アジトへ
「あの、加久良さんのことですが…」と言い始めたわたしの後ろから本人の声が飛んで来た。
「僕のことですか?知りたいなら、直接聞けばいいのに。みどりちゃんだから、何でも教えてあげるよ。」
肩に伸ばしてくる手を軽い回転でかわした。
「バカ弟…」なつみさんは手で額を支えながら嘆きだした。
大部隊の帰還。任務完了かな、早い。って、いったい何の任務かな、気になるよ。
「今日はこういう事で、皆さん、お疲れ様でした。では、次のミッションが来たら、まだ連絡します。」
赤彦さんの言葉に、みんなその場で解散した。マスクさんとミラさんは無言のまま去って行った。航也さんは軽く挨拶してから夏斗くんと一緒に行った。あのふたり、案外仲いいのかも。加久良さんは赤彦さんとわたしの行列に入ろうとしたが、なつみさんが強引に連れ去った。
最後に残したのは赤彦さんとわたし。任務がスムースに遂行したせいか、赤彦さんは来る時より晴れた顔してる気がする。
「みどり、もう一ケ所、付き合ってくれる?」
聞く必要がないのに、あえて赤彦さんはわたしの同意を求めた。
「もちろん!」
爽快な返事に喜びを表情に表す赤彦さんは優しい微笑みを浮かべた。
「これからみどりにも任務に参加するので、まあ、少しづつ慣れていけばいいさ。今日はまずアジトへ案内する。」
「アジトって、どこですか?」
「ここです。」
赤彦さんはこの広い部屋を指差しながらあっさり答えた。
「ここですか?……何か隠し屋があるの?」
先からずっと立っていたこの部屋を改めて見ると、部屋より、ホールと呼ぶの方が適切のようです。
あれ、何か違和感が…ああ、ドアがない!一回り回転してみと、四つ方向は壁だけ、ドアの面影さえ見当たらない。うそ――先帰ったみんなはどこから出て行ったの?
「気付いたのか?」
思う事が全て顔に出てるわたしに赤彦さんは言い出した。
「みどりがまだちっちゃい頃、ここに連れて来たことがあったよ。その時、君がアジトへの入り口を開けた。その場にいったみんなが偶然と思うが、憶えてる?」
みどりさん本人ならともかく、偽者のわたしには知る術もないでしょうが……
「まあ、随分前のことでし、憶えなくても普通ですね。」
自分の問いを否定した赤彦さん依然と笑顔のまま。
でも、ここはアジトなら、今目に映ったこの部屋はカモフラージュ?それともここに来た時の魔法陣の転送がいるかな?うむ………
「みどりが頭を抱えて苦戦するのは珍しいな。」
傍で赤彦さんは楽しそうに目を輝かせた。
「まあ、まだまだ時間がある。試してごらん。」
愉快度が上がってきた赤彦さんは子供染みの顔になった。
わあ、ちょっと可愛い…いやいやいや、何考えてるの、わたし!仕事に飽きて、奇妙な空間に飛ばされ、本の中に入って、そのキャラになりすまし、おまけに、今はイケメンの兄さんと二人ぎり、現実なら、どれほど嬉しい……まあ、いいや、常識飛ばせるのはこの本にいる時だけ許されるかもしれない、楽しいと言うことは変わりがないのさ。がんばろう!わたしの妄想、働く時間です。
冬弥の時も、転送で来たのですね。まさか、アジトへ行くのもそれは必要?でも、その魔方陣、わたし描けないし。幼い頃のみどりさんもできないはずよね。よって、魔方陣は除外できる。
次に考えるのはカラクリ屋。この何もないバカ広い密室の中、壁あるいは床に見破り難いカラクリが設置されてるかもしれない。つまり、壁のどこかを押すと、隠し屋へ繋がるドアが現れる、また床に穴を開け、地下へ降りる隠し階段が出ることもありうるだろう。
ちっちゃいみどりさんが手をいっばい伸ばして届ける高さは、およそ壁の三分の一のどころ、それ以上高いどこはアウト。もちろん、天井も論外ですね。
と言う訳で、壁と床を調べるのだ。
一番見近い壁角から手探りながらゆっくり歩き始めたわたしを見ている赤彦さんは何を考えるのかな。気になる!ああ、もう――今、謎解きは先だ!ちゃんと探すんだ!
わたしの期待に添いせず、壁沿い一周終わっても、何も発見できなかった。へこむ時間はない、次、床だ。頼む、床よ、わたしにヒントをくれ!さすがに地面にへばりつくのは……
赤彦さんの視線が背中に感じ取って、振り返ると、暖かい笑顔に魅入られた。すっきりと背の高い赤彦さんの長い足と良い比例してる体が目に入る、やっばりかっこいいなっと思った時、彼の足元に何かが光ってるのを見逃さなかった。
自分にも驚きなスピードで赤彦さんへ駆けつけ、その足元に蹲った。何もない!何も光ってないぞ。そんな!もう一度戻って確認しよう。
先の壁角に戻り、同じ角度で見てみたら、その光が戻った。要するに、ここにしか見えないか。待ってよ、角!?もしかして、ほかの壁角からも見えるかも。駆け出し前に、対照物の確保を思い出し、
「赤彦――いや、兄さん、そこから動かないで。」と叫びだした。
おどなしくそこで待機する赤彦さんのおかげで、検証できました。光ってるどころは合計四ヶ所、直線でを全部繋げば四角形になる。どうやら、ここは突破口だな!その四角形の中絶対カラクリが設置された。赤彦さんを対照として、その範囲を計り取ったわたしは今度こそ跪いて手掛かりを探し始めた。見るからに押しどこや踏みどこなどいないな。わたしの近眼が頼りがいがないが、みどりさんの体だから、普通より良い視力の持ち主と言うのはこのわたしが一番分かる。近眼が治れないのかな…って、何で自分のことになってるの?戻れ、戻れ!見つからないな……うむ、目に頼りすぎかな。じゃ、目を閉じ手探りで行こう。あんまり期待抱えず、乱暴にその地面に手を着いた。あれ、暖かい…この範囲内だけかな…なに、なに、熱くなった!危険回避の本能で目を上げ立ち上がったわたしの直ぐ傍で赤彦さんは頷きながら言い出した。
「うん、見つかったね。さすがみどり、謎解き上手!」
誇りまみれに言われても…
おお――光った、光った…その四ヶ所に囲った中に魔方陣が現れエメラルド色をちらっと光っている。
なんだ…結局転送かよ…へんな仕掛け。
「晴れない顔ですね。」
「だって、地味ですもん。何ですか、このいい加減の仕掛けは!わたしの情熱返して!」
「まあ、大目に見てあげて。」
今度こそ声上げ笑い出した赤彦さんはわたしの頭を撫でて言った。
「では、アジトへ行きましょう。」




