表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/25

12.「閑話・大木司家の事情」

 あたしのうちは、代々医者をやっている。家も無駄に広くて、家政婦もいる。



 家政婦を雇って掃除させるぐらいなら、そんな広い家を最初から建てなければいいと思うのは、あたしだけかしら?



 専属のコックや、あたし達子供の家庭教師もいる。家庭教師は、1人につき1人。つまり、マンツーマン。



 あたしは3人兄弟の末っ子で、兄はすでに成人済み。医者をやっている。姉は大学の医学部。



 2人とも小さい頃から優秀で、よく比べられてきた。



 あたしは、小さい頃はあまり勉強ができるほうではなかったから。



 あたしが自分の性別に違和感を持ったのは、小学生の時。その頃から女の子に憧れるようになって、女の子のような口調で話すようになった。



 それが原因で、いじめられることは多々あった。



 両親からは、家の恥だと叩かれた。



 ここに引っ越してきたのは、あたしが小学5年の時。ここでもやっぱり、オカマだと馬鹿にされ、いじめられた。



 でも、男の子みたいに振る舞うのはどうしても許せなくて、あたしはあたしを貫き通した。



 そんなあたしを助けてくれたのが、朝野美都子こと、みっちゃんだった。



 初めて見た感想は、「太ってる」。でも、何が楽しいのかいつもニコニコ笑顔で、男女関係なく友達がいる、人気者。



 あたしを助けたことなんて、もうとっくに忘れているだろう。



 でも、あたしはあの日以来、一度たりとも忘れたことなんてない。



 みっちゃんのおかげで、あたしは小学校、中学校といじめを受けることなく平和に過ごし、無事みっちゃんと同じ高校に進学した。



 自分のレベルからしたら、もう少し上の高校も狙えたと思う。でも、みっちゃんと一緒にいたくて、同じ高校を選んだ。



 進学校でもない、レベルの低い学校に進むなんて、と両親からは叱咤され、兄弟からは蔑まれた。



 あたしは、高校に入ると同時に家を出た。



 今は、一人暮らしをしている。煩わしい家族のいない生活は、中々快適。



 ただ、最近気にかかることがある。



 みっちゃんが、ダイエットを始めたこと。初対面で抱いた感想は「太ってる女の子」だったけど、年々変わっていった。



 今は、可愛いみっちゃんが痩せてもっと可愛くなったら、男にとられたりしないか、不安でたまらない。



 この感情を、なんと言うのか。あたしはまだ、知らない。



 これから知っていくことになる。



 みっちゃんが懸命に頑張る姿や、友達のために怒る姿。



 あたしのこの想いの名前に気が付いた時、あたしは苦しむことになる。



 苦しくて、つらくて、それでもーーあたしはやっぱり、みっちゃんから離れられない。



 その時がくるまで、あたしはみっちゃんの隣で、ただの友達として笑っている。



 忘れない、みっちゃんは、あたしの恩人だもの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ