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世界のこと、隣国のこと、国内のこと

俺は今、狸親父の講義(仮)を受けている。



伯爵邸に戻ってから、セラとグランツ領のマールについて調べていたのだが、親父に顔貸せと執務室に連行され、今ここに至る。


ちなみにセラは伯爵夫人こと、セラのお袋さんとお茶している。

近頃体調が良くないとのことで、昨夜は会えなかったが、先程にこやかに挨拶をして頂いた。

セラによく似た、御歳なのに綺麗な方だ。


俺はこっそり聖魔法で、診断のようなものをおこなってみた。

病気ではなく、年齢や諸々でおこる虚弱のような感じだった。

それが解消できるかは分からないが、聖魔法を治癒に変え掛けると、顔色が良くなっていた、よかった。




おっと、話があると呼ばれて来たんだった。


「お主はこの国のこと、隣国のこと、大陸のこと、どれだけ知っている?」


「いや、そんなアバウトに聞かれても…


大陸に5つの国、と島国1つを入れて6つの国。

遥か海の向こうに、亜人の大陸があるっていう噂?

北の3国の上に誰も住めない氷の大陸があるっていう噂も?


うちのルカニア王国の西に、聖王国アマラ、南にフィオレ王国、北は山に隔てられているけど、エカード王国がある。


北とは、海から港を介しての交流?南は適当?西はちょっと悪い?って感じ?」


「ううむ、疑問形ばかりで、アホっぽい表現だが、的確じゃ。

おまけに白大陸、亜人大陸まで知っているとはな。

お主の師匠というのには会うのは無理か?」


「あー、無理っすねえ。

例え、突き止めても、転移で逃げちゃいますよ」


「そうか、残念だ。

お主の知識は師匠からのものだな?」


「まあ、そうですね」


「百年前、大賢者ユリウスにより、冒険者ギルドの独立、古代の遺跡から得られる知識を用いたインフラ、魔石を使った魔道具などで、人々は度々おこるスタンピードを減少化し、健康と便利な生活を享受することに成功した。

それ自体はとても良いことだった」


あ、それ、前世の俺です。

余談だけど、今、念の為サイレントと索敵の魔法を掛けています。


「だが、元々魔獣被害で戦争もなかったのだが、それが無くななり、平穏になった今、皮肉にも、不穏なことを考える国が現れた」


「アマラですか?」


「そうだ。

お主にとって、あまり良い印象はないだろうが、グローリア辺境侯爵領は、遥か昔からアマラの侵略を受けてきた歴史がある。

今も目に見えない小競り合いはあるのだろう。

そして、平和の条約の為の婚姻も度々あった、それ故、グローリア家は、上位貴族からは、婚姻を嫌厭されることが多い。

アマラの血を入れぬ為にだ、それだけ我が国において隣国は疎まれておる。

グローリア家は今、それを覆そうとしているようだ」


「え、どうやって」


「御息女を、聖女、そして王妃にと目論んでいるとみた」


なるほどねえ、ポポを消して、浄化の花を収集ってそこに繋がるのか。

いや、大変なのは分かったけど、だからって貧困の村放置とか、人を誘拐とか殺すとか、ふざけんなよ!


「はっはっ、お主でもそんな顔するのか。

まあ、あの村出身じゃそうなるか」


「なんで俺に、そんな話聞かせてるんですか?」


「嫌でもお主は既に関わりを持っている。

後、グローリア家は王国の敵ではない、が、味方でもない、そのことを頭に入れておいてくれ」


「………」


「ところで、お主はセラフィーネのことは、どう思っておるんじゃ?」


「え、いや、その、あの、  仲間だと…」


「ほう、仲間ねえ。

そう言えば、殿下にセラフィーネを夜会に連れて来いと言われたそうじゃな」


「ぐっ、」


「丁度いい、金カードと銀カードになった者は初年に、一斉に城に呼ばれる。

その時に、娘をエスコートしてやってくれ」


「分かりました」



疲れた…

まあ、一番マシなところと手を結べたのは幸いだったと思うことにしよう。

その後は早々に部屋に引き籠り就寝することにした。





翌日、伯爵邸に暇を告げ、騎士団宿舎に向かう。

そこに並んだそうそうたる鍋の数50台、シチュー、スープ、煮込み、あらゆる料理の鍋がホカホカ湯気を立てている。

お礼を言って、異空間収納に次々と仕舞っていった。


「アロイス、嬉しそうですわね」


「うん、美味いもん食えるかと思うと、頑張れるよ」


「うふふ、そうね、分かるわ」


料理人達に改めてお礼を言って、出発する。

来た時同様、セラは俺の隣の御者席に座っている。


少しして、お礼を言われた。

お袋さんこと、ミカエラ様の加減が良くなったそうで、ありがとうと。

とぼけといたけど、バレてたようだ。


帰る間は、昨日中断した、マールについての情報交換をした。


グランツ領は魔の森と近い為、大都市マールの冒険者ギルドには、魔獣討伐依頼が、引っ切り無しに出ている。

しかも大物が多い。

エスリックさんもここでドラゴンを倒した。


ところで、魔の森というのは、瘴気の濃い森のことで、瘴気の中から多くの魔獣が発生する。

では、瘴気とは何か?

瘴気とは、魔素の溜まる場所が澱んで変質したものだ。


この世界はあらゆる物に者にも、希薄化した魔素が混じり巡っている。

魔素が魔力となり魔法となるが、魔素が澱むと瘴気となり魔物の発生に繋がっていくのだ。

だから魔素の塊瘴気から生まれた魔獣を倒すと、結晶化した魔石が採れる。


話は戻すが、マールを始め、グランツ領にはフィオレの人間も多く来ているそうだ。

アマラと違って敵対したことが殆どないので、気軽にルカニアを訪ねてくるのだ。


マールは他にも、ダンジョン都市と並んで人が多い。

あらゆる地方から、討伐昇格と狙ってやって来る。

ダンジョンこそないが、討伐がなくなることはないので、仕事はいつでもあるからだ。


そうそう、魔素溜まりの瘴気を大量に発する魔の森は、大陸に3つ程あるのだが、魔の森に近い国が、定期的に交代で浄化をしている。

その浄化の担い手が、神殿に属する特別な聖魔法使い達の仕事だ。

彼ら彼女らは、上級聖魔法の使い手で、魔力が多く、聖人、聖女、の称号持ちである。


え?俺は聖人より魔力が多く、かつ上級聖魔法持ちだから聖人なのかって?

いやいや、俺は聖人ではなく、一応賢者未満だ。


そう言えばセラは、魔法より、剣だな。

実戦でどんどん腕を上げている。

蝶のように華麗に舞い戦う姿は美しい。




「それでね、グランツ領はフィオレから入って来た、米という穀物と麺という小麦粉を練って細長く切った物を使う料理があるそうですわ」


「へえ、食べてみたいな、楽しみだ」


«なにーーーー米だとーーーー!!!

麺は、中華麺じゃなくてパスタかな?»


うんうん、前前世の正志が、脳内で騒ぐと思っていたよ。


「ねえ、アロイス、お父様と何を話していたのです?」


「うん、色々。

隣国のこととか、グローリア家のこととか」


心配そうなセラが気になって、ついつい俺は余計なことまで口に出してしまった。


「銀カードになると、城に呼ばれるから、セラをエスコートしてくれって言われた」


それを聞いて、ぱあっと顔が明るくなった。


「まあ、それじゃ、アロイスと一緒に衣装を仕立てねばなりませんわね。他にも、金細工、ブラウンダイヤと琥珀を用いたアクセサリーもいいですわね、それから…」


???なんだ?

ぶらうんだいや?

セラがすっかり自分の世界に入ってしまった…


まあいいや。

金糸のような金の髪、煌めく琥珀のような金の瞳、嬉しそうなバラ色の頬の美少女、目の保養だ。




俺は俺で、狸親父と話したこの世界の国のことを思い返してみた。


前前世の正志の記憶がある俺にとってこの世界は、正志の世界と微妙に似ていて、微妙に違う。


北の3国のイメージは、北欧、ルカニアは英や仏、フィオレは伊や西班牙、アマラは外見は英、仏なんだけど、文化が東洋風?


そして人種が、地球の白人とも微妙に違う。

そこまで彫りは深くないし、でも、東洋人でもない。

それから黒人というほど濃い肌の人はいないけど、やや褐色という者はフィオレにいる。


やはり地球ではない?と思ったのだ。



俺は、誰とも関わらず引き籠って好き勝手に暮らしていたけど、ずっとそんな風に暮らせる訳もないし、やっぱり仲の良い人と一緒に居たい、行動したい、なんて考え実行していたら、こんなにいろんなしがらみが出来てしまうんだな。


それを上手くいなして、自由に生きていきたいと思う。


その為の、銀カード、行く行くは金カードだ。




ふとセラを見たら、セラもこちらを見て微笑んでいた。




一緒に冒険したいって言ってくれた時、すごい嬉しかったよ。




一緒に上を目指そう、みんなで強くなり冒険するぞ、何より君と一緒にね。

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