想像
「俺はシャーロットが嬉しいならなんでもいいんだ」
「清々しいほどの愛!」
ちらっとシャーロットを見ると、涼しい顔をしていたけれど、私は知っている。シャーロットがめちゃくちゃ喜んでいることを。よく見ると目が潤んでるのよね。お兄様から目は逸しているけれど。
「ちょっと事情があってね。卒業までにあと数回はレイラに付き合わなきゃいけないことがあるかもしれないけど、アリスが心配するようなことは一切ないから」
「うん。じゃあ私もあと数回は他の男性とお出かけできるってことだよね」
「は?」
「同じことでしょう?」
「お、鬼だ。俺の妹がやっぱり鬼だった」
「鬼は鬼らしく振る舞おうと思いましたの」
「鬼の親友はやっぱり鬼よね」
「シャーロットったら、うふふ」
「僕は鬼が大好きだよ!」
「ウイリアムって本当・・」
「何を言うつもりかな?」
悪ふざけが過ぎたようでテオが怖い笑顔だ。
「妬いてくれて嬉しいよ」
「・・・」
やっぱりテオには敵わない。だけど
「人には男性と二人きりになるなと言うくせに、自分は女性と二人で過ごすのね」
「・・・」
ダメ。自分で思ってる以上に妬いているみたい。
「ちょっとぐらい拗ねてもいいと思うの・・」
「まあ、当然だろうな。アリスはおこちゃまだしな」
「お兄様・・」
「素直に怒っていいと思うぞ」
「これでも事情があるのは理解しているのよ」
「俺だって、俺以外の男とシャーロットが二人で出かけるなんて考えただけで頭おかしくなりそうだよ」
「大丈夫よ。私はそんなことしないから」
「シャーロット!」
またラブいのが始まった。
自分のヤキモチを自覚すると、今まで自分がやってきたことでテオに嫌な思いをさせていたかもしれないことに気づく。妬いてるからって「他の人と出かける」発言は、そんなことはしないつもりでも幼稚で意地悪だと気がつく。
「私もそんなことしない」小声で呟くと、テオには伝わったのか手をぎゅっと握られた。
「わかってる」ふわりと笑って優しい目で見てくれる。
お昼にはジュードも回復して、賑やかな1日が終わり帰ろうとしたらジュードに手を掴まれた。
「どうしたの?」
「アリスは・・」
「はいダメ」テオが間に入ってきて、掴まれている手を引き離す。
「アリスと話したいなら僕もいるところでね」
「・・・」
テオを睨みつけているジュードに声をかけようと思った瞬間、テオに抱き寄せられて体の向きを変えられた。そのまま肩を掴んで馬車に乗せられる。
「ジュードに・・」
ジュードが気になって戻ろうとしたら、テオが耳元に唇を寄せて「戻れないように激しく口づけしようか?」と囁かれて固まる。
「なんだ、諦めちゃうのか。残念」
「諦めても諦めなくてもテオがまんぞ・・って別に私と口づけしても満足するとは限らないわね。ちょっと調子に乗っていたわ、ごめんなさい」
「今すぐ満足したいんだけど」
「あ、お兄様が」本当はまだ遠いところでシャーロットといちゃついていたけれど、テオが後ろに下がったので馬車の奥に移動して離れておく。
片眉を上げてふっとため息をついたテオに子供っぽいのはわかっていても、つい舌を出してしまった。急激に漂う甘い空気に慣れないんだもの。
でも・・いつかテオと激しい口づけ・・するのかしら。
ほんのり想像してしまって、頭に血がのぼる。だめよ・・これ絶対テオにバレる。
「アリス・・もしかして」うう・・気づいてる。
「待たせたな、帰ろうか」お兄様ありがとう!
「じゃあまた」軽く挨拶をして家路についた。
色気ステータスが少し高くなった気がするわ。
□ □ □
「次のお願いなんだけど」
「まだあるの?!」
翌日の午後、テオが来て早々に言い出した。
「まだまだあるよ?」
「この前ので終わったと思ったのに」
「昨日、アリスが想像したことをして」
「・・・?」
「帰りの馬車に乗ってからなにか想像したよね?」
「ひっ」
「したのはわかってる。どんなことを考えた?」
確かあのときは・・・
「い、言えない」
「へえ」
「・・・」
「あのとき話してたのは『激しい口づけ』についてだったよね」
「まさか。そんなこと話してないわ」
「忘れたんだ?」
「忘れたって言っても忘れてないって言ってもダメな気がする。テオが逃げ道を用意してくれない」
「大人のキスをどうして知っているのか教えて」
「そ、それは・・本とか?」
「どんな本だった?」
「恋愛小説かなあ・・」
「したことあるの?」
「無いに決まってるじゃない!!」
「僕も無いんだよね」
「へ?」




