最終手段は
「その日、僕もついていくよ」
「そうして欲しい気持ちはあるけど、二人きりじゃないとまたやり直してとか言われると思うの。1度で終わりにしたいわ」
「ディラン様に全く興味ないの?」シャーロットが不思議そうに尋ねてくる。
「ないわ。本当にない。心が全く動かない。マイナスにもプラスにも動かない」
「それはそれで珍しい気もするわね」
「だって私の周りは異常なぐらい魅力的な人ばかりじゃない。ウイルも犬っぽくなっちゃったけど天才だしかっこいいし、ジュードも優しいしかっこいいし、お兄様だって真っすぐで明るくて素敵だし、テオについてはもう令嬢全てが認めるぐらいだし」
「令嬢全ての評価よりアリスの評価のほうが大事なんだけど?」
「・・・」
「俺の目を見て評価してみて」
「う」
「最近、目を見てくれないから不満が溜まってるんだけど?」
「み、見るわ」えいっ!と力を入れてテオの目を見る。けれど、目が合うとついそらしてしまう。
「ちゃんと、僕の目を見て評価して。さっき僕についてだけは言ってないよ?」
「うう」
「話がそれてるぞ」お兄様、ありがとう。
「と、とにかく!これだけ素敵な男性に囲まれているから、めったに心が動かないの!」
「で、嫌われるような行動をしたいわけね」
「そうなの」やっと話題が希望通りに戻ってほっとする。
「どこでデートするの?」
「街に決まった」
「家だとか領地だとか誘われてたけど、アリスが街じゃないと無理ですって断ったんだよ」
「街だとご飯食べたりお茶をしたり、買い物したりよね?」
「たぶん」
「鼻に指を突っ込んどけば嫌われるじゃないか?」
「お、お兄様!そんな下品なこと私の令嬢としての矜持に関わります!無理です死にます」
「さすがアーサーね」
「はっ・・まさかシャーロットまで私にそんなことをしろと?」
「違うわよ。全くできそうにない行動を平然と提案してくる子供っぽさがアーサーらしいという話」
「そういえばお兄様、ちゃんと一日中シャーロットのことを考えたの?」
「アーサーは考えたわよね?」ふふっと妖艶に笑うシャーロットを見て、お兄様が真っ赤になった。
「考えたみたいね」
「どんなことを考えたのか、後で教えてね」お兄様に近づいて囁くシャーロット。なんて恐ろしいのかしら。でも、いきいきしてシャーロットらしい。
「また話が逸れたわ。我儘言いまくるとかダメかしら?」
「生ぬるいね。アリスの我儘なんて可愛くて全部きいてあげたくなるから」そう言ったのはジュードで、なんだか嬉しい。
「食べるものをボトボト落とすとか?」
「ダメだね。食べさせてあげたくなるだけだから」そう言うのはテオで、なんだか恥ずかしい。
「躓いて転んでドロドロに汚れるとか?」
「そうなったら抱えあげて運んであげたくなるからダメ」そう言ったのはウイルで、救助犬の健気さに感動してしまう。
「みんな優しい・・」
「やっぱり鼻に」
「お兄様は黙ってて」
ああでもないこうでもないと1時間も考えたのに
「みんなで考えても良い案が見つからないなんて・・」
「・・鼻の件も前向きに検討することにするわ」
「ずいぶん捨て身ね」
「一度で結果を出したいの」
その夜、鏡の前でこっそり練習したけれど、どう頑張っても美しくできない行為に絶望した。
「ゆ、指先でほんの少し練習しただけよ」令嬢の矜持とは。
□ □ □
当日、できるだけ可愛く見えない服を選び、似合わないまとめ髪をルナに結ってもらい待ち合わせ場所に行く。街の中心で馬車を降りると、ディランがやってきた。
「どこから回りますか?」
「あなたの行きたい場所に付き合います」そう答えられたので
「では、ジュードの誕生日が近いので誕生日プレゼントを買いに行きます」
これなら少しは嫌な気分になってもらえるのではないだろうか
「わかりました。では革製品の店にでも行きますか?」全く動かない表情で答えられる。
「え、ええ」
エスコートのために腕を差し出されたけれど、手は添えない。
少し後ろを歩いていると、歩くのが速くてどんどん離れていく。いつ気づくのかしらね・・なんて思いながらゆっくり歩いていると、5mほど離れた時点で気がついて戻ってきた。
「失礼しました。女性の歩くスピードを理解できていませんでした」と頭を下げる。
「いえ」
立ち止まったのが帽子屋の前で、ショウウインドウに鮮やかな色彩の帽子が飾られている。思わず見入っていると、ガラスの端にちらりと映る銀色が目に入った。
・・・ウイリアム
どうやらこっそり付いてきているらしい。ディランに気が付かれては困るので、すぐにその場から離れる。少し進んで角を曲がるときに後ろを振り返って手を振っておいた。
入った革製品の店で、これはジュードの好みじゃない、あれはジュードが好きそうと、ジュードのことばかり話してみる。そろそろ嫌気が差し始めたかしら?
同じことを他の店でも繰り返し、お昼になったのでレストランに案内された。個室はないようで、店の奥の落ち着いた席に案内され座ると、
「偶然だね」隣の席の男性から声をかけられる。
テオだ。一緒にいるのは、遠乗りのときにみかけた令嬢・・
どうして彼女と一緒にいるの?




