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建帝とゆかいな仲間たち  作者: 風車猫十郎
第一章 帝国再建
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第9話:東方将軍の剣技は冴えわたる

「う~ん、これはなかなか良い土ですね~」


腰まで伸ばしたふんわりとした髪質の長い桃色の髪が、肩口から垂れて地面についているのにまったく頓着することなく、しゃがみ込んで地面から手で救った土の感触を確かめている、おっとりした表情の可愛らしい顔立ちをした女性がそう呟いた。


「うん。これなら、麦とかの穀物も野菜とかの作物も問題なく育ちそうです」


 女性は幸せそうな笑みを浮かべて呟きを続ける。


「それは朗報ですな」


 女性の周りに数人いた男女の中で、細見ながら服の上からでも引き締まった体格をしていることを感じさせる初老の男性がそう答えた。


「ええ、レオン、本当に。ここで作る野菜や果物は、間違いなく凄く美味しいですよ~」


 そういって女性は立ち上がり、レオンと呼ばれた初老の男性に笑顔を向けた。


 そのように和やかな会話をしている彼らの地面に、すっと影が差す。そして影に気付いた一行が上空を見上げると、そこには黒い外套に身を包み、外套の中の身体には、同じく黒い色で身体にピッタリとフィットした軽装の鎧をつけ、背に蝙蝠のような形状をした羽を大きく広げた人影が浮かんでいた。


「タチアナ。勝手に城外に出て探索を始めるのは感心しませんよ」


 人影はそう言うと、タチアナと呼ばれた先ほどまで初老の男性と喋っていた女性の傍に降り立ち、翼を外套の中に収めた。


「あら~、フレウさんじゃないですか~」


「あら~、じゃない。まったく、護衛部隊も付けずに城外の探索へ出るなんて。まあ、私の天地開闢眼による魔力探知があればこそ、直ぐに発見できたのだから、感謝して欲しいところですね」


「あらあら~、それはすみませんでした。帝国とは違う世界にいると聞いて、どんな土質をしているのか気になってどうしても我慢できなくて~。それじゃあ、護衛には?」


「ああ、タチアナ達が農耕に適した土地を調査するのには、私の部隊が護衛につくことになった」


「それは助かります~。でも、フレウさん以外の部隊の方はいないみたいですけど」


「ふっ、私の真魔極光剣があれば、私一人であらゆる脅威を真っ二つにすることができるから心配はいらない」


 左手を広げて自分の顔面の前に持ってきて、指の隙間からタチアナを見つつ、ふっふっふっと笑うソードマスターのフレウ。


「それで、本当のところは~?」


「私だけ先行して急行して来たから部隊は置いてきた。まあ、もうすぐ合流できるはず」


 タチアナの問いにあっさりと本当のことを言うフレウ。

 そのようなタチアナとフレウのやりとりを、初老の男性を筆頭に、そこにいるタチアナの部下達は微笑ましいものを見るかのような目で見ており、その様子からは、このようなやりとりが普段から二人の間で頻繁に行われていることがうかがえた。


 タチアナは、内政官であるリーザの補佐官のファーマーであり、東方将軍であるフレウとは所属する部署が違っているのだが、お互い気が合うのか、タチアナとフレウは休みの日など時間が合う時は共に食事に行ったりしている仲であるのだ。


 そんなやりとりをしていたフレウの表情が、一瞬で厳しいものに変わる。


「・・・さっそく護衛の役割を果たす時がきましたね」


 そう言ってフレウは、タチアナの背後に広がる草原の地平線を厳しい目つきで見つめた。


「え?」


「この魔力反応は、魔獣の群れでしょう。進行方向がこちらのようだから、このままだと群れとぶつかる危険性がある」


そう言うとフレウは、タチアナの方を見ながら、羽を大きく広げる。


「ふっふっふっ、それでは私の真魔極光剣の切れ味を、この世界の魔獣どもに見せてあげましょう。タチアナ、もう少ししたら、私の部隊がここに着くから、ここで待ってなさい」


 そうタチアナに言った後、フレウは上空へ舞い上がったかと思うと、一直線に地平線の彼方へと向かっていった。


「頑張ってね~」


 飛び去って行くフレウに、タチアナはのほほんとした口調で大きく手を振りながら応援するのであった。












 この世界において、ブルホーンと呼ばれる、強大な角と強靭な肉体を持った、地球上ではバッファローと呼ばれる生物に似た魔獣が、100頭ほどの群れを形成して集団で平原を移動していた。

 この世界におけるブルホーンは、非常に狂暴かつ強力な魔獣であり、その口は、容易く生き物をかみ砕くことが可能な形状をしており、その強大な角は、当たった物を容易く粉砕するような頑健さと鋭さを有していた。

 ブルホーン一頭を撃退するのに、この世界にある国の兵士が60名ほどからなる1個小隊で出動して、ようやく死人が出ないで対処できるというほど強力な魔獣であり、これが100頭の群れとなると、4千から5千程度の兵士で構成された連隊規模の軍を派遣しないと対処できない、まさに災厄と言って良いほどの凶悪な存在であった。


 群れの先頭には、群れの中でもひときわ大きな体と角を持ったブルホーンがおり、そのブルホーンが群れの行先を決めているようであった。おそらくはこの群れのリーダであろうそのブルホーンは、突如その足を止めた。


 ブルホーンリーダーの視線の先には、黒い外套に身を包んだ人の姿をした何かが立っていた。


 ブルホーンは、ケモノより少し賢いぐらいの知能を保有している魔獣であるが、ブルホーンリーダーは、魔獣としての本能でその人の姿をした何かから発せられる尋常でない鬼気を感じ取り、直観的に覚った。


 あれは、人の姿をした災厄だと。


 災厄がその口を開く。


「へえ、この世界にもブルホーンがいるんですね」


 そう言った後、災厄は不敵な表情を浮かべてブルホーン達を見据える。


「ふっふっふっ。光栄に思いなさい下郎。この世界で真魔極光剣を初めて味わう名誉を、お前たちに与えましょう」


 そう言った災厄の右手には、いつの間にか薄っすらと輝く青い光が握られていた。それは、刀身自らが青い光を放つ一振りの剣であった。


 青い光を右手に持ったまま、悠然とした態度でゆっくりとブルホーンの群れに向かって歩み寄ってくる災厄に、ブルホーンリーダーは、本能からくる内心の恐れを吹き飛ばすかのごとく、威圧するようにその口から咆哮を放つ。


 咆哮が鳴り響いた後に、それに応えるかの如く、ブルホーンリーダーの両脇にいた2頭のブルホーンが災厄目がけて、進行上にいるものすべてをなぎ倒すような勢いで突進していく。


 突進した2頭のブルホーンが、災厄をなぎ倒すと思われた刹那、青い軌跡が閃いた。


 ブルホーン2頭は、災厄に当たることなく、災厄の後方へと走り抜けていき、暫くすると、首に一筋の線が走ったかと思うと、ズッという音とともに、首と胴体が分かれ、胴体と首から血を流しながら崩れ落ちた。


 一瞬で起きた惨劇に目を見開くブルホーン達。


 そんなブルホーン達に向けて、災厄、いや、フレウはこう告げた。


「さあ、殲滅の時間です」



















 全てのブルホーンの首を斬り落としたフレウは、大地に横たわったブルホーン達の屍を見つつ、思案するような表情をする。


(こちらの世界にもブルホーンがいるということは、ブルホーン以外にも、アストラル大陸と同じ魔獣がこちらにも存在しているということですかね。それにしても、探知した魔力量に比べると、このブルホーン達はいささかもろかったような・・・)


 フレウは、先ほど斬りすてたブルホーンについて、元いたアストラル大陸のブルホーンに比べて、魔力量は同じなのに幾分弱く感じたことに疑念を抱いた。しかし、


「ふっ。まあ、私の真魔極光剣が絶好調だったということですね」


と勝手に納得すると、疑念なぞ最初から無かったと言わんばかりの晴れやかな表情で羽を広げて、その場からタチアナの方へ向かって飛び去って行くのであった。


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