遊牧
「リジー・・ディラン様とはどんな感じ?」
「たまに話すぐらい」
「シャーロットはお兄様とどんな感じ?」
「婚約する話になってるわ」
「アリスは?」
「婚約しない話になってるわ」
「「はい?」」
「すごいわよね、放し飼いみたいで笑ってしまうわ」
「ど、どういうことなの?!」
「婚約という契約で私を縛り付けたくないそうよ」
「アリスはそれでいいの?」
「ええ、いいわ」
「侯爵令嬢という枠をどれだけ超えていくのよ。柵の外で放し飼いとか」
「柵って言われると羊とか牛を連想しちゃうんだけど。優雅な猫とかのイメージでお願いね」
3人、サロンでのんびりお茶を飲んでいるので、軽口も気安い。
「そもそも、ジュードと婚約してたでしょ?でもどうしてもそこがひっかかって中々進めなかった。もしテオが帰ってきたときにどちらかが心変わりしていたとして、また婚約解消なんて面倒だわ」
「相手を婚約で縛り付けたいと思わないの?あのテオ様よ!」
「不思議と思わないの。どうでもいいわけじゃないわよ?誰よりも大切だし、離れてほしくない。でも婚約してても寂しくないわけじゃないでしょう?」
「それはそうだけど・・」
言葉を尽くしてこの気持ちを説明するのが難しい。テオを信頼していても不安に思う日もあるだろうし、寂しさに負けそうな日だってあるかもしれない。それでも、私はちゃんとテオを見つめて待つつもりなのだ。
「気持ちが離れるようなら、それまでの関係だったってことだと思うことにしたの。縛り付けない。だけど大切」
「アリスらしいのかもね」
「シャーロットとお兄様は婚約したほうが絶対良いと思うわ」
「そうね」
「婚約いうお気に入りの首輪にテンション上がって跳ね回ってる犬みたいなイメージよね」
「俺の首輪すごいだろう!って誇らしげに見せて回る感じよね」
「あなたたち、自分の婚約者と兄を犬に例えるのやめなさい」
「だって、そこが可愛いんだもの」
「「ねー」」
「でも、何年になるかわからないのはちょっと嫌よね」
「5年はかかると思っておくわ。それ以上になることはまずないだろうし、それより早ければ嬉しいし」
「私、5年もディラン様を待てるのかしら」
「別に待たなくていいんじゃない?」
「え」
「想い合っていて、お互い待とうと決めたならそれでいいけど、不毛だと思うなら待たなきゃいいのよ。待つのが良い女って思いがちだけど、そんなの男性から見て都合がいいだけでしょう?」
「そうね、アリスの言う通りだわ」
「シャーロットまで・・」
「待つのも待たないのも自由。待たなきゃいけないとか、待ったほうが良いなんていうのは自分の気持ちよりどう思われるかに重きを置いてるだけよ」
「ちょっと何を言ってるかわからないわ」
「そうね・・」
「簡単なことなのに」
やはり自活できる令嬢は強いということかしら。わかってもらえなくても・・今はいい。
「ねえ、それより私・・テオをびっくりさせたいの」
ご褒美もまだだし、テオの誕生日も近い。ジュードと婚約していたときはテオの誕生日を祝ったりできなくなっていたけれど、今年は祝える。とはいえ、物をあげるのもなんか違うし・・・
「大人のキスの仕方を教えて!」
「また出たわね、残念アリス!」
「人を雑魚モンスターみたいに言わないで」
「そんなこと答えられるわけないでしょう?!」
「え、お兄様としてないの?」
シャーロットが真っ赤になった
「・・・はい、教えて先生」
「私も興味あります、先生」
「・・何が知りたいの」
真っ赤な先生ができる限り頑張ってくれた。
「そっ・・そんなことが行われるとは」
「わたくしの心臓が破裂しそう」
息も絶え絶え授業を終えて、テオを驚かせたいとはいえ自分には無理だと悟る。
「ちょっと他の方法を考えてみる」
シャーロットに慈愛の目で見られたような気がするけど、先生だものね。




