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狸親父とガキんちょ王子

セラと二人、伯爵邸に着いたのは夕方だった。



俺としては、伯爵邸の裏口から入り、異空間収納に大量に仕舞ってある大鍋を、早速調理場に持っていくつもりだった。



だが、



何故か、門番、騎士、使用人、とリレーのように伝言が行き渡り、正門からお邪魔することになった。



そして、邸内に入るやいなや、メイド達に拉致され、風呂場に叩き込まれた。



何故だ?



しぶしぶ風呂に入り出ると、俺の服が無い。

替わりに置いてある服、これを着ろと?

なんかやけに手触りの良いシャツとズボンと上着を着て出ていったら、またメイドに拉致られた。


ドレッサーの前に座らさせられて、髪をとかされている、が、



「まあ、フワフワだわ」


「猫毛ですわね、まとまらないわ」


「チョコレートムースみたいな髪色ね、かわいい」



まあ、いやだ、ウフフ、と、好き勝手髪を嬲られたが、俺の癖毛は直らなかった。

ワックスを使おうかと、話してる彼女達に、セラが止めた。



「油で固めなくてもいいわ。

フワフワがかわいいのだから」


か、かわいい…

出来ればカッコイイと言ってくれ。



セラも入浴して着替えたのだろう、淡い水色のドレスを着ていた。

が、髪型はいつもの縦巻きロールではなく、緩いウワェーブの下ろした髪に花を模した髪飾りを付けていた。

なんだろう?

セラの装いが、段々俺の好みになってる気がする…

それにしても、なんだこの対応は?



「セ、セラ…」


「ごめんなさい、アロイス。

邸内では、正装しないとならないの。

さあ、晩餐よ、いきましょう」


「いや、調理室に、」


「大丈夫よ。ちゃんと食材を仕入れるように、手配したわ。

大鍋50個分だから、それなりに、材料をそろえないと」


「お、おう、そうだな」



なんか、丸め込まれている様な気がするが、取り合えず飯だ。



大きな食堂、いや晩餐室?にいったら、狸が待っていた。

デッカイ固太りの親父がそこに居る。

うわあ、セラ、似ないでよかった~



俺はというと、先程セラに急かされた時点で、前世の賢者たるユリウスに、脳内で指導が入っている。

セラに手を差し出されて、なんじゃ?と思ったが、手を取ってエスコートしろと言われて、やっている。

ユリウスの記憶に任せて適当に…



「よく、来た。

わしがジェイコブ・ロランだ。

ほう、ちゃんとエスコートして来たか。

ふむ、見栄えも中々悪くない、並んでも可笑しくはないのう」



???と、思ってたら、挨拶しろと、ユリウスに急かされた。



「ええと、初めてお目にかかります?

銅カードのアロイスです。

この度はお目にかかれて光栄です?」


「んん?

ちゃんとした挨拶だが、何故に疑問形なんじゃ?」


「いや、適当だから?」


俺と狸親父の会話に、セラがクスクス笑っている。

呆れたような顔をされたが、セラがいいのなら、俺は気にしない。

その後はお待ちかねの晩餐だ。

ディナーは、前前世の正志の記憶にもあるが、ここはユリウスの方の記憶に任せた。


狸親父には、セラの銀カードを目指す為、大都市マールに行くことを話した。

ついでに大鍋に料理を作って貰いに来た目的も話す。

食材の金と、調理代を出すと言ったら、断られてしまった。

いいのか?

結構な金だぞ、まあいいや。



食後にテラスで冷たいジュースが振舞われた。

夜風が心地良い。


「ねえ、アロイス。

何処かでマナーを習ったの?」


まあ、聞かれるだろうなあと、思った。

でも大丈夫、答えはちゃんと用意している。


「銀カードが目前になった時に、ギルド長に言われたんだ。

ギルドのマナー教室に通えって」


これは本当だ。

銀や金になると、高位の者からの依頼も来るようになる。

だからみんな習うのだ。


ザックさんだって、ああ見えてちゃんと出来るんだ。

ただ、ジーンの奴が出来るのかは謎だ。


ウィルも一通り出来るし、エマもカーテシー?とかっていうお辞儀を習ってた。

俺だって一応出来る、ただしユリウスが間に入らないと、多分ぎこちない。


「まあ、そうでしたのね。

アロイスは教室の優等生だったのね。

エスコートも晩餐マナーも完璧だったわ」



はっはっは… 殆どユリウスに丸投げなんだけどね。




その晩は、客室の豪華な部屋で、落ち着かないまま就寝したのだった。


次の日からは、上等な服は勘弁してもらって、いつもの恰好に戻った。

っていうか、最初から行くべき場所は、騎士団の宿舎だったのだ。

大量の調理が出来る施設も、料理人も揃っているのはそこだ。

伯爵邸に行く必要はなかった。


思わずジト目で、セラをみたら、


「だって、お父様に紹介したかったんだもの」


と、可愛いく舌をだされた、うう、可愛い、許す。



その後、せっかく騎士団に来たのだからと、手合わせやら、なんやらをして過ごした。

セラも騎士服にポニーテールで参戦している。

美しい琥珀の瞳が光の塊みたいにキラキラ金色に輝いている、綺麗だ…


俺も騎士達もこっそり見惚れていると、



「セラフィーネ!」


セラを呼ぶ子供の声が聞こえる。

声の方を見ると、豪華な騎士服のガキんちょが偉そうに立っていた。



「ルシアン殿下。

ご無沙汰しております」


セラがカーテシーではなく、騎士の礼を取っている。


「うむ。

そなたは何故夜会に顔をださない?

茶会にも、園遊会にも出席しないから会えぬではないか」


セラが申し訳ございませんと、答えている。

俺の傍の騎士がこっそり、色々情報をくれた。


「あの方は、第3王子殿下で、我が騎士団に、剣を習いに来られています。

その、お嬢様に、大変懐いて… いえ、親しくされているのです」



ふ~~ん、そうなんだ。

5歳位?見掛けはエマより年下か?

あ、抱きついてる、ムカつく。


王族の特権で各地にある転移陣が使えるので、此処にも転移陣を使ってしょっちゅう来るそうだ。

銀髪に青い目は、ルカニア王家によく現れる色なんだそうだ。

生温かくセラとガキんちょの交流を見ていたら、目が合った。



「なんじゃ、騎士団に不審者がおるぞ!」


ちっ、指指すんじゃねえ。


セラが俺のことを紹介してくれたが、益々気難しい顔で難癖付けてきた。

お抱えの騎士と勝負しろと言ってきた。

強面のおっさんがギラリと目を向けてきた。

う、殺る気だな。


剣技では勝てないだろう。

ここは力押しだ。

こっそり、身体強化と結界を貼って、力、スピード、で押しまくった。

白熱したところで、セラに、ここまで、と静止された。



おっさんは、勝負の後は、普通に話しかけて来たので、適当に話していた。

そうこうするうちに、ガキんちょの帰る時間になったらしい。



「おい、お前、アロイスとかっていうやつ。

今日の所は認めてやる。

その代わり、セラフィーネを夜会に連れてこい」


はあ、んなもん、やなこった、と、思ったが、セラに目配せされた。


「はあ、仰せのままに?

いつか?きっと?その旨致します?」


「な、なぜ疑問形なんじゃーっ」


騒いでいたが、御付きの者達に促され去って行った。

ふう、厄介なガキだ。



ふと見ると、セラが顔を赤らめていた。

なぜに?


「アロイスったら、わたくしを夜会にエスコートしてくれるのね」


ええええええ、

それは、やらなくていい、適当な言い訳じゃなかったのか?

いや、セラには悪いが、夜会なんて絶対やだー


有耶無耶にして早く帰ろう。

俺は全力で話題を変え、伯爵邸に二人で戻った。

セラを宿舎に泊める訳にはいかないので結局伯爵邸には行かなくてはならなかったのだ。


それにしても、夜会の話はスルーだ。

料理ができる、明日の昼までなんとか誤魔化さねば。



「セ、セラ、マールの情報を調べたいんだけど…」


「そうですわね。

資料を持ってきますわ」


資料を探しに向かったセラを見送り、ホッとする。




ありがとう、頼りにしているよ、でも夜会は勘弁して。

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