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建帝とゆかいな仲間たち  作者: 風車猫十郎
第一章 帝国再建
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第8話:内政官は心中で絶叫する

 会議室から自らの執務室へ向かって歩く内政官であるリーアの眼差しは、少し物憂げな様子を湛えていた。

 彼女は、歩きながら、先ほどの会議でいつものごとく緊張してしまい、なかなかうまく話せなかったことを心中で悔やんでいたのだ。


(あうう、またしっかり話せませんでした。タクミさんに助けてもらったからなんとかなりましたけど、こんなんじゃダメですよね)


 リーアは、焦ってしまうとうまく喋れなくなってしまう自分の性格をよくわかっており、何とかしたいと常日頃思っていた。


 しかし、何とかしたいというリーアの思いとは裏腹に、焦ってあわあわしてしまう性格は未だに良くなる気配はなかった。


(でも、今はそれよりも目の前のことに集中しないと)


 リーアは、自室の扉のところに、自分の部下である職員達が自分の帰りを待っている姿が見えると、くよくよ悩んでいた頭を切り替えて、内政官としての自分を強く意識した。


 職員達はリーアの姿を見つけると、一斉に皆頭を下げた。

 リーアは全員に執務室に入るように告げて扉を開けると、自らが普段から執務をとっている机の方へ向かった。


 リーアが執務机のところに来た後、執務机をはさんで扉の前にいた職員達が、皆並んでいるのを確認した後、リーアは口を開いた。


「皆さん、私たち内務省がやるべき任務が決まりました。私たちが最優先でやるのは、避難民の方々に対する食料の支給です。食糧は帝国の備蓄倉庫から出しますので、倉庫から城外への食糧の定期的な配送と、城外における炊き出し体制の構築をお願いします。これは食政局が中心となって、必要なら他の部局の者も協力してください」


「はい!」


 その場にいた職員のうち、穀物部や畜産部など食糧関係の内務業務を統括する食政局に属する者達がリーアの指示に応える。


「避難民の方々が寝るところは、リシアナさんの方で城外に用意してくれますが、避難民の中には体が弱い病人の方やお年寄りの方もいると思います。建築管理局は、帝都内で宿泊可能な施設を確保して、そういった方々が帝都内で休めるよう施設を手配してください」


「了解しましたが、我々帝国政府が管理している以外の宿泊施設については、避難民の使用にかかる費用はいかがいたしましょう。非常事態ということで強制徴発のような形にいたしますか?」


 引き続いて発せられたリーアの指示に質問してきたのは、帝国内の公共施設や都市建設など、建築物全般を管理する建築管理局に所属する職員であった。


 リーアはその質問に少し考えてから答えた。


「いえ、非常事態であるのは間違いないですけど、戦時ではありません。現時点で帝都に住む人々に無用の負担をかける必要はありませんので、すべて帝国の予算で支払うようにしましょう。ロザリエさんには後で私から報告しておきます。もし、避難民のためと言ってお金を受け取ることを遠慮する方がいても、帝国からしっかりとかかった費用を払うようにしてください」


「わかりました」


 そう言って質問した職員がリーアの言葉に納得すると、リーアは少し考えてから更に指示を出す。


「既に皆さん承知しているかもしれませんが、今のところ帝都以外の都市や町はこの世界には存在していない可能性が高いです。帝都には食糧の備蓄はありますが、自給能力自体はありませんので、早急に食糧自給手段を確保しないといけません。そこはタチアナさんに何とかしてもらうつもりですが、タチアナさんを呼んできてもらえませんか?」


 リーアの言葉に食政局の職員はわかりましたと答えて、職員のうちの一人が足早にリーアの執務室を出て行った。


(食糧の方は一旦これで良いとして後は何か・・)


 リーアは、会議室でタクミが言ったことを思い出し、下命された任務以外に今やるべきことを考えた。

 すると、ふとある疑問が出てきたので目の前にいる職員達に質問した。


「えっと、帝都内で使われている水は、地下水を利用していたと思いますが、今問題なく使えてますか?」


「はい、問題なく使用できているようです」


 建築管理局で水道管理を担当している職員がリーアの疑問に答えた。


(帝都ごと違う世界に来た時に地下水脈も一緒に転移したということですかね?うーん・・・でもこれは今考えてもわからなさそうですね)


「でしたら、避難民への飲料水の配送も合わせてお願いします。後、念のためもし水位とかに異常が見られたらすぐ報告するようにしてください」


「わかりました」


 避難民への飲料水は確保できる目途がついたものの、新たに沸き起こった疑問について、リーアは今は先にやるべきことがあると後回しにした。


「後は、避難民の方々は着替えもないですから、必要に応じて倉庫に保管してある衣服を支給してください。それと帝都の民から衣服とか食料とか避難民への寄付の申し出があるかもしれませんから、窓口の設定と、寄付されたものの適切な配分をお願いします」


 リーアの言葉に部下一同が頷いたところ、「失礼します」との声が執務室に響いた後に扉が開かれて、先ほどタチアナを呼びにいった職員がリーアのところに来た。


「リーア様、タチアナ様なのですが・・・」


「食政局にいなかったのですか?」


「いえ、それが、帝都の外の土壌を見に行くと、僅かな部下を連れて帝都をお出になったと」


「えええ!?タチアナさん、もう外に出ちゃってるですか!?」


 タチアナの予想外の行動力に驚きの声を上げるリーア。


「大至急フレウさんのところにタチアナさん護衛の連絡をしてください」


 焦って指示を出すリーアの心の内には、


(何やってるですかタチアナさんーーー)


という叫びが木霊していたのだった。


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