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名もなき怪物

 登場人物 

 ミス=アルトンマ

 カナリア=バーン

 比奈内宗助

 安堂真人

 星野京子

私は彼女にその言葉を口ずさんでいた。彼女は霞から生まれたようなにんげんであった。カナリアは彼女のことを良くはおもっていなかった。カナリアの勉強机に充てられる便箋がされた封筒を見ていた。

「知らない宛名ね」

 カナリアは便箋を傷つけないように封筒の天辺を木製のペーパーナイフで切ることとなった。そこには肉厚の文字で書かれた名義の無い手紙が三枚書かれていた。

「アルベルト誰かに私のこと言った」

 カナリアは私の事を話していたら彼女のことを話していたからだった。私は供物を彼女から得るため一階の窓辺を見ることにした。

 アルベルトは一階で暖炉の火を絶やさないように注意深く観察しながらコンロを点火するとソーセージを何本か入れてオリーブオイルを敷いた。私は喉元を鳴らしながらその言葉の意味を探して居間へと移動する。

「カナリアおはようございます」

 カナリアは軽く手を離すと彼女から話を聞いた私は口笛を吹きながら草の柵の奥から外の窓辺を見ていた。私にはそれが話にきいていた森の番人であることは間違いなかった。

「私の部屋にこの便箋の封筒が届いたのだけれどアルベルトが置いたの」

 カナリアは朝食のハムエッグを食べながらソーセージをほお張り話していた。私は彼女にその言葉を話していた。アルベルトは私の手元にある年賀状を取り上げると封筒に目を合わせていたが少しすると眉をひそめていた。

「ひどく失礼な方ですね」

 草で絡まる植物の葉が柵のように周りを囲む根はお堀のように下段に二階建ての家を建てていた。春のような心地の良い風が電子レンジ、炊飯器、冷蔵庫の隙間を縫うように風が通る。しかしアルベトは陽気な風とは裏腹にアルベトのアルベルトは投げやりに封筒の中身をばらまいた。

「宛名の無い封筒を差し出すとは何事でしょうか」

 アルベトはあくまでも穏やかに話したつもりではあるが声には怒気が込められているように感じた。私は彼がつくってくれたスープを飲み干すと【おかわり】をするために台所へ直行した。アルベドは思わず封筒を嗅ぐが柑橘類の臭いはしなかった。無臭の封筒からは三枚の手紙はあるが宛名が無いため誰のために書かれた内容であるのか分からなかった。

「ないようはどでしか」

 アルベドは言質を取るためにもう一度読ませようとした。それは私が彼女にその言葉を話そうとしたからではない。しかし彼女はむくれたようにその頬を膨らませていた。私はさげすむが如くその顔を眺めているとカナリアは根負けしたように手紙をひったくる。

【拝啓 様 先日は踊りの方楽しませたでしょうか。私は貴方様の巫女の踊りが大変キテレツでおもしろかったのを今でも覚えています。またいつか私とあなたで踊りあかしたいものです。

 さて私の城にお越しいただいた時に話していましたが、貴方様のポーチを預かっております。私としましてはチャックを空けて中身を改めても宜しいのですが貴方様にも個人の詮索されたくない事情があると考えたため控えさせていただきました。

 つきましては一度白夜の城までお越しいただけると幸いです。住所宛名に関しましては以下二枚目と三枚目の手紙に記入されます。また、白夜の城の写真を同封致しますため邸宅を見つける目印にしていただけると幸いです ×月×日 敬具】

「何とも奇妙な手紙ではないかね」

 カナリアはアルベトへ読み聞かせをするように語るが肝心のアルベトは欠伸をしながらその言葉を聞き流していた。カナリアはさっそく地図を開くと同封されていた洋館の名前を探し当てようと虫眼鏡を使い端から同封された場所の名前を探し当てようとした。私はカナリアへ「お茶を持ってこようか」と言うと「ウン、ウン」と言うだけで時には無視をすだけの状態に陥った。アルベトはこういう状態になったカナリアが真剣に捜査へ向き合うことを決意したときであると確認できた。見るとカナリアは前のめりに座りながら煙草を吸うて目の奥の瞳孔を大きく開いてた。

 台所にある瞬間湯沸かし器の電源を入れると沸騰するまでの十分の間は暇になるのでコーヒー豆を新しいものへと替えた。そっと彼女が居るテーブルに戻るとカナリアは今の電気毛布のうえで胡座の姿勢をとっていた。彼女が展開した風呂敷には地図だけではなく歴史書、人類学、心理学の本が疎らに散乱していた。

「これはとても奇怪な事件だな」

 彼女が話すと私はその言葉に笑いを禁じえなかった。どうしてにょきっと見た地図から赤いマーカーで収束した矢印の中心点に赤いマーカーで白夜の城と書かれたチェックマークが付け加えられていた。

「もうわかったのかい」

 カナリアはアルベトの手を引っ張ると手紙の封筒を取り出した。それは彼女がアルベトに書類の整理をするのと同時にさきほど届いた封筒をその書類と一緒にクリアファイルの中へ入れそのまま本棚の隅にでも置いといてくれと言うものであった。

「年間で500通もあるものなのだが今はもう誰からも年賀状が届くことはなかったか」

 カナリアはアルベトが整理した部屋へ入れた新鮮な空気を取り入れると彼女はその言葉に似つかわしくない大きな声で唸った。小鳥たちでさえ言葉にならない大きな声に惑わされて羽を広げては飛び立った。

「500通も来ていたのか、いったいどのようにしてそんな多くの紙をさばいていたのかね」

 二時間も経つと不思議な封筒へ興味が無くなり次の面白い事件に興味が移り変わっていた。カナリアはコロコロ変わる表情へ戸惑いの顔をしていたが、アルベトにとっては些細な問題であった。アルベトは興味の持った女性の写真を自身のクリアファイルに押し込み印刷していた。彼に唯一ある習慣であった。

「簡単なことさ」

 カナリアはアルベトの顔を手でこちらに近づけると彼女の親友であるアンバーの名前が書かれた年賀状をちらつかせた。年賀状にはただ一文字【好き】と書かれていた。好きとはまた大胆な女性だと感じた。彼女へ送られた内容はカナリアが泣いて手紙を破り捨てる程に罵詈雑言が書かれていた。文の間行もバラバラで私に充てた手紙であるならば書かれた住所にそのまま罵詈雑言を書いていただろう。

「何簡単なことさ。名前と住所以外を同じ内容の書き物にしてあとは名前を手作業で書いただけさ」

 カナリアは届くことも無いその手紙をアルベトが持つ書類の一番上に置くと眠りへつく子供のように安らかな顔で寝てしまった。私はそれが彼女にとっての合図であると感じ取ったが何も言われていないのでそのまま書類整理をした。

「カナリア、起きるんだ、今が何時かわかるか」

 彼女は思いを深ける欠伸をしながら深夜であると平然に言いのける顔に変形していた。そんなものに惑わされることも無いと考えてはいたがやはり心配であり、彼女の机を見ようとした。しかし彼女はただそこで寝静まっているだけで一度「歯磨きをしてくると」洗面台に顔を忍ばせていた。

「13時だろう」

 彼女は近くの本棚の上にあるランタンの紐を正確に引くと灯りがついた。電池式のランタンからは高度の電気が発生しているのでカナリアからしてみれば眩しくてめがさめる事態になると予想していた。しかし、カナリアの目は一切の怠慢無くこの世界を映していた。

「11時ですよ」

 カナリアはその言葉に目を全開にして飛び上がると部屋を出る直前にアルベトへ「今日の朝食はベーコンとハム以外で」と言う。カナリアはため息を漏らし一言「分かりましたと」話を続けた。私はマフラー首に巻き部屋の隅の角部屋から一階の居間へ降りた。

「コーヒーは私が淹れるよ」

 カナリアは給水ポットが沸騰する間に私は彼女が片付けた機能の茶封筒を二階の事務所と呼んでいる部屋の一室に赴いた。事務所を管理している男は中肉中背のいかにも無骨そうな恰好をしていた。そこから片っ端に中をひっくり返して差し出し人不明の手紙を取り出そうとする。

「きっと彼女なら三段目の郵便と書かれた所に置いてあるだろう」

 私は机のデスクの三段目の所を充てもなく探していた。しかしどこにもそのお目当ての茶封筒は無かった。私は大きく深呼吸をすると怒りで沸騰している頭を振り向いた。アルベトもこの騒音に興味を示したのか速くもその雲に霧が掛かるような顔つきになっていた。

「三段目のデスクにはありませんよ、先生の探しているものはこれでしょう」

 カナリアは美しい声を張り上げて小鳥の奇声になろうかと考える程であった。アルベトが特別に大きな声を話していた。アルベトがその先の所に居た男の後ろから声をあげる人が居た。

「アルベト」

 カナリアは後ろに居たアルベトはダンスのことを話していたカナリアも彼に言葉を投げかけていた。私は彼女に言葉を投げかけながら男の制止を無視して話をしていた。

「宛名の無い封筒をどうするか」

 アルベトは彼女のことを話していた彼女にとっては彼女が話していた事よりも正確に大通りのことを覚えていた。私はそれが何を現すのか分からなかったがカナリアからしてみればそれはとても大事な事であった。

「君、年賀状は届くかね」

 アルベトとカナリアはただ年賀状のことを話していただけだと考えていたが、男にはそれが頬を赤らめる程喜ばしいことであると考えていたからだ。しかし彼女はまたも考え事をしながら想いをめぐらせていた。

「いえ、ここしばらくは届いていません」

 アルベトはそのことに満足したのか笑みをこぼしながら首を縦に振り頷いていた。私は彼女にそのことを話すと彼女は何も返事をよこさずにことをすすめようとした。しかし私では彼女を説得するだけの題材が無いのだ。

「年賀状と額口だよ」

 私は封筒のところに薄い膜が張ってあるのが分かった、無味無臭で引火性の低い粘液がそこには張られていた。私は惑わされたような気がして腹が立ったがカナリアが淹れてくれたお茶を飲む話しているとき程よりは落ち着いた。

「一階に来てごらん」

 カナリアは先に一階へ着くと彼女が書き損じた年賀状の残骸を超えて遠くのガスコンロまで行った。私は彼女に話すと彼女がおもむろに紙の宛名の部分を火で炙りだしたのだ。男は急いで止めさせようとしたがアルベトに止められていた。

「まあ、見ていなさい」

 私は彼女にその言葉を投げかけられていたが引火することも無かったのでそのまま見守ることにした。実験はアルベトや受付けの男が心配しているよりも順調にことが運んだ。頃合いを見てはカナリアに声を掛けようとしたが、彼女が日々の業務をしているときよりもイキイキとした顔に言葉のナイフを鞘に納める結果となった。

「それで、結果は分かりましたか」

 受付の男がカナリアに結果を求めようとしたが彼女からの返事は無かった。私はそのことを話しているとカナリアは突然として奇声まがいの大きな声を出したのだった。「ベルベットさん貴方が犯人ですね」カナリアはおもむろに指で温和に受付をしてくれた男を指で指した。

「これが結果です」

 私は大きな子供っぽい字でメチルアと書かれた筆記体を目にした。それは黄ばんでいて人によっては泡だった気泡がまず目に着くシミであった。まさしくコーヒーをこぼしたようなそれは確実に【メチルア】と書かれていたのだった。

「やっとこれで事件が解決したのだな」

 受付の男は神妙な雰囲気とは裏腹に大きなため息をついて彼女に握手を求めた。カナリアはためらい無く彼の手を握る。それはゴツゴツした細長いにしては質感のある筋肉に覆われた手であった。私も安どのため息をつこうとしたが二ヤリと笑いながらこちらを見たのが気がかりであった。

「いえ、まだです」

 私は彼女に愛想をつかれないように必死で取り繕ったアルベトは私の事を話していた。更には私が考えていたことも見透かしたような笑顔を向けていたのがとても気持ち悪い感じがした。私は後ろを振り向くと泡を吹いたような顔をしている男が一人腰を抜かしていた。

「トルベンさんどうしたのですか。酷い顔」

 アルベトは酷く汗を垂らしている彼にハンカチを渡そうとしたがハンカチを貰うどころかしたを向いてこちらを見ようとすらしなかった。

「ハンカチを貰わないのかい。そうかもらえないのか今君が流している汗は冷や汗だろう。このアルトンマと言う女性から貰った大金のチャンスを逃さないために、必死に脳を稼働させているのだからな」

 アルベトは彼女が話をしていると彼女から話を貰うよりも先に一枚の手紙を机の食器の上に投げた。それはくしゃくしゃに折り曲げられた、一枚の便箋の封筒にしまわれている手紙であった。おそらくは便箋の封筒にしまわれていたのだろう、黄色い上質で分厚い紙の屑が付いている。

「拝啓メチルア君

 君がこの手紙を持っているということは私の友人がいくつもの障害を乗り越えて君の元へこの手紙を持って来れたと言う事だろう。絵画が好きそうだなその切符はその絵画を所有する会合の参加剣だ。君は誇ってもいい、僕の所有する絵画への招待状への切符を送ろう。しかしその切符は君だけのものではない。なぜなら切符の効力は君に届いてから10日過ぎた時に初めて効力を発揮するからである。君はそれを死守しなけばならない。大丈夫私は君が信じている神のように、君を見守っているから細やかなことならば私が援助しよう。10日守りきるのだよ。

                                   ミス=アルトンマ敬具」

 その言葉使いを見ながらも機械的なまでに綺麗な所帯で書かれた文字が縦並びにつらつらと書かれていた。私はその手紙を拾い上げ崩れ落ちるさまを見るほかなかった。狡猾で大柄な男性でさえ耐え忍ぶことのできない誘惑を苦痛が紛れ込んでいたのは火を見るより明らかだった。

「彼女には一度だけあったことがある」

 それを聴くとカナリアは目の色を変えたように彼へとびかかった。もう搾れるだけ搾り取り平べったくなった彼から彼女はまたしても何かを搾取しているのかと考えてしまった。私は彼女のことなど言葉にならない程に息が詰まると外の窓辺を見ていた。

「中肉中背の女性だった。髪はぼさぼさでそれこそ美女って程ではないが大きな瞳を持っていて少し白髪交じりだった記憶がある。そのくせ話となると世話焼きな程親身になるから勘違いしちまったんだ。彼女からは金木犀のいい匂いがしていてそれが俺が丁度好きな香りなんだ。だから気を許しちまったのが地獄の始まりだったんだ」

 彼はそういうとバーボンの蓋を開けて一気に全て飲み干した。さっきまでの硬骨で堅気の雰囲気を残したまま酒癖の悪い不潔な飲兵衛へと変わりかけていた。カナリアは彼に限界まで近づくとそのバーボンを褒めた。すると彼は子供のような嬉しい笑顔をしていた。

「そしてその女性は今どこに」

「さあてね。その女はどこにもいないよ。俺ですら分からなかったからな。しかしそのチケットはお前のものだ。そこに行けば何かわかるんじゃないのか」

 彼は首を振った後にきくと彼女とは文通だけの関係だったそうだ。しかし、この狡猾な内容を孕んだ手紙が恋文だと言うのならば私は一生恋はしたくないものだがな。彼は破綻したのにも関わらずあくまでも笑顔でその場に入り浸っていた。

「僕は警察を呼ぶね」

 アルベトは警察を呼ぶなり彼が話した真相を全て話した。彼らは呆れたようにその場に居る飲兵衛を引き取った。私とカナリアは10時に差し掛かるころであったが少し遅めの朝食として食卓にある料理を頂いた。

「さて、では朝食にしましょうか」

 カナリアはさっと首筋に紐を通すとエプロンを体にまいた。そのままフライパンと取り出すと下ごしらえを始めたのだった。朝食にはサラダと切ったローストビーフを入れたサラダと野菜を使った和え物であった。朝食に米は置いてなかった。ないしパンなどの主食と呼ばれるものは存在しなかった。

「今日は災難だったね」

 私は悲観しながらもカナリアの燃えるような闘志に惹かれていた。それは彼女が心を揺さぶるようなスローガンをしたからとかではなく、彼女のそのもえるような緑の眼であった。彼女の食卓にはサラダと肉とそして乗船券のようなチケットが有った。

「カナリア今日一日のやることは決まった」

 私は盛り付けのサラダを小皿に乗せながら話した。彼女も今日は珍しく話に頷いてくれた。私はそんな彼女に時折り肉を多く取り分けてやったが、彼女から笑みは一切零れていなかった。だがしかしその顔はあくまでも満足気であった。

「次の冒険に行こうか」 

 カナリアは有楽町から彼女のよく話している口利きの居酒屋まで足を運んでいた。某市のあるT字路の先の中年の女性が経営している居酒屋であった。私は彼女にその巻物を聴いていると私の話ではそこいらに伝説の巻物があるとのことだった。

 宗助はそれを探すためある賃貸物件を探しにこの場所まで来ることとなった。蔓延した不潔な錆びた鉄パイプから雫がひとしきり落ちて来た。それは彼女が藤堂橋から見た雨の雫と替っても何ら問題が無い程に美しかった。

 音楽プレイヤーには、元彼女が好きな音楽プレイヤーがマイセットとして登録されたままであった。私は広角を吊り上げてプレイヤーへ閲覧されている【消去】のボタンを押そうとした。

「もう少し後でもいいか」

 宗助は彼女が聴いていた音楽を画面上の右端からタップして録音して有る音楽を聴いた。

「宗助速くしろよ」

 宗助は東の日が目を覆い尽くす早朝の息が白くならない頃にはもう車の交通量も多くなり私たちの声へ同調して鳴る。

「真人」

 早朝の息が白くならない頃にはもう車の交通量も多くなり私たちの声は車の音と同調する。

「確かに体調はすこぶるいい」

 真人は元気いっぱいにはしゃぐが契約した賃貸の歩道に行くまでは気を抜くことはできなかった。

「カラオケボックスで一夜を過ごした後なのに」

 宗助の長い髪が春の風にゆらり揺れた。何回足を動かしただろうか私は前を向くと群青の空に見えるうろこ雲にかかったホトトギスと向こうの太陽が見えた。

「確かに」

 そばをつくる店も元気いっぱいな中学生を迎える学習塾も今は回転してはいない。しかし牛丼屋は今でも開店していた。

「宗助こそ焼肉食ったから元気いっぱいだね」

 私は彼とカラオケボックスで一夜を過ごした後焼き肉屋で食べ放題を食べた。

「店員さんはかわいかったな」

 私は後ろを振り返るとボタン式の十字路をみていたのだ。そうだもうあの場所には戻れないのだ。私は寂しくなるだけなので後ろを振り返るのを諦めた。

「もうすぐ日の入りから三時間経つから早く場所に行こう」

 新居は私が想うよりも広く自身が家元で与えられた自室よりも二回り大きかった。そこに台所、浴室、手洗い場が備え付けてある。手洗い場には最新の自動で流れる便槽が備え付けられたトイレが設置されていることに満足した真人は腕を組んで。

 住居は今にも崩れそうなおんぼろの外観をしていたが中身は風化するどころか味が有るヒノキで組まれた木造建築であった。私は玄関を出て右奥に有る軽薄な鉄製の扉を叩いた。それは挨拶周りであった。

 私は自室から左周りに玄関の戸を開けた。最初は空き家のところもあったが順繰りに部屋を廻って行くと住居者の居ないアパートの部屋のプレートには名前が書いていないことが分かった。そう見ていると住居者の名前は星谷さん、水野さん、轟寺さんの三人とあと一人、カナリアと書かれたとりわけ頑丈な扉に住まわる住居者だけであった。

「もうすぐ私と彼女はイチョウの街に行く」

 京子は私の葵の瞳を覗き込むように目が腫れていた。私は彼女が泣いていると思った。しかし京子はそんなことなど知らず私に満面の笑顔を振りまいたのだ。真人にそのことを話すと私は電話口から一言分かったと言葉が発し電話は途切れた。

「私はその四人とだけ親しくなればいいのか」

 残念ながら貞治は弁護士としての仕事があるためこの冒険へと参加することができなかった。しかし彼が昔行った行路を教えてくれることとなった。宗助が手を顎に当てながら言った。私たちがみたのはとても行路とは言えないような獣道であった。

「そんなことはないよ」

 椅子に座っていた真人も飛び上がり憎たらしい声で抗議する。雑記林の方から行こうとしたが滝の勢いが激しく高低差もありそこから行くことはできなかった。京子は貞治と言う男性が私を担いで渡ったと言っていたがそれが偶然できたことであると願いたいほどに頑丈である証拠であった。

「ご近所付き合いも有るから私たちだけではなくて色々な人と仲良くするんだ」

 朝焼けのヒカリがとおに世界へと舞い降りその輝きを雲が受け止めながらうろこ雲は乱反射させていた。真人が演説口調で言った。吹き荒れる風の中でさえ私たちは恐怖などは微塵もなくただ未知へ挑戦する好奇心だけであった。

「カナリアともか」

 私は眉を引っ込めながら真人を見上げた。元素の秘密はこの【立ち入り禁止区域】の奥に有るのだ。固唾を飲むと私は彼女にその言葉を介してもその剣呑な雰囲気を打ち破ることはできないだろう。真人はスマートフォンを手にすると京子が言った場所のマップを表示する。そして経路に従い場所に出た。

「ああ、そうさ」

 宗助は横にある水道水が出る蛇口の捻り口を直接流れる水に近づけて飲んだ。口に含んだ水を口の中で一すくいし中へ流し込む。女性と九勝祭があった街と呼ばれる場所に潜入するためにバス停からコンクリートの道を進み【立ち入り禁止】と書かれた場所へと足を運ぶのだ。

「やっぱり水道水はまずいな」

 彼は肩を竦めて真人を睨つけた。真人は京子と言う女性が言っていた住所へと行くことにした。宗助はカナリアのことを心配して一緒についていくことになる。真人だけが通りの喧噪が届く路地から姿を現したのだ。そこにはカナリアも宗助も居た。

「コンビニ行こう」

 真人はため息をつくと外の扉を開けてそのまま近くのコンビニエイスストアへ赴いた。これから私たちは法律を犯すことになるかもしれないからだ。私は彼女から話の聴いていた場所へ集合するとそこには新品のプラスチックでできたバス停が設置されているコンビニエイスストアであった。

「私はそんなことないと思うけどね」

 私はそんなことは無いぞと言わんばかりの胸を張った。スマートフォンでその九勝祭を検索してみるとそこには12月13日と書かれてあった。私は最近までその祭りのもようしをしていた問うことにまた驚いた。

「別に不味いからと言ったから嫌いというわけではないよ」

 真人は宗助の剣呑な雰囲気に気おされ言いくるめられてしまった。宗助が説得してくれたので私はここに住居することができるのだ。私は彼に深々と感謝をするとトレンチコートからプラスチックの容器へ入っている緑茶を一息で飲んだ。

「まあ、いいや」

 真人は平べったい蛙のような顔になりそのまま唇を伸ばした。不審な死から一週間が経つが一向に正解が出ないのはこの施設を知っているのが彼女のためどうしても誰もが分散して探索することができないからだった。

「京子の言っていた邸宅か」

 そこでは久我祭が行われていたが今ではその風習も伝えられるだけになり誰もする人は居なくなった行事であった。今から三十周目晩にある一人の男性が女性を連れ去ったことがきっかけとなり祭りの継続が困難になるからである。

「カナリアの嗅覚は一級品だ彼女が仲間に加わってくれたなら」

 真人はそこで宗助の言葉を遮るのは指を口に当てたからだ。

「宗助でもその先は言ってはいけないよ」

 宗助は吊り上がった目元が垂れ眼になる魔法にかかるように自然と優しい目つきになった。

「カナリアはきっと僕のことなんかわすれているよ」

 カナリアは疲れ切った表情をしながら彼女のことを

 時折り私たちはその言葉をよく話していた。私にとってみれば彼女は最愛なる女であった。私は藤堂橋から春のムササビを聴いていた。私は彼女にその言葉を話していた。彼女は二ヤリと笑顔を出すと彼女のから笑顔を話した。

「カナリアは速く言葉を話してください」

 カナリアは笑顔のまま彼女に話をした。私は彼女に話を聞く前にどのような人かを聴いた。私はそのある男から話した。彼女が創った未完成の額口を遠巻きに見ていた。私にとってみればそれは花びらと彼女が歪に型取りした世界を象徴した辺であった。

「宗助、あまり口を聴かないで」

 カナリアは正座をしてその額口と平行になるように座った私は彼女に「その額口は一体何なのか」きくこともできたが、額口の詳細をカナリアの口からきくことは憚られた。宗助はその言葉に彼女のことを聴くと私の心が届かない遠い穴倉の中に心を閉じ込めた。

「君は宗教家だったかな」

 カナリアは宗教家である問に答えることは無かった。私は彼女にその言葉を聴いてはいたがそれが果たして彼女であったかはもう聴くことはできない。彼女はもうその椅子には居らずカナリアの本性は遠い其方へと消えてしまったからだった。

「ムシグロおばさん薪を持ちますよ」

 私はカナリアの祖父母のムシグロと呼ばれる人が抱えている薪を手で弄んだ。クルクルと回転する有機物は私の言葉に反応して伸縮したように感じた。

「ムシグロさん今薪が伸びたような」

 ムシグロはひょこんとしていたが彼女に言われると大きな笑い声を上げた。カナリアの耳にムシグロの笑い声が聞こえる。私は彼女にその言葉を書きたいと感じたが私にはそれができなかった。日のヒカリは私たちが進む先を照らしてくれた。

 ここの管理人であり彼女たちを入れてくれた人である。

「煩悩の神が居るのだね」

 私はムシグロにその言葉を聴くと最後まではなしていたような罪悪感が経ち籠って来た。私はそれまで口ずさんでいた言葉も話を聴いていた彼女でさえも憎悪に満ち溢れているようであった。

「すぐに浄化しなければならないね」

 私はマムシの出そうな雑木林の中にある鉄でできた薪をくべる暖炉を見ていた。宗助の腕の中には一杯の薪が抱えられていた。おばあちゃんは自分の背中に抱えた乾いた薪をくべると次に私の腕の中にある生っぽい湿った薪を暖炉の中へくべる。

「この火があるだろこれが火種だ」

 宗助はおばあちゃんが薪をくべる前に小さなポット出の火を指さした。12月の寒空は火の芽吹きがかすれてしまうほど凶悪で太々しい寒気を送り出す。

「水が流れている」

 私は彼女から話を聴いていたが街のところにある篝火を見るために降りるのだそうだ。私はふてぶてしい彼女を見るとそのわき腹からこみあげる欲求にさえ悩まねばならない。

「一見すると空気を燃やしているだけなのになぜだろう、美しくみえるのは」

 生まれたばかり赤子が手を握るが如く美しい光景である。宗助は三角へ切り取られた空気穴からカナリアが長財布を持っている擦れた金属音を聴き取った。

「私はこれにて閉幕としますか」

 私は彼女にその言葉を話していたから彼女のことを話していた。私はカナリアに火元素の素養を見せようとした。炎は柱の如くカナリアの手の中から噴き出した。噴水のそれに似た噴出口を手の頬でつくろうとしたが手の口を細めるほどに話をしていた。

「カナリア、それまでだ」

 私は彼女の手を掴むとその手をこっちまで引き延ばすとカナリアの手の中から火が消えた。私はアルベトからさいさんにわたり自身の血がのぼりやすい性格をなおすように言われたことをようやく思い出したようだった。

「どうしてよその顔を焼き払うの」

 彼女はその言葉を話しているとこっちまで気恥しくなる。カナリアは宗助に止められその激しい猛獣のような握力で彼を振り払おうとした。

「私はその言葉を話していると私の元素の本質を話そうとした」

 宗助は自身の念じた光で火を創ろうとしたがカナリアよりも淡い日であった。私は悲しくはなかった。むしろ自身が身に付けた新しい力を人に使ってみてはどうだろうかと頭の中で模索するほどだった。

「宗助よ、彼女にその言葉を話してはいないか」

 真人は宗助の日に力を込めると淡いひかりが包み込んだ。淡い光は彼女のことを良くは思っておらず私のことを清く照らしていた。私だけでなく暗闇に閉ざされた茶色のよであり黒く変色した葉っぱで包こまれたイチョウの葉の並木道を照らしていた。

「私の火が優秀と言うことね」

 真人は笑っていたが宗助は高い火力に喜びを覚えていたのだ。その場所から木造の建築物は姿を見せることは無かった。きっとここよりも遠いい場所にあるか林が影をつくり場所を隠しているのだろう。私はあたりを見渡して、一番背の高い木を見つけた。

「秀でている事は間違いないね」

 真人はそういうとカナリアと一緒にその足で大地を踏む。新芽は彼女にその言葉を話していると私から数メートル離れたところに芽吹く。コンパスの針は南を示していた。京子が言っていた邸宅はここから十五キロと言った所だろうか。

「これは何だ」

 宗助はもうすでに遠くのところまで行くことになっていてカナリアとその言葉に話していた。私は香りにさえ訛れていて遠くから聴こえる喧噪ですら遠くに感じた。私は苦労を邪推することもなく黙々とその館から離れていく。

「これはシダ植物のアルデルヘンデね」

 カナリアは黄色く淡く咲いた花を見つめていると彼女のことを話しているとその言葉を話していると私たちはその言葉に話を聴いていた。花は急成長すると花の独特の臭みは無く華やかな冬季の香りが漂った。

「いい香り」

 私はその香りが話を聴いていると私はその香りに霞の香りを感じた。霞は、ときおり街に咲いているものであった。梅雨の勾配が遠くからあふれ出ている朝日の香りをはこんできたからだった。私にはそのことすらわからないでいたが彼女にとっては早朝の香りとは雨あがりの香りであった。

「ブルボン」

 真人はいつも足を大きくあげながら力強く片足を地面に突きつけるが彼女からしてみたらそれはとてもうるさいものであった。宗助の足取りは遅かったがカナリアと真人の足音が聞こえないのは妙であったからだった。

「確かカカオで一般的に使われている品種よね」

 足を上げながら時折使われている私は彼女にそのことを告げると彼女のようにはいかんなと首をくくった。私は指先だけではなく汗の下から湿気とは違うまま炊いた感覚を覚えた。また湿気のようなじめっとした感触を指先に感じる。

 しかしそれは梅雨が後半年あるということだった。

「しかし宗助、仄かに暖かいな」

 カナリアはあたりを見渡しているとカカオが成った部分が仄かに暖かかったのだ。カナリアも身震いをしていた。手の指先を合わせて祈る所作を創ると両手に灯篭のような火が充満することにより刻印を創る。

 死人は彼女のことを付け狙うように高慢な男であることを象徴しているようであった。激怒したひとの吊り上がった顔の表情をしているのは何かしら不利益を被られたからだ。この男の遺骨は骨格からして憤怒の顔をしていた。

「彼のためにも遺品を整理しよう」

 カナリアはドッグタグのような身分を証明できる物がないか探したがなかった。どこにもなかったのだ彼女たちは彼のことを何もならなのだ。だれもしらない家の物をあさるのだ。

「宗助、ここに何かあるぞ」

 真人は宗助にこっちへ来るように手招きをした。宗助は気になって骸骨を飛び越えて真人の居る茶箪笥と台所の間に行った。

「ここだけ空気が通っている節がある」

 真人は顔を近づけると眉よりも伸びきった髪がかすかに揺れるのを感じた。宗助も浮いた髪を見ていた。

「この奥にはきっと隠し通路があるはずだよ」

 真人は宗助の手を取って興奮気味に揺らした。左右に揺らしているとカナリアが二人をなだめるように言った。そこには彼女が言ったように3メートル四方の隠し扉があった。それは下にただ続いていた。私たちは降りるだけであった。

「それならぺんぺん草みたいな頭の上にある茶箪笥をどかしたら良いんじゃない」

 カナリアがその言葉に話すと二人は納得したようにその言葉へ従った。二人だけなくカナリアも移動させる作業に手を加えた。

「何かあるぞ」

 カナリアはぺんぺん草の頭を見ながら四方の壁の狭いことを気にして降りて行った。カナリアは懐中電灯のひかりを付けるとそこは暗闇であった。暗闇は暗いというだけであるのにひかりとやみの堺には黒い油膜のような堺がはっきりとわかる程区別されていた。

「ようやく暗闇から解放される」

 真人は前え進んだが、前に進んだ感覚がなかった。

「あれはペンダントだ」

 三人はようやく京子の言っていた秘法に繋がるとおぼしきものを発見した。

「だれが取りに行く」

 三人は自身の立ち位置を見ることになった。選抜した選手は以外にもあっさりと宗助に決まった。それは宗助が二人の中で一番そのペンダントに近かったからだ。

「僕が行くよ」

 宗助は二人の思いを手にして宝へと近づいた。しかしペンダントはその思いとは反対に遠のいていった。

「どうにかしてあそこへ行けないだろうか」

 真人はがむしゃらに走ったしかし、ペンダントに追いつくどころか二人にすら届かなかったのだ。

「二人ともどうして近づけないの」

 カナリアは焦った。しかし彼女は頭から火が出るほど考えたがそれでも何も分からなかった。彼女はもうどうでもよくなりうしろに足をずらしたすると、二人からは遠のいて感じるがカナリアからは近づいて見えた。

「これって」

 そして彼女から見て宗助が自分よりも後ろに居ることに気が付いたのだった。

「遠のけば遠のくほどペンダントへ近づくということか」

 真人は後ろへ下がった。

「やった近づいた」

 どんどん後ろへ行くとどんどん宝に近づいた。そしてその宝を取ると彼は嬉しさのあまり飛びあがった。

「やったついにとった」

 彼が二人を見るとそこは4メートル程だろうか離れた二人が居た。彼は帰ろうと上を見上げるとそのハッチが無いことに気が付いた。彼がそうして前を見ると梯子は自身が最初に居た場所から数歩離れた場所にあった。

「ペンダントを掴むとこんどは梯子から帰れなくなるのか」

 宗助は確認のために大きな声を上げて真人の名前を呼んだ。大丈夫、真人のよわよわしくも張り上げた声が確実に聞こえた。

「ペンダントを戻してくれないか」

 真人はペンダントをもどすと宗助とカナリアが息を合わせて後ろへ下がった。ペンダントは殺気よりもの遠くの位置にあり真人は元の位置の少し先のところまでもどった。

「どうすのこのままだと尻尾巻いてかえることになるわよ」

 カナリアが声を上げた。

「それだけならいいね」

 宗助は低い声でうなった。

「それってどういう意味」

 真人がおそるおそる聞いた。

「真人はいいかもしれないけど、カナリアと僕は動けないんだ」

 カナリアが横に移動しようとするとそのからだは動かなくなった。

「ちょっとどうするのよ」

「どうすればいいの」

 カナリアがその時々に荒げた声をだすので静かにさせた。

 宗助はペンダントをじっくり見ていた。ペンダントには何かつたない文字で刻印されている文字があることに気が付いた。

「マン=スラン」

 宗助はその名前を言うと台座が近くにあるような感覚に陥った。彼がその言葉を言うと台座は動いていないが一歩歩くと宝がにげるようなことはなかった。

「誰の名前よ」

 カナリアは懐中電灯を彼に向けると無骨な風貌をした男の顔がうつる。彼女は驚いてその場から台座へと視線を移した。

「だれのなまえかは分からない。けれどその意味をしれば本質へと近づくようなきがするんだ」

 そうして宗助は10の質問をしたあとにそのペンダントを手に入れた。銀色に輝くペンダント。それは三人の眼から見ても明らかに効果に見えてた。

「天地創造の光」

 灯篭の火は静かにだが業火の炎へと昇華した。静寂の中で業火の炎だけが小気味良い風の音を通りだす。一輪の花とカカオの木が極太の大きな芯を手に入れた。その様は雄大であり茎の根が雄弁に大地から突出した生命であることを物語っていた。

「誰かの形見か」

 しかしカカオとは一般的には富士山程の高度のある湿気が多いい場所でかつ低音でなければ育たない植物であった。そう、カカオは、カカオベルトのみで生産できる植物であったからだった。

「カナリアもう行こう、日も落ちた」

 日はとっくにおちてオリオン座の星々だけが遠くから地上を見下ろす。分解された星々の疎らなひかりに体を包まれて夜空はお祝いムードであった。カナリアの影はもう見えなくなって按排すらわからなくなっていた。

「宗助はどうするの」

 カナリアは宗助の服の裾が通りから私は彼女にそのことを聴いたが私はただ押し黙っているだけであった。私だけではなく真人のことも十分注意して彼女はその玄関の鍵を閉めた。途中私は彼ら二人組が私の部屋の玄関を閉めるときに断りもせずにその扉を勢いよく開けるのではないのかと心配したからだった。

「銀色のネックレス」

 私は部屋に入ると真人や宗助やアルベトの邪魔が入らない自分だけの絶対的な空間を手に入れたようで安堵した。私は急いで懐から紙を取り出すと漆黒の色をしたインクに黒の万年筆で自身の住所を記入していく。

「当時としては高価だったのだろう。科学技術も発展していない時のことだ水銀を飲んで不老不死になろうとしたものの末路だよ」

 理由がどうであれ私たちは篝火のことを話していた京子の生まれ故郷は見るも無残な状況へと変わり果てていた。カナリアはその変わりように心を痛めている彼女を抱き抱えながら彼女のことを慰めていたからだった。

「私の信用金庫にそれを預けて欲しいの」

 京子は慰めながらも首にくくられているペンダントを見た。ペンダントは純銀製の淡い色をしたネックレスであった。私は何度もそれを見比べていたがカナリアはお金に変換することを考えることはなかった。

「信用金庫に預けているわけでは無さそうね」

 京子はカナリアにネックレスを渡そうと手を伸ばした。カナリアは京子からネックレスと貰おうと手を伸ばしたが手に渡る時に渋って引っ込めた。躊躇したのはカナリアが私よりも手早く思い入れの品を手に取ろうと努力したからである。

「やっぱり信用されてないのね」

 カナリアには自身が自信を持ち預けられる人物であることを知るがそれを超えて余りある余念に頭が支配されていたからだった。カナリアには相手が信頼を寄せていること前提に物事を進めていたのでとても喪失感のあることであった。

「私、九勝祭が起こる後でも分からなかった」

 ペンダントは月の光で鈍く銀色に輝いていた。道路は土の頑健で健康的な色から淡白で淡い色へ変色を果たした。京子は同じ場所をひび割れたコンクリートの上から歩いていた。舗装された道路は無惨な状況から復帰することもないだろう。

「形見にしたいの」

 時刻は午前の2時を過ぎていた。城下町からはトラクターの音が何台も聴こえるが人の活力はどうにも感じ取ることができなかった。

「もう何も言わないわ」

 私は後ろを振り向くと彼女は悔しそうに唇を噛んだ。バレないようにしていただろうが京子には体が強張っているのは固まっていることや目が泳いでいないことから明かであった。形見のネックレスは私がアルトンマに近づく一歩であった。

「銀色で綺麗ね」

 私は彼女が最悪首を括ってしまうのかと考えていた。カナリアは自身の言葉が彼女の心を用意に殺すことを知っていた。京子の心を打ち壊す爆弾を私は心の中へ延々と閉じめていくことだろう。しかし、京子は細かく分解されたAgの元素が集まる集合体と言われても考えを変えないだろう。

「いつまでもっていてくれるの」

「私にできることなら何でも言いなさい」

 京子はにたりと笑う。

「私は貴方の思い出をいつまでも守ることができる」

 カナリアは喉が枯れるほど叫んだ。

「ごめんなさい、もう行くわよ」

 京子は下を向きながら車に乗りイチョウ街をあとにした。そこにはカナリアがいた。そのあとは集合場所に集まり一旦休憩した後早朝の朝には帰った。

「カナリアはどうして一旦断った商談をもう一度持ち掛けたのだろう」

 真人と宗助は最後だった。途中貞治が交代し二人を下宿先のアパートへ帰した。お礼を言うと二人は階段が自分からあたりに来ることを心配しながら一段づつのぼる。「ただいま」と言うとお帰りの言葉は帰ってこなかった。

「カナリアはもういないのか」

 まひとがボソリと言った。

「京子のネックレスはどうするんだい」

 アルベトはカナリアにきいた。カナリアは京子から受け取った純銀製のネックレスを金庫の最重要警備室へ搬入した。京子はそれを知らなからか一時期不安にもなっていたがカナリアが手筈通りに納入を完了すると安堵しながらコーヒーを飲んだそうだ。

「京子のネックレスはカナリアの信用金庫の中にあるそうだ」

 真人は口をすぼませてテキーラを食べた後にレモンを啜る。バナナを食べながら西洋風の音楽を聴いていて手紙を振るい郵便受けの中から取り出した。宗助は年賀状に彼女の不摂生を祟った文面を書いたが変身は一年後となるだろう。真人は口の中をチェイサーで一気に流すと体の中から染み渡る感覚がした。

「カナリアの信用金庫」

 真人はカナリアから貰った信用金庫の版権を取り出した。

「ゴアゴアの厚い和紙の中に薄っぺらな紙が一枚入っている」

 宗助に渡すと裏表紙にアルベトと書かれた筆記体の文字が半分に割られているのが特徴的だと感じた。

「実際には権利を記した権利書だろ」

 宗助は版権が室町から使われている割り印であることが分かった。丸い印字の中に年月日と【カナ】と書かれたところが不意に途切れていたからだった。割り印は信用する者同士のみに交付される通行証のようなものだ。それをどうしてこの家に持って来たのだろう。

「裏には何て書いてあるんだ」

 裏面には交付日が書かれてあった。それは数えて一週間前の今日であった。その間彼らは浮いたお金で旅行に行っていたのだ。旅行先はどこでも良かった。旅行の日付を考えたのはそれから丁度一週間前であった。

「確か、そうだ、カナリア=バーンと書かれている」

「カナリアだって、カナリアだって」

「赤紙と白の蝋が入った紙ってもしかしたら」

「カナリア=バーンて言ったらカナリア信用金庫の代表取締だろ」

 真人の手の中に戻すと宗助は突発的にであるがそれが金庫を取り出す権利書であると確信した。

「手紙には何て書いてあるの」

 手紙の権利書には時折り大事に育てられた犬のチェサの名が挙げられていたが、それは三枚目の時の話である。

「当該金庫の最高峰の権利を与える」

 真人は言い知れないわくわくの中にいた。

「それって」

 封筒の中を見てみるとそこには三枚の紙が添えられていた。一枚の紙はザラ飴を触った風味がする紙であった。二枚目には気色が悪くなる程しなやかな紙が添えられてる。三枚目には不気味で陰湿な雰囲気を纏わるような紙であった。

「貸金庫を一室借りれるってことか」

 アルトンマの手紙からは感じられない壮大で優雅な感覚がしていた。真人はカナリアにミス=アルトンマについて知らないかきいた。カナリアはアルトンマという名前に心当たりがあるようだがミスと付く苗字の人はいないと断言した。ミスは彼女であり例えばグレンジャアの名に付随してつける敬称であるからだ。

「無償で」

 何はともあれ京子の呪いを解呪することには成功したと考えるべきであろう。もうあの日を跨いで人の心配をすることも無くなったのだ。彼女にこの言葉が届いているのかは分からないが白い息を息を吐きながら出社する人達を見て今日も彼らは団らんと過ごすのだ。

 そして私はさしもアイテムポーチと電子機器を携えてあのコンクリートが蔓延する世界に飛び込むのだった。

 



  信用貸金庫業を営んでるカナリアはミス=アルトンマから招待を受ける。しかし招待状は偽であり支給されたホテルも一般的なアパートであった。カナリアは気持ちを切り替えて新しい土地で一か月程過ごすことを決意すると隣人となる宗助と真人にであう。宗助と真人は有休を取り休暇を過ごしている会社員である。

 宗助と真人とカナリアは二人のシェアハウスで楽しく過ごしていたがネット状でイチョウ街の都市伝説を聴くこととなる。動画を見てみると自身の家のマンホールと同じことからかつて円山とよばれた山荘がイチョウ街と言われていたいたことに真人が気が付いた。

 二人は真人の記憶に従い街の入り口に行くと立ち入り禁止区域となっていた。しかし立ち入り禁止となっていたのは所有地となっていたからである。その所有地の管理者に問い合わせるムシグロと言う男であった。

 三人はムシグロの許可を得て京子とイチョウ街の中を探索する。

 ムシグロは企業の中間管理職であり彼女たちを同行させたのは完全なる道楽である。ムシグロが所属している企業は佳代子が働いている会社である。イチョウ街は九勝祭が失敗した後完全に勢いをなくし、過疎化して行きそこを企業に売却された。

【建造物】

 カナリアが営んでる信用金庫・・二階建ての木造建築。一階につき四部屋ある。一階には居間、キッチン、かみだなが置いてある寝室。二階には常駐している受付の男が一人、和式の部屋①、和式の部屋②が存在する。

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