを見て、強く念じたよ。助けて欲しいって。その時、奇跡が起きたんだ」


ありえないことを実現する超能力……。



「キミの心に入り込んで、志村再の遺体に触れた。

そしたら、『志村がコピーした伊武有人の超能力が発動した』んだ」



「まさか、電気で志村再の脳が一時的に動いた……のか?」


「多分ね。医者じゃないから正確には分からないよ。確かめようにも、志村再は消えてしまったし」


「伊武有人の超能力は、生命に直接干渉できないはず……」


「……分からない。ただキミを助けてと願ったらこうなった」


「今、この世界じゃ、カナリアの会もいないし、伊武有人は総理大臣ですらない。

私も借金を背負わず、大学を卒業した……」


「一連の騒動は、彼らのマッチポンプだった。志村再が存在しない世界では、カナリアの会は存在しない……ってことなんだろうね」


「まさに平和そのもの……だな」


「そうだね。これでよかったのかもね……」


志村再が全ての元凶だった。

そういうことなんだろう。


「あともう一つ。恐らくだけど、カナリアの会事件で死んだ人間は全て生存している。内木や赤井、水野もね」


「!!」


伊武有人の能力が発動し、「もしも志村再が存在しなかったら」と世界は書き換えられた。


これにより、志村再やカナリアの会の起こした一連の騒動がなかったことになり、死亡してしまった人間も復活した。


仲間たちにまた会えると喜ぶ輝木光だが、

御貫真は少し浮かない表情で……。


--------


短くなってしまったので夜にも投稿いたします。

よろしくお願いします。


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