表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第1話 本物の陽キャは眩しい


 

「さて、今日は外国人の先生を招いての授業です。個々の人数は、1……2……全部で14人ね。じゃあ2人組でペアを作って」


 学校であるさまざまな行事の中でぼっち殺しの「ペア」である。教室の中を見回してみても、他にぼっちはない。

 そんなことを考えているうちにどんどんと周りはペアになって行く。まずい……先生の方をみても目は合わない。

 こういう場合、奇数の時は先生がぼっちを気にかけてくれるもんだが、偶数だから安心してるな。


「ねぇ、君1人?」

 突然話しかけられて、俺はフリーズする。

「ちょっと、1人? アタシも1人だしヤろーよ」

 ニカッと笑って見せたのは、あの明堂凛だった。俺がどうして返答しないのか不思議そうに首を傾げている。

「みなさん、ペアは組めましたか〜?」

 英語の先生の能天気な声に、明堂凛は俺の手を握って「はーい」と元気よく上げた。

「さ、えっと……君、誰だっけ?」

 明堂さんは俺の隣に座ってぐいっと席をくっつけると、無邪気にそう言った。

「あ……えっと」

 俺は状況を把握するのに必死で何も言えず、言葉がうまく口から出てこない。俺は陽キャの中でもさらに陽キャの女の人と話すのは初めてなんだ。それに、ぺ、ぺ、ペアなんて……。

「遠藤……しゅうふで? くん?」

 彼女がぐっと俺のテキストを覗き込むと目をキラキラとさせた。甘いバニラの香水と視界に飛び込んでくる胸元。

 白いシャツからはうっすら真っ赤なレースが透けていて……。


「あたし、明堂凛。よろしくね」


 と無邪気に笑う彼女は俺のノートをパッと手に取るとペラペラとめくった。


——まずい、落書きだらけのノートなのに……! ガリ勉ならまだしもヲタクだと思われたら……


 脳裏にはヲタクを侮蔑するギャルが思い浮かぶ。あぁいうおしゃれでイケメン陽キャにしか興味のない女の子にとってヲタクとはゴミ虫のような存在なのだ。


「あ〜、しゅうふでくんじゃなくてムネヒツくんか」


「へ?」


「ほらここ、英語のノートだからローマ字で書いてある。へへへ、でもムネヒツも結構難しい名前だよね。ほら織田信長! みたいな」


 確かに、戦国武将みはあるかもしれん。


「み、み、明堂さん。ペアの会話……しないともうすぐ俺たちの番だし」


「あっ、おっけ〜」


 テキストの会話文をペアになって本当に会話するように読む。外国人講師が廊下で待機し、呼ばれた順に廊下に出て行ってそれぞれ先生に会話を見てもらうのだ。


「アイム……ドント……えーん読めない」


「えっと、そこは——」


 俺が英文を読むと明堂さんは目をパチクリさせる。


「発音やばいね……かーっこいい。でもそれじゃあ、あたしわかんないよ」


 せまりくる順番、困った顔で前屈みになる明堂さん。こういう場合、発音から教えてたんじゃ間に合わないな……。


「ちょっと明堂さんのテキスト借りていい?」


「いいよ、はい」


 俺は内心ドキドキしていた。小学生の頃「菌がうつるから触らないで!」と虐められたことがあったからだ。

 

「書いていい?」


「何を? あっ、落書き? ムネヒツくん絵上手だもんねぇ」


「えっ、なんで」


「なんでってさっき英語のノートに書いてあったじゃん。英語の先生の似顔絵。兄絵っぽいより美術っぽいけどうまいねぇ」


 見られていた……。

 俺は恥ずかしさを感じながら「ははは」と苦笑いをして、彼女のテキストに集中する。彼女の読む部分にカタカナでふりをつけるのだ。


「ムネヒツくんってさ〜、ヲタク?」


 ビクッと方を震わせる俺、ガッチガチで顔を上げると明堂さんは俺の思っていた表情と違って笑顔だ。


「え? まぁ、明堂さんからみたらヲタク……かも」


「へぇ〜、ヲタクの人って頭良くて優しいんだねぇ。他の子はこんなにしてくれなかったし。よしっ、じゃあ練習再開しよ!」


 明堂さんが動くたびに胸元がチラチラするので気になって仕方がない。けど、彼女があまりにも一生懸命に英文を読むもんで、俺も彼女に合わせてゆっくり会話する。


「あれ、読めちゃった」


「そろそろ、俺らの番だね」


 なんて言ってたら「次のペアー」と俺たちが呼ばれた。


「いこっか」


 と、立ち上がってくるっと俺に背を向けた瞬間、赤色のセクシーな下着がスカートからチラッと見えた。俺は何も見ていないふりをして彼女の後ろをついていく。


<うわ〜、ガリ勉くんギャルに付き合わされてかわいそ>

<ギャルのせいで成績下がるとか勘弁だよね〜>

<ギャルの犠牲にならなくてよかった……供養供養>


 そんな噂話が聞こえた。

 そう言っていた女子たちは普段清楚っぽくて成績も中位な真面目な子たち。俺たちヲタクでも怖くない部類に感じるだろう。

 でも実際は違うのかもしれない。


 みんなが思ってるより明堂さんは優しくて、みんなが思ってるように俺はガリ勉でもない。


「ハロー! わ〜、先生アメリカン? イェ〜イ!!」


 俺より先に廊下にでた明堂さんが外国人講師と楽しそうに話す声が聞こえた。


 本物の陽キャってめっちゃ眩しい。

 



お読みいただきありがとうございます!

皆様の応援が作者の力に変わるので、少しでも「面白い!」「続きが気になる」と思っていただけたら★やブックマーク、コメントなどいただけたら嬉しいです。毎日更新のモチベーションになります!

下の★で評価するのボタンからよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ