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転生したら天使のように優しい令嬢になったけどごめんなさいそんなに性格良くないので期待しないでください  作者: ブリージー・ベル (旧・瑚希)


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ピュアと打算

「クッポ!」自室で一人になってすぐ、クッポを呼び出し「はーい」ほわんと現れたクッポを掴んでぎゅっと抱きしめた。


「クッポは私の記憶については何もわからないのよね?」

「そうだよー」

「私の記憶がなぜ二通りあるのかもわからない・・?」

「なに言ってるかわかんない☆」

「今日、みんなに狂犬に襲われそうになった過去のことを尋ねられたの。不思議に思っていたら頭がどんどん痛くなって。でもテオに『守れて良かった』って言われたとき、その時の記憶が浮かんだんだけど・・同じ場所、同じ場面なのにテオに助けてもらう記憶と、ジュードに助けてもらう記憶の二通りあるの」

「へー」平坦な(へー)に心が折れそうになった。


「同じ景色、同じ犬なのに・・犬についてみんなに訊かれたのは、ルート確認なのかな?なんて思ったんだけど」

「へー」クッポが頼りにならない。・・いつものことか。


 ルート確認のイベントだったとしても、私のステイタス的なものもわからないのだから、結局頼りになるのは自分の気持ちだけだ。相手のゲージで自分の気持ちを決められない。

記憶を取り戻したいと思った。記憶を取り戻したときに私の気持ちはどう動くんだろう。


□ □


 シャーロットなら知っているかもしれない、そう思って空き時間にサロンへ誘う。


「改まってどうしたの?」

「シャーロットは私が犬に襲われた現場にいた?」

「あら、思い出したのね。でも私はその場にはいなかったわ」

「シャーロットが知ってることを教えて欲しいの」

「私が知ってること・・アリスがテオとジュードとお出かけしていて、街で転んだんだったかしら・・お兄様達とはぐれて、その時に逃げ出した狂犬と遭遇して、危ないところをジュードが助けたと聞いてるわ」


「ジュ、ジュードが?」

「ええ。それ以来あなたがジュードを慕っていつもくっつくようになったのだけど」

「・・テオは?」

「お兄様が何?」

「テオが助けてくれたんじゃないの?」

「私はジュードが助けてくれたとあなたから聞いたのよ」

「・・・」

「どうしたの?」

「記憶が2つあるの・・ジュードが助けてくれた場面と、テオが助けてくれた場面」

「じゃあ二人がそれぞれ助けてくれたってこと?」

「たぶんそうじゃない。同じシーンなのに私をかばってくれる姿がジュードかテオの二通りある感じ」

「そう・・」

「だから混乱してて」


「選べって言われてるみたいね」

「え?」

「だってそうじゃない?ジュードが助けてくれたから好きになったわけだし、それがお兄様の可能性があるのなら、その記憶が本物だと選べばお兄様へ思慕が募るのでは?」

「根幹が揺さぶられる・・」

「まあ今のあなたは誰にも恋をしていないのだから、どちらかを選んだ時点でその人を好きだということになるわね」

「テオを選んで幸せになれる道が見えない・・」だってアーサー兄様。

「そう?ああ見えてお兄様はきっと一途よ」

「・・そうね」一途にアーサー兄様を思い続けているわ。

「好きになった人を深く愛して大事にするはずよ」

「・・そうね」アーサー兄様に想いを告げず忘れようとしているのだから愛が深いわ、きっと。


「アリスはテオ兄様のこと好きじゃないの?」

「一人の人間として好きよ」・・アーサー兄様のことがなければ好きになってたのかしら?


「ジュードのことは?」

「友達として好きよ」

「違いはあるのね」

「そう?」

「ふふ」

「何よ。シャーロットは王子とどうなってるの?!」

「べっ別にどうもなってないわよ」

「シャーロットは好きなんでしょ?」

「すっ・・き・・?」

「だってほら、顔真っ赤」

「顔が赤いのは恥ずかしいからで、好きだから赤くなるわけじゃないわ!」

「じゃあ嫌いなの?」

「好きだけど!」

「ほうら」

「そのしてやったりの顔がムカついてよ!」怒りながら私の頬をムニュムニュと引っ張る。


「いひゃい。なんでわたしの頬をいじるの?」

「だってアリスのほっぺは可愛いもの」

「シャーロットのほっぺもきっと気持ちいい」手を伸ばして触ろうとしたらペチンと手を弾かれた。

「ひどい」

「私のはアリスほど触り心地良くないからダメ」

「シャーロットの頬も絶対触り心地いいわ!」

「じゃあ触って確認しなさいよ」

「逃げちゃダメよ」


・・・・


「あ、あれ?」

「ほらごらんなさい」右手で自分の頬をつまんでから、同じ手でシャーロットの頬の感触を確認する。

「・・違う」明らかに頬の厚みが違う。シャーロットのは薄い。

「私の顔って太ってたのね・・・」

「太ってないわよ」笑いながら「単に肌質みたいなものでしょ」と慰めてくれたけど、私が幼いと言われがちな理由がわかった気がした。


 ジュードとテオに直接確かめてみようかと思ったけれど、どちらに肯定されても否定されても記憶が2つある状態で判断つかないのでやめておくことにする。あとは、どうしてこうもジュードの記憶が戻らないかということ。狂犬の記憶で芋づる式に思い出しても良さそうなのに。

 もしや婚約解消がトリガーなんだろうか。ジュードと話し合うの気が重いな。


「ジュード!」婚約について考えていたら、ジュードとばったり出会った。

「こっ婚約解消しない?」衝動的に言ってしまうと


ジュードの動きが止まる。


「ちょっとこっちに来て」周りに人はいないけれど、空いてる教室へ引っ張って行く。

「私、記憶を取り戻したいの」

「・・・」

「でも婚約したままだと思い出せないんじゃないかと思い始めて」

「・・・」

「かるーく解消してみたり・・しない?」

「・・・」

「ジュードを大好きだと思い出したらまたすぐに婚約してって騒いじゃうかもだけど」

「・・なら、解消しなくていいじゃないか」

「だよね。でも試してみたい」

「いやだ」

「だよね」

「・・・」

「新しい私がジュードを好きになって、古いアリスのジュードへの想いと融合できたら、それはもう二人分の好きになるんじゃないかと思っていたんだけど・・1年経っても思い出せなくて」

「・・・」

「正直に言うね。実は犬に襲われたときの記憶が二通りあるの」

「二通り?」

「ジュードに助けられる記憶と、テオに助けられる記憶」

「どうして」

「ものすごく混乱してる。私なりに記憶を取り戻せばこの混乱から抜け出せるかな?って思ったの。ジュードを大好きになったきっかけみたいだし、婚約を解消すればリセットされて思い出せるかも?って。ジュードから見たら理解できないよね、私の言ってること」

「アリスと婚約解消なんて考えられない。でも記憶を取り戻す手伝いならいくらでも協力する」

「ありがとう」


 教室を出て二人で歩きながら思う。ジュードを好きになるきっかけだったとして、何年もジュードを見てるうちに想いが大きくなったなら、例え本当に助けてくれたのはテオだったとしても、今更テオに気持ちが向かうなんてありえないんじゃないだろうか。それに・・テオはお兄様を愛しているのだから、万が一好きになったら私が辛い。


・・待って。それって打算じゃない?


自分の気持が大事なんて言いながら、息をするように傷つかない道を選んでない?

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