対面
「わあ、なに、ここ?神様の地域に入った気がする!」
目の前の蛇曲がりな細長い石段の最果ての鳥居を仰向け眺め、本心からの感慨を言葉にした。
「神様の地域はこう簡単に入らないよ。」
左に立つ加久良さんもわたしと同じ方向に目を向け笑った。
「では、ぼくは神様の地域にちょっと離れたどこで車を泊めに行くから、二人は先に行って、直ぐ追いつけるから。」
「ナイスつっこみ、冬弥!」
冬弥は爽やかな笑顔を残し、エンジンの音とともに車を発動した。
加久良さんと並べ石階段コースを取るわたしの少々興奮気味の顔を見って、彼は質問を投げた。
「階段上り得意か?」
「どうして?」
「やる気満々じゃん。」
「うん、普段も階段のぼりをやってるよ。まあ、仕事場の階段は室内で、空気もよくないし、でも鍛えることに免じて我慢した。いまこうやって自然に囲まれた石階段上れるのわたしにとって大変贅沢なことさ。やっばり、興奮するね!」
「仕事場って何階?」
「12階。」
「これは多分その仕事場より長いぞ。」
「いいよ、いいよ。行こうよ。」
加久良さんも質問詰めを止め、素直にわたしの提案を受けた。暫く会話なしただ階段上りを続けた。わたしは舞い上がりながら楽しく上ってた。
「どころで、楽羽からぼくのことどれ程聞いた?」
多分、冬弥と合流する前にもう少し楽羽の話をしたいだろう。加久良さんもずっと古い友人のことを気にしていたね。
「それ程知らないよ。ああ、加久良さんって、左肩を大怪我してことあったの?うまく回らなくなったって、楽羽は言った。それは原因で、剣道を止めましたね。」
「それを聞いたか。うん、事実です。」
「加久良さんと剣道か?似合うかも?」
3階段前に歩くわたしは上りを止め振り替えして、加久良さんを観察しながら出た結論は結局不確かだ。
「なにそれ?外見から人を判断すると痛い目にあうぞ!」
加久良さんは小さく笑って合い槌をした。
「赤彦さんといる時エリートの身なりであんまり文句は言えないが、こっちでどうしてそんな格好取るの?」
「両方にもいる人として、ちゃんと役を分けたいんだ。」
「性格やセリフから見れば、大差はないじゃん。」
「こいつ、そこに突っ込むな!」
同じ階段に登ってきた加久良さんはわたしの頭を軽く叩んだ。
「でもでも、『かくちゃん』とか、『らくちゃん』とか、お互いの呼び名は可愛いな。」
「そう?どれ程見た目が怖い人だってかわいい昔話のひとつやふたつがあるかもな。」
加久良さんはいかにも普通に言った。まあ、一理があるかも。
「ああ、そういえば、楽羽がわたしはその友達に似てると言ったことがあった。つまり、わたしは加久良さんと似たもの同士?」
「嫌そうな顔だな。」
「心外です。だって、わたしの想像と全然違うですよ。」
「どんな想像したのかは知らないが、現実と言うのは絶対に妥協しないことさ。」
何が言い返そうとしたが、冬弥さんの声が響いた。
「おう、二人とも、登り早いですね。」
振り返ると、10階段遠いどころで冬弥さんは手を振りながら話を掛けていた。
「お前も早いな。」
加久良さんは答えた。
「それはそうさ、みどりの前でかっこつけたいんだ。」
悪戯っぽく笑ってから、冬弥さんは急いでわたしと肩を並べた。
残念ですね、加久良さん、楽羽の話題はここまでだ。心の中で小さく呟いた。
残り半分の石階段を登りながら、冬弥さんと加久良さんは体力の話を持ち出した。
「みどりもすごいな、半分くらい登ったのり、息を乱れてないね。」
みどりさんで普段鍛えないタイプかな?まあ、適当に誤魔化すか。
「実は、腹で呼吸をすれば、多少体力を保つんだ。」
「そうか、確かにどこで聞いたことがある。」
加久良さん、それってフォローするつもりですか?ありがとう。
「なる程。先から言おうとしたが、なんかみどりと加久良はテンション高いな。階段ののぼりすきなんですか?」
「修行ですから。」
加久良さんとわたしはほぼ同時に言い出した。さすがに冬弥さんも驚いた。
「いまのシンクロ、すごいですね。二人は似ているかも。」
「それは光栄です。」
加久良さんは満面の笑顔で頷き、わたしを見つめた。
だから、なんで冬弥さんまで…そういえば、冬弥さんは楽羽に似てるかも、もちろん外見じゃなく、内面のことですが。赤彦さんも楽羽に似て落ち着いた雰囲気で、頼り甲斐がある人ですね。ましかして、加久良さんもずっと古い友人を思って、彼にそっくりな人達と友達になったのかな?って、今のわたしたちは本の中にいるね、そんなに自由にだれと仲良くなれるの?ああ、やめやめ、ただで分からないことが多いのに、これ以上深入りは不要だ。
「はい、ついに登頂だ!」
冬弥さんは一番高い石階段の到着を宣言した。
「おう、いい眺めだな。」
加久良さんのセリフにつれてわたしも後ろむいて眺めようとするが、ひと目で眩暈を感じ、慌てて隣に立つ冬弥さんの袖を強く掴まった。
ああ、忘れた、わたし高いどこ苦手なんだ。
「大丈夫、みどり?」
冬弥さんはわたしの異変を気付き、話しかけた。
「うん、大丈夫。ちょっとはしゃり過ぎ。」
「そう?落ち着いて。この前直ぐだよ。」
三人を並べ大きな鳥居を通過し、3分ぐらい歩くと、寺らしい建物が目の前に現れた。建物の左に大きい石作りの机があった。それに囲んだ同じく石作りの椅子に蛍ちゃんが座っていた。
「蛍ちゃん、こんにちは。」
冬弥さんは挨拶しながら早足で蛍ちゃんへ歩いた。
「これはおみやげ、どうぞ、お口に合えばいいな。」
蛍ちゃんは小さな手で冬弥さんから贈り物を受け取り、可愛い声で礼を言った。
「いつもありがとう、冬弥兄さん。」
やっばり可愛いな!でも、その目に掛かった目隠しが気になって…
「加久良兄さんもみどり姉さんもこっちに座ってください。」
わあ、加久良さんとわたしのことも気付いた、やっばり見るじゃなく、ほかの方法で感知したのね。
わたしの考えさえも感じ取れたか、蛍ちゃんはわたしに向けた。ちょっと悪いことした気がした。でも、蛍ちゃんは口角を曲げ、笑いながら言った。
「赤彦兄さんもいつもお菓子をくれた、わたしのことを気にかけた、みんなわたしに優しくしてくれて、本当にありがとう。」
「そうですか、兄は任務や仲間のことを家で言ってなかった。でも、みんなの話から判断すると、頼り甲斐のあるいい人ですね。妹としても、誇り高いです。これからよろしくね、蛍ちゃん。」
「うん、わたしも仲間として、みんなの役に立つことを頑張ります。」
「蛍ちゃんはちゃんと役立ってるよ。」
冬弥さんの言葉で蛍ちゃんの頬を微かな朱色に染めた。
「では、冬弥兄さんたちをここに呼び出した理由を言います。和則様からの不運を食い尽くすキーホルダーの持ち主の写真、みんなもう見ましたね。いま、その人はここにいる。このことを和則様に報告する前に、チームのメンバーに知らせたいのです。」
……なんだなんだ……つまり、楽羽はいまここにいるって言うこと?
その情報にリアル感を失くし、反応するのはちょっと時間を掛かった。
「彼をどうするつもりですか?」
加久良さんはいきなり肝心などこをついた。
「それはやっばり和則さんに引き渡して方がいいでしょ。」
冬弥さんは渋い顔で言った。
いやいやいや、待ってよ。和則さんからの情報にすれば、不運を食い尽くすキーホルダーは不吉な物で、その確保は時間の問題。おそらく、その持ち主にもそれなりの罰を下るでしょ。もし楽羽はそっちに移送されたらまずいことになるかも。
「あの、その前にその人を合わせてもいいですか?話をすれば、何か情報を得るかもしれないし、それに、そのキーホルダー本体はまだ行方不明ですね。」
「うん、確保したのはその持ち主だけ。一応彼の持ち物を探したが、キーホルダーらしいものはなかったのです。みんな、ついて来てください。彼の居場所へ案内します。」
加久良さんは誰よりも早く立ち上がって、蛍ちゃんの後ろについて行った。やっばり、楽羽のことを心配していたね。わたしと冬弥さんもその後を続けた。
寺の大門を経由し、その右の二番目の部屋の扉を開いた蛍ちゃんの肩越して、わたしは楽羽を見えた。それはわたしのよく知っている楽羽じゃなかった。




