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転生したら天使のように優しい令嬢になったけどごめんなさいそんなに性格良くないので期待しないでください  作者: ブリージー・ベル (旧・瑚希)


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ペナルティ

「中に入ろうか」そう言って、テオがドアを開けて私の肩を掴んでそっと押される。


 シャーロットは座って刺繍しているし、お兄様は窓辺に立って外を眺めていた。


「なんだ、いたんだ」ジュードが不思議そうに言う。


 テオがシャーロットをじっと見つめているので、なんとなく視界に割り込んでおく。すぐにウイリアムも来て夏休みの予定を立てていき、今年はなかなか忙しい休みになりそう。できれば、お兄様とシャーロットが会いやすいように協力するわ。


「今日はリジーとディラン様がデートの日を相談する日なの」

「へえ」

「ちょっとだけ遅くなるかもしれないから、待っててくれる?」お兄様に頼む。


「じゃあシャーロットがアーサーに送ってもらって」

「んん?」

「僕がアリスを送るよ」いつものようにふわりと笑って私を見た。

「あ!そうね、そうするわ」


 やっぱりテオは気がついてるのね。ジュードとウイリアムが文句を言ってるけれど、テオがなだめて結局決まる。

 放課後、剣技場の近くの木陰のベンチまでリジーと歩く。私は少し離れた木に隠れて待機するつもりなので、途中から林の中を抜けていく。

 何か困ったことが起きればリジーが手でサインを送ることになっているけど、デートの日取りを相談するのに特に困ることなんてないわよね?

 ベンチが見えるけど声は聞こえないであろう距離の木陰でスタンバイして、しばらくするとディランもやってきた。二人の背中を見ながらぼんやりしてしまい、近くの草を踏む足音に振り向くと口元に人差し指を当てて「しー」と合図するテオが近くて驚く。

 リジーとは距離があるので多少声を出しても聞こえないはず。それでもなんとなく声を出さずにいると、テオが私の髪を撫でてきた。髪ぐらい構わない・・か。


 かれこれ10分は問題なく話しているので、もう目を離しても大丈夫そう。私の後ろに立って無言で私の髪を撫で続けているテオに向かって尋ねる。


「どうしたの?」

「万が一を考えて、ね」

「・・ありがとう」


 万が一なんて起こらないと思うけど、テオがいると安心する。


「テオは、気がついたの?」

「アーサーとシャーロットのこと?」

「うん」

「アリスが挙動不審すぎたからね」

「隠そうとしたのに、私のせいでバレたのね」

「隠さなくて良かったのに」

「まあ、それはそうなんだけど・・」お兄様のかっこいい台詞を思い出して、妙に照れる。


「さては・・なんか見たな」

「見てない!聞こえただけ!」

「何を聞いた?」

「そんなことは言えないけど、お兄様がすごくかっこよくて可愛かったの」

「へえ?」

「せっかくだからしばらく二人きりがいいかな?って」


「今、僕らも二人だね」

「そう・・かしら?」

「チャンスだ」

「・・・」


 嫌な予感がしたので、ぱふんと自分の両耳を手で隠す。


「あはは」テオが楽しそうに笑う。


「しー!聴こえちゃうじゃない!」慌ててテオの口を塞ごうと手を伸ばしたら、腕の中に閉じ込められて、手を動かせなくなった。にんまり笑うテオ


「もう誰もいないよ」そう言ってから、また私の耳元に口を寄せて


「好きだよ」と囁く

「思い知らされてるの?私」

「これやるたびに、アリスの目が潤んで可愛いから」

「今度やったらペナルティって言ったわ」

「僕と口きかないなんて言うなら、今もっとすごいことしちゃうよ」

「ひっ」

「だからペナルティは無しね」

「わかった。じゃあ少しだけここで待ってて」

「なんで?」

「そうね・・・100数えたら目を開けていいわ」

「ふうん」すごく疑う目で見てきた後、ちゃんと目を瞑ってくれる

「今からスタートね」


 そう言って、そろそろとその場から離れて、少し距離があいたらできるだけ速く歩く。テオに意地悪しても敵わないもの。ちょっとだけ動悸が治まる時間が欲しい。スタスタと後ろを振り返らずに歩いて温室の前を横切ろうとしたとき、花がこっちに歩いてくるのが目に入った。


 あれ・・バートさん?


 両手にものすごい量の花を持っている。


「こんにちは」そう声をかけて近づいてから「開けましょうか」と言ってみると

「助かるよ」と言われたのでドアを開けて中に入ったのを見届けて、そのまま立ち去ろうとしたら、

「ちょっと待って」と言われ、私も中に入る。

「良かったら持って帰って」ドサッと作業台の上に花を置いた。


「欲しいだけ持っていっていいよ」

「変わった花ばかりですね」

「うん、種類の違うものを掛け合わせてるから」

「すごい!じっくり見せてもらっても?」

「ゆっくりどうぞ。必要な部分は取り出した後の花だから、欠けてたり弱ってたりするけど」

「見てるだけで楽しいです」

「これなんか面白い色が出てるよ」

「じゃあこれも欲しいです」

「どうぞ。この前、研究所に来てくれたんだってね」

「はい」

「一緒に来た人がいたって聞いたけど、彼は婚約者なのかい?」

「テオのことですか?婚約者ではないです。幼なじみで・・とても大切な人です」

「そう・・ライアンが気にしていてね」


「何か気を遣わせてしまいましたか?」

「いや」部外者を連れて行ったのは迷惑だったんだろうか。


「これだけ頂いてもいいですか?」気になる花を30本ぐらい手にしてから多い気がしてきた

「もちろん。少ないね、もっと持っていってくれないと、枯れるだけになってしまうよ」

「じゃあもう少し」

「君は・・好きな人がいるの?」

「・・・たぶん」

「たぶん?」そう言って問いかけるように笑うバートさんの目尻に優しい皺が寄って、なんだか色々相談してしまいたくなる。


「割と鈍感なので、今向き合っているところです」

「そうか」笑みを深めて頷く。いいなあ、こんな歳の重ね方も素敵。


「では、これだけ頂いていきます」小さい花がいっぱいついた茎も足す。

「うん、ドアを開けるよ」


 花をたくさん持ってドアを開けてもらって出ると、テオがいた。もの問いたげに片眉を上げて、口元は斜めになっている。・・右眉と左口角が上がっていて器用だ。


「ん?」

「どういうことかな?」

「うふ」

「うふ、じゃない」

「えっと・・」

「久しぶりだね」バートさんの声がかかった。

「お久しぶりです」


 親しげに話す二人を見ながら、知り合いだったのかと驚いていると


「あれ?もしかして彼が君の『好きな人』?」

「え」

「どういうことですか?」

「さっき、この前一緒に研究所に来た君のことを尋ねたんだ。そしたら『婚約者ではないけれどとても大切な人です』って言ってて・・好きな人はいるのかと尋ねたら」

「バートさん?!」


「そういうことは本人にも直接言ってほしいね」

「・・・」

「なんだまだそういう感じか」

「いえ。もう逃しません」

「こりゃ、敵いそうにないね。伝えておくよ」

「そうしてください」


 なにが?と思ったけど、ではまたと挨拶をして馬車へと向かう


「さて。アリスはどうして僕以外の男性と二人きりでいたのかな?」

「それは不可抗力よ。花をいっぱい抱えていたからお手伝いして、その流れでお花を頂いただけ」

「かくれんぼは楽しかった?」

「かくれんぼなんてするつもりはなかったの」

「じゃあ今度は僕のペナルティだね」

「っ!聞いてた?かくれんぼなんてするつもりはなかったのよ」

「でも、僕へのペナルティのつもりで100数えさせたよね?」

「違うわ!ちょっと落ち着く時間が欲しかっただけで・・」

「結果的にはペナルティだったよね」にっこり怖い顔で笑う。・・その顔をしたときは・・


「い、嫌」

「拒否権は認められない」


 そう言って、家につくまでずっと耳元で好きだ、可愛い、離さない、覚えきれないほど甘い言葉を囁かれ、下りる頃には耳が痺れたみたいにおかしくなっていた。


「・・・慣れてみせる!!」去り際にそう宣言したら、すごく嬉しそうに笑われた。なによ・・お腹抱えて笑うことないじゃない。

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