こちょこちょ大作戦
【耳栓】→テオにあっさり奪われて囁き倍増の予感
【耳をむしろぐいぐい押し付ける】→直接唇くっつけてなんかされる予感
【甘いことを囁かれてるときに辛いことを考える】→耳の触感と音感で無理!
・・意外と難しいわ、慣れる対策。物理的な防御は絶対さっくり外される。うーん・・ひたすら考えた。一晩中考えてもわからないからもう一晩考えた。そしてたどり着いた対策は
「攻撃は最大の防御なり!!」
テオの弱点はどこだろう。とりあえず耳は試してみなきゃ。足裏こちょこちょしてみたいけど、靴を脱ぐ機会がめったにないわ、この世界。あと脇でしょ、首でしょ、お腹!ってお腹はさすがに駄目かしら。ウイリアムは弱いところ多いからこちょこちょしてきたけど、テオにはしたことない。反撃のチャンスを逃さないようにしないと。
リジーのデートの報告は聞けないまま夏休みが始まった。
社交デビューしていない私は領地が近いので、ほとんどを領地で過ごす。昨年はどこか気持ちが暗い夏休みだったけど、今年は記憶も戻って心が自由な気がする。領地に戻ってすぐ、テオが一人で会いに来た。
「ん?」
「なに?」
「テオが会いに来てくれたことってあったっけ?」
「あるに決まってるじゃないか」
「私に会いに来たんじゃなくて、お兄様に会いに来てたじゃない」
「そうか、そういう風に捉えてたのか」
「今日は私に会いに来てくれたのよね?」
「今日も、アリスに会いに来たよ」
「二人きりね」
「そうみたいだね」
「うふ」
「またなんかおかしなこと考えてるわけか」
とりあえずお茶を用意して、夏でも涼しい図書室で飲むことにする。ソファにゆったり腰掛けるテオのすぐ隣にぴったりくっついて座る。グラスを持ってるときにこちょこちょしちゃダメよね。早く置いてくれないかしら。
「うっく」テオがぷるぷる震えだした。
「何?どうしたの」
「アリスが考えてることが手に取るようにわかる」
「そんなはずないわ」
「僕を攻撃しようとしてるだろ」
「うぐぐ」
「いいよ、やってみて」
「じゃあまず脇からいい?」
「どうぞ」
渾身の力加減で脇を指でくすぐる。強すぎてもダメだし、弱すぎてもダメ。
「どう?」
「なんともないね」
「うそでしょう?!」
「次は首よ!」
「どうぞ」
普通に触れてもまた無反応かもしれない。冷たいグラスをしばらく握って手を冷やしてから首にピタッとくっつける。
「冷たいね」
「それだけ?!」
「うん」
「じゃあこちょこちょ」
首も指でくすぐってみたけど「気持ち良いぐらいだね」と言われた。
「うう」
「もう策は尽きたの?」
「まだよ!とっておきのがあるんだから」
「楽しみだ」
よし!甘い言葉は考えてある。お手本はテオだ。なんか恥ずかしいけどやってみせるわ。届きにくいからソファから立ち上がり、後ろに回る。そのまま後ろから耳元に顔を寄せて
「テオが好き」
そう囁いてみた。
卑怯よね、私。テオをやり込めるためにこんな方法で本心をさらけ出している。引かれるようなら、冗談だからと逃げられるように。恥ずかしい気持ちより、好奇心。テオを少しは動揺させることができたのかしら。
「あれ?」
テオが動かない。き、気持ち悪かったのかしら・・だとしたら凹むわ。そーっと前に回ってテオから少し離れて座る。固まってるテオを見ながら。困ったわ・・冗談よって笑い飛ばせる雰囲気でもない。
嘘っていったほうがいい?嘘じゃないのに?好きって言った途端嫌われちゃうの?
それとも、テオが私を好きっていうのが嘘だったとか?なんの反応もないテオを見ながら、言葉は何も出てこないけれど、思考はマイナスへと振り切れてしまう。
でも・・・たとえ拒絶されようと、私はテオが好き。テオには楽しく笑っていて欲しい。
好きだという気持ちを言葉に出してみてやっと自分がテオを好きなのだと自覚した。まさか拒絶されるかもとは想像すらしていなかったから、覚悟できていなかったけれど、今したわ。
大丈夫。たとえ、受け止めてもらえなくても私はテオが好き。
強く想ってテオの顔を覗き込んだ。
「え・・・?」テオの瞳から涙がこぼれ落ちる。




