第八話「届かなかった手」
勢いよく開かれた扉の向こうに、じいちゃんの姿が見えた。
じいちゃんは大きく目を見開き、顔から血の気が引いている。
その表情は、ただ驚いているというよりも、何か信じられないものを目の当たりにしたようだった。
(じいちゃん、どうしてそんな顔をしているの?)
「じいちゃ…むね……くるしっ…光って……」
助けて。
じいちゃんにそう言おうとした、その瞬間―――。
胸元から放たれていた光が、より一層強くなった。
「なにっ……!?」
眩い光はあっという間に私の全身を包み込んでいく。
すると、体がフワッと宙に浮き始めた。
「やだやだやだ!!
じいちゃん助けてっ!!」
私は必死でじいちゃんに手を伸ばす。
じいちゃんも慌てて私の方へ駆け寄ってくる。
「サラ!!! わしの手を掴むんだ!」
そう言って、じいちゃんも必死に私へ手を伸ばす。
「じいちゃん!やだよっ!離れたくないよ!」
「サラ!!!」
私は何度もじいちゃんに手を伸ばす。
あと少し。
ほんの少しで、じいちゃんの指先に触れられそうなのに―――。
届かない。
「じいちゃん……!」
その瞬間、私を包んでいた光がさらに強く輝き始めた。
眩い光の中から、金色の小さな粒がキラキラと現れ、私の周りをクルクルと舞い始める。
まるで、私をどこかへ連れていこうとしているかのように―――。
「サラ!大丈夫じゃ!お前ならきっと……!」
「じいちゃん!!!」
光が強くなるにつれて、じいちゃんの姿が少しずつ遠ざかっていく。
「やだっ……じいちゃん!!助けて!!」
嫌だ。
行きたくないよ。
じいちゃんと離れたくない―――。
私は最後まで必死に手を伸ばす。
じいちゃんも、私に向かって手を伸ばしている。
だけど、どんなに手を伸ばしても届かない。
「じいちゃん!!」
眩しい光の向こうで、じいちゃんが何かを叫んでいる。
だけど、もう私には何を言っているのか聞き取れない。
最後に見えたのは、必死に私へ手を伸ばすじいちゃんの姿だった。
「サラ―――!!!」
遠くで私の名前を呼ぶ声が聞こえた、その瞬間―――。
パァッ―――
私を包んでいた光が一気に弾けた。
無数の金色の光がキラキラと舞い上がり、私の視界を埋め尽くす。
そして、私の意識はそこで途切れた。
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さっきまでサラがいたその場所には、もう誰もいない。
ただ、金色の小さな光の粒だけが、静かな部屋の中を雪のようにゆっくりと舞っている。
謙信は、サラが消えた場所に向かって手を伸ばしたまま、その場に立ち尽くしていた。
やがて金色の光は、一粒、また一粒と静かに消えていく。
まるで、二人の別れを惜しむかのように―――。




