第17話:召喚の間で霊器を見る
10連ガチャの結果、室内には大量の食糧や資材が積まれた状態となり、職員や兵士達が手際よくどんどん室外に運んでいくが、流石に量が多いのか、すべてを運び出すにはそれなりの時間を要するようであった。
「いつものことですが、凄い量ですね」
入口付近で声がしたので匠がそちらを見ると、シウンと一緒に召喚の間に来たミズハが、サクラのそばで資材などが運び出されるのを眺めていた。
ミズハは召喚された資材の量の多さに感心している様子であり、シウンは口には出さなかったが、
「流石、匠様」
と匠の霊祇官としての能力の凄さに喜んでいるような表情が浮かんでいた。
ゲーム上においては、影司という役職は、一応公式にはない役職ということで、皇帝の下ではなく、形式上、霊祇官の下についた補佐官的な存在とされていたが、どうやらシウンは形式上の上司であるタクミに対し、忠誠心をしっかり抱いており、それが過大な評価にもつながっているようであった。
そしてサクラは資材を運び出す職員や兵達の動きをしっかり見て監督しているようであった。
生来の怠け者とは言いつつ、流石に任された仕事はしっかりとこなすサクラなのであった。
(うーん、ゲームでは数値でしか意識してなかったけど、実物として見ると凄い量だな。まあ、帝国の運営に役立つくらいの資材が手に入る設定だったから、当然と言えば当然なのか)
匠がゲームでのガチャ結果とこちらの世界でのガチャ結果の違いに感心していると、ラウラから声がかかった。
「タクミ、この調子で何度か召喚してくれれば、国庫の備蓄も一息つけられるはずだ。すまないが頼む。」
そう言って召喚の儀を続けることを要請された匠は、わかったとばかりに頷き、室内から大量の資材が無くなると、再度ガチャの10連召喚ボタンをタッブした。
匠が何度か10連をタッブして資材を召喚し、そろそろ充分そうだとラウラと会話してからタッブした矢先、それまで青白い光を放っていた魔法陣が、それまでとは異なる黄色い光を放ち始める。
「お、これは」
(これ、霊器が出る時のエフェクトだよな)
光が収まると、魔法陣の上には、一見すると動物の皮で作られたような小手があった。
(あ~、Nの霊器か。残念)
内心ではRの霊器が来るかなと思っていた匠は、出現したのが最もレアリティの低いNの霊器ということでがっかりした。
しかし、そんな匠の内心とは正反対に、ラウラが明るい表情で匠に声をかける。
「霊器が召喚されるとは運が良いな。確認しても良いか、タクミ」
匠にとっては外れでもラウラからしてみれば、例え5級霊器であってもそれを部隊の隊長クラスが持っているかいないかで、部隊の戦闘力に雲泥の差が生じるため、帝国を治める身としては非常に有難いものなのである。
「ああ、良いよ。ところで3級以上の霊器は、霊祇官による授与の儀がないと使えないから、霊祇官が個人個人に渡さないといけないはずだけど、4級以下の霊器は帝国ではどうしてたっけ?」
匠は記憶障害という建前でとおすために、ちょっと覚えてないというていで、ラウラに尋ねる。
「ふむ、今までは召喚したタクミが、私がロザリエに霊器を渡してもらって、私たちの方で霊器を渡すのにふさわしいものに渡していた」
そう言いつつ、召喚された霊器を手に持って、様々な角度から眺めるラウラ。
「もちろんタクミの方で、誰か渡したい者がいるのであれば、タクミの方で渡してもらってもかまわないが」
そう言って、ラウラは眺めていた霊器をタクミの方へ差し出す。
タクミはラウラから差し出された霊器を受け取り、初めてこちらの世界で召喚した霊器を見つめる。
すると霊器のそばに、メニュー画面と同じような感じで、半透明のステータス画面が表示された。
そこには、霊器のレアリティや霊器が所有者の能力を引き上げることのできる能力の数値、使用可能な霊術が表示されており、表示される項目や数値は、アスサガのゲームと同様のものであった。
(うーん、この能力値と霊術のしょぼさは、まごうことなきN霊器。やっぱりゲーム内でのN霊器と同じ能力なんだな。ゲーム内だと、余って不要になったN霊器は売却できたけど、あれってこっち側の世界では、ラウラに渡していたということになっているのかな)
ゲーム内における霊器の売却に関する扱いが、こちらの世界では微妙に異なっていることを感じつつ、ラウラに言われたような霊器を渡す相手もいない匠は、渡された霊器をラウラの方へ差し出す。
「いや、ラウラ達の方でふさわしいと思った人に渡してくれた方が、霊器をしっかり役立ててくれそうだから、今までどおりでお願いするよ」
「そうか、ではまかされよう」
そう言ってラウラは笑顔をみせつつ匠から霊器を受け取った。
この日、匠が召喚の儀で出現させた、食糧を含めた大量の内政用の資材のおかげで、帝国における食糧や資材の備蓄問題は、一旦片付くのであった。




