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第一話「いつもの夜」

「…はぁ、はぁ、はぁっ」


サラはベッドから体を起こし、ゆっくりと呼吸を整える。


(またあの夢だ…)


枕元に置かれたスマートフォンに手を伸ばし、時刻を確認する。


1:24。


(はぁ、喉乾いた)


サラはベッドから降りて、乾ききった喉を潤そうとキッチンへと静かに向かう。


ここは古い平屋建ての家。

そっと歩かないと床が軋んで音が出てしまう。


――キシッ


(あ…やっちゃった)


「サラ…? どうした?」


隣の部屋からじいちゃんが顔を覗かせる。


「じいちゃんごめん。ちょっと目が覚めちゃってさ。水でも飲もうかなと思って」


「そうか」


そう言ってじいちゃんはまた部屋に戻る。


その背中を見送りながら、ふと昔のことを思い出す。


私、相澤サラはじいちゃん――相澤謙信と、この古いけど住み心地の良い平屋に2人で暮らしている。


物心ついた時からずっとじいちゃんと2人。


じいちゃん以外に、私には親戚と呼べる人はいない。


幼い頃は、


「どうして、私にはパパとママがいないの? パパとママはどこ?」


と、何度もじいちゃんに問いかけた。


その度に、ちょっと困ったような顔で微笑むじいちゃん。


「サラにはじいちゃんがいる。じいちゃんがサラを守るからな」


こう言われ続けた。


その言葉の通り、じいちゃんは私に沢山の愛情をかけて育ててくれた。


やりたい事をなんでもさせてくれた。


決して裕福な暮らしではない。


それでも、私はこの家でじいちゃんと過ごす毎日が好きだった。



乾いた喉を潤わせ、私は自分の部屋へ戻る。


「さむっ……」


冷たくなった両手を擦り合わせながら再びベッドに潜り込み、ゆっくりと目を閉じる。


けれど、さっき見た夢が頭から離れない。


近頃、毎日同じ夢を見る。


暗闇の中で私は1人佇む。


遠くの方で何か金色に輝く光が見える。


手を伸ばそうとしてもなぜか届かない。


ただ、こちらをジッと見つめている。


そしてその光は、日を追うごとに近づいてきている。


(あの夢はなんなんだろう…)


考えても答えなんて出ない。


私は布団を頭までかぶり、深い眠りに落ちる。


15歳の誕生日まで、あと数日。


この時の私はまだ知らなかった。


ずっと続くと思っていたこの毎日が、


もうすぐ大きく変わろうとしていることを――。

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