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28 交渉材料


「なるほど。とりあえず乙女と薫子さんがいとこってことは納得しよう」


 長い説明の結果、なんとかおうぎが理解を示してくれた。


 ついさきほどまで疑いの眼差しを向けていた彼女は、一転して目を輝かせる。


「ってことは、乙女が薫子さんに頼めば、投扇興部を認めてくれるかも!?」


「え!? ど、どういうこと……?」


「ほら、薫子さん生徒会だし! いとこからの頼みなら、部員足りなくても許可くれるかもしれないじゃん!」


「さすがにお姉ちゃんでも、学校のルールは無視できないよぉ」


 乙女は冷静に否定する。けれど、葵が反対の意見を唱えた。


「いいえ、薫子さんは次期生徒会長と言われているほどの人よ。校則のひとつやふたつ、平気で変えられるわ」


「い、いくら生徒会長でも、そこまでは……」


「普通の生徒会長ならムリでも、薫子さんならできるわ!」


「葵ちゃんからお姉ちゃんへの信頼が厚すぎる!?」


 とはいえ、葵の言うことも一理あった。


 薫子の優秀さは、乙女が誰よりも理解している。


 どんなに不可能なことでも、やってのけてしまうのが乙女のいとこだった。


 きっと彼女ならば、校則を無理矢理捻じ曲げることもできるだろう。


 だからこそ、乙女は首を横に振った。


「やっぱりダメだよ……お姉ちゃんに、そんなお願いできないよ」


「そう言わずに、頼むよー」


 おうぎが言い募る。


 部員は集まりそうにないし、実績もない。


 このままでは部活としての承認が下りない。


 頼りたい気持ちもわかる。


 けれど、乙女が頷くことはない。


「私のワガママで、お姉ちゃんに悪いことはさせられないもん」


 薫子のことが大好きだから、迷惑をかけたくなかった。


 何と言われようと断る。


 どんなに頼まれても、薫子の力は借りない。


 そんな決意を固める乙女。


 その様子に、おうぎがため息をついた。


「そう簡単に、気持ちは変わりそうにないな……」


 乙女の決意の固さを理解したらしい。


 おうぎは仕方なさそうに続ける。


「わかった……薫子さんを説得できたら、葵を一日好きにしていいよ」


「任せてっ! お姉ちゃんに頼んでみるね!」


 即答だった。


 二人は、がしっっと硬く握手をする。


 これに葵が慌てて声を上げた。


「勝手に私を交渉材料にしないでっ!」


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