第21話:休憩で驚く
「こっちですよ、お兄さん」
周囲を見渡しながら歩いていた匠は、声に促されてミズハの方を方を見る。
匠の前を歩くミズハの指が指し示すはるか先には、避難民キャンプの診療所として機能している医療天幕がおぼろげに見えつつあった。
匠とミズハとシウンの三人は、匠の配下にあたる補佐官の役職についている、プリーストのセラエラに会うために避難民キャンプを訪れていた。
匠たちがわざわざキャンプ地に足を運んでまでセラエラに会いに来た理由は、数日前にラウラから伝えられた言葉にあった。
「報告の機会を設ける?」
ロザリエの言葉に首をかしげる匠。
匠がいるのは、ロザリエの執務室であり、執務室にある応接用のテーブルの長椅子に、この部屋を訪れた匠は座っていた。
そして、匠の対面には、忙しい執務の中、匠が訪れたのをきっかけに休憩のひと時をとることとしたラウラとロザリエが長椅子に座っていた。
ちなみに匠が執務室を訪れた当初の目的は、書庫での知識のすり合わせを終えたので、これからすべきことについて、ラウラ達に相談しようと思い訪れたのであるが、訪問を切っ掛けに休憩のお茶会で雑談がてらの情報伝達が始まってしまったため、匠の当初目的は放置状態であった。
「ええ、円卓の間で将軍達に指示を出しておよそ1月になります。各所からの報告を聞く限り、避難民キャンプの運営や新しい都市建設のための調査も大体順調のようです。ですので、ここで一度、将軍だけでなく、将軍配下の神将や内政部門の補佐官など、主要な幹部も集めた上で、現在の進捗状況を陛下に報告をする場を設けるつもりです」
ロザリエの言葉に、匠は率直に疑問を口にする。
「報告の機会を作るのは確かに必要かもしれないけど、円卓の間でそれぞれの将軍が報告するのじゃあ駄目なのか?」
「それも考えましたが、現状の情報共有について、将軍止まりとなっている点はあまり良くないと考えました。帝国の現在の状況については、将軍だけでなく、神将や補佐官レベルの者達にも情報共有を図った上での方が、今後の活動もスムーズにいくものと考えたからです」
「円卓の間での報告よりも少し格式ばった形になってしまうが、ロザリエの言にも一理あるかと思い私も賛成した」
休憩用に用意された紅茶を一口飲んだラウラが、ロザリエに続いて発言する。
「実際、神将の分の報告も、上司の将軍達がまとめて私に報告する形式にするつもりだから、神将達は情報共有のために集まってもらうようなものだ」
「ふうん・・・えっ?じゃあ、俺は自分の配下のシウンとセラエラの分の報告をしないといけないのか?」
匠はふってわいたような展開に驚きの声を上げる。
「そういうことになるな。まあ、報告会まではまだしばし時間がある。その間に報告内容をまとめる時間は十分にあるから心配するな」
ラウラが動揺した匠を慰めるような声を出す。
しかし、そのようなラウラの慰めも、匠にはあまり届いていなかった。
なぜなら匠は、知識のすり合わせばかりに気を取られて、アサシンのシウンとプリーストのセラエラがやっていることを確認するということをほとんどしていなかったからだ。
(やっばい。配下の仕事の進捗状況についてまったく知りませんって、まさしく使えない幹部の典型例になっちまってるよ・・・・これは急がないと)
休憩もそこそこに、匠は足早に執務室を去ると、そのままシウンを探し始めるのであった。
(幸いシウンはいつでも俺に報告できるように、報告内容を書面でまとめててくれていたから、ほんと助かったよ)
ここにいたる経緯を思い出しながらミズハとシウンとともに避難民キャンプを歩く匠。
(問題はプリーストのセラエラの方なんだよな。避難民キャンプでの療養活動が忙しくて、教会に行ってもいないのが常態化しているから、直接会いに行って話を聞かないとどうしようもうないというね・・・)
やれやれと思いつつも、実際に避難民キャンプを訪れることのなかった匠は、気持ちを切り替えて、せっかくなので、避難民キャンプの状況を見ながら歩み続ける。
(メニューの内政画面上では、最初は人口、支出、食糧備蓄、治安の四つが、マイナスを意味する赤字表示だったけど、しばらくすると人口の赤字表示が消えて黒字になったというのは、多分避難民キャンプ地が設営されて、曲がりなりにも寝床が確保されたからだろうな。食糧備蓄もガチャをした後に、一気に赤字表示が消えたから、現状の備蓄でも当面は持つということなんだろうな。支出が赤字表示のままなのは、新しい都市や農地も出来てなくて収入が増えているわけでもないから、それはしょうがないか。治安の方は人口の赤字表示が消えるのと同時に消えたらから、避難民キャンプ地も出来て、とりあえずは落ち着いたということなんだろうな)
メニューの内政画面で確認した内容と現在の状況を照らし合わせて推測したかぎり、当面の課題は新しい都市建設による収入確保だなと考えながら匠は歩み続けるのであった。
活動報告にも少し書いたことありますが、TRPG関連の作業が溜まってしまったので暫く更新が滞ることになると思います。
申し訳ございません。




