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24 学園生活

 入学して二年の月日が過ぎた。レティシアは努力の甲斐があって、三年生になり「D」クラスに上がった。やっとここで貴族の令嬢に出会えた。男爵令嬢マリーナ・レミングスだ。繰り返しの人生でいつも同性には嫌われるから、また嫌われたらどうしようと思っていたが、彼女は気さくですぐに打ち解けた。


「よろしくね。マリーナ」

「こちらこそ、よろしくレティシア」


 貴族の女生徒は二人だけ。後は平民と貴族の男子生徒が三人ほど。上にいけばいくほど、貴族が増えて行く。

 A、Bクラスになると平民はいない。


「ねえ、マリーナ。私、いままでFクラスでずっと疑問に思っていたのだけれど」

「何?」

「いえ、Fクラスでも頭のいい子はいるのに、どうして、彼らは上にいけないの」


 Fクラスで一番勉強が出来たわけではないのに、レティシアは「E」クラス、「D」クラスと上がってきた。これも身分に関係があるのだろうか?


「別にいけないわけではないわ。ただめったにないだけ。つまり魔力量の差ね。貴族と庶民では大きな差があるのよ」

「え? そうだったの?」


 リーンハルトもそれくらい教えてくれればよかったのに。初めて聞く話だ。


「そうよ。魔力は血筋なの。貴族は貴族同士で結ばれるでしょ? それと属性」

「属性?」

「いいわね。私は土属性だけれど。レティシアは光属性なのよね」

「ええ、まあ」


 そのおかげで、熊のようなバートン先生の元に月二回通っている。なんでもデータが取りたいそうだ。


「結婚相手が引く手あまたでしょう? もうお相手はいるの?」

 

 そういえば、前回は十五歳でトレバーと婚約したが、今回は学校に通っているせいかそう言う話は一切ない。きづけば、もうすぐ十七歳になる。


「いいえ、全く。それで話を戻すけれど、珍しいと言われている光属性と闇属性が上のクラスに行けるの?」

 

 リーンハルトは確か水属性だと言っていた。


「違うわ。闇属性しか持たない者はほぼ、Fクラスから出られないわ」

「え? それはどうして?」

 

 Fクラスでレティシアは遠巻きにされていた。彼らの団結力はとても強かった。


「呪術や占いに使われるから、卑しいものとされているの。それに魔力があるというのとは、闇属性は少し違うのよ。思いの強さが呪いを作ると言われている。

 魔術とでもいうのかしら、彼らは形を学び、術を展開するのよ。私も詳しい事は知らないのだけれど。

 ただ、庶民の間では闇属性は人気があるわ。市井で占い師やまじない師として成功して金を稼ぐ者もいるのよ」

「……そう」


 それで、闇属性が欲しいと言ったからリーンハルトの機嫌が悪くなったのかと分かった。それならそうと言ってくれればいいのに。

 マリーナの話によるとこの学校を出た闇属性持ちの庶民は皆、市井で占い師やまじない師になると言う。ちなみに貴族令嬢にこの属性が出た場合は隠されるべきものらしい。


「それに比べて光魔法には病気やケガを治癒する力があるわ」


 彼女の話はなおも続く、レティシアは情報に飢えていたので、ありがたく聞く。


「でも、何かの役に立つのかしら。ちょっとしたケガを治すならば、便利だけれど。医術が発達しているし、別に必要ないんじゃないの?」

「あら、そんなことないわよ。働いて自活できるわ。尤もシュミット家なら、その必要はないだろうけれど。ほんと恵まれているあなたが羨ましい」

「私は、絶対に働いて自活するの」


 レティシアがそう言い切ると、マリーナが目を丸くした。


「あなた、変わっているのね」

「そういう、マリーナこそ、なぜ、魔法師の勉強をしているの?」


 中には花嫁修業や趣味のためという者もいると聞いたことがある。


「家庭教師になろうかと思って」

「家庭教師? そうね。その手があったわね。私も頑張ろう」

「あらどうして、あなたはそんな必要ないじゃない?」

「いえ、だから私は自活して……」


 するとマリーナが苦笑しながら首を振る。


「光魔法師は教会では必置資格なのよ。王宮でもね」

「え? そうなの」

「そう、騎士団とかもね。急なケガに対応する人が必要なのよ。だから、あなたは家庭教師なんてやる必要はないの。本当に羨ましいわ」


「いえ、そんな」


 そうは言いつつも、レティシアは頬を紅潮させた。人の傷を治していったいなんの得があるのかと、それならば呪えた方が数倍役に立つと本気で考えていたところだった。

 

 しかし、マリーナの話を聞いて、一気に将来が開けた気がする。苦手な勉強を必死にやりつつも、将来が不安で鬱々していたが、ここにきて少し気持ちが晴れた。


 それほど自分の属性がすごいものだと思いもしなかった。これは頑張って勉強せねばなるまい。


「それから情報提供の交換っていったら、あれなのだけれど。あなたに一つお願いがあるの」


 マリーナがにっこりと魅惑的な笑みを浮かべる。


「いいわよ。何でも言って」


 レティシアはいい気分だった。


「リーンハルト様を紹介してくださらない?」


 それは無理というものだ。内容も聞かず安請け合いしてしまったことを悔やむ。


「そうね……。善処してみるわ」


 しかし、せっかく出来た初めての友達との約束を反故にするわけにはいかない。

 

 レティシアは、リーンハルトをカフェテラスで捕まえ、頼み込んだ。


「ねえ、お願い、あなたを紹介して欲しいっていう方がいるの。一度でいいから会ってみてくれない?」

「は? なんでお前の為に」

「お願い、男爵令嬢でマリーナといってとても素敵な方なのよ」

「わかったよ。しょうがないな。だが、これきりにしてくれ」


 また怒られると思ってドキドキしたが、リーンハルトはあっさりと承諾した。


「え? 会ってくれるの?」

「約束してしまったのだろう?」

「ありがとうリーンハルト!」

「違う。お前のためではない。これからは軽々しく人と約束するな。俺たちは常にシュミットの名を背負っているのだから」


 義弟の言う事は尤もだ。ついつい乗せられてしまったが、これからは気を付けよう。マリーナはとても気さくだけれど、何をするにしても交換条件の人だ。リーンハルトに言われた事は今後心しよう。




 

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