第7話
盟神探湯って裁判が、
古代にあったんじゃが、
知っとるけ?
裁判なんてモンは、
多かれ少なかれ理不尽なものが
入っているって思わんかえ?
そして、そこには蠢く魑魅魍魎が
垣間見られるかもしれんて。
イーヒッヒッヒッヒ!
「アンネローゼ・フォン・エイラス。お前は、第一皇子殿下の専属護衛騎士でありながら、任を果たせなかった。よって、その職を罷免し、貴族としての地位を剥奪するものとする。殿下のご厚意により、その命までは取らぬ。ただし、地下牢にて禁固刑10日を命ずる。分かったか?」
「はい。仰せのままに」
カイゼル殿下は、何とか一命を取りとめた。しかし、毒物により未だに意識不明である。
私が死刑にならずに済んだのは、殿下が存命であることと、一時的に意識を取り戻した殿下が「エイラスを罰してはならぬ」と、ひと言だけ明言し、再び意識を失ったからだ。
しかし、貴族たちの反発が強かった。元々エイラス家が繁栄していることが気に食わない者が多かった。
娘の監督不行届の責任追及され、アルベルトお父様とアルフレドお兄様は第一騎士団の任を解かれた。
さらに、お父様は辺境伯を長兄のアルマルトお兄様に譲ることになり、お兄様がエイラス辺境伯となった。
アルベルトお父様は最北の砦の防衛責任者に降格かつ左遷となった。アルフレドお兄様は、西の防衛拠点の一兵卒へ降格かつ左遷となった。
2人には行動制限が課せられ、エイラス領に戻ること、私アンネローゼと接見することが禁止された。
つまり事実上、当代のエイラス家は分断されたのだった。
聖教会の正式な聖女であるアルマリカお姉様には、帝国としては手が出せず保留措置となり行動制限等も課せられなかった。
そして、10日が過ぎ、身元引受人として、私の地下牢にアルマリカお姉様がいらしたのだ。
私は事の顛末を通達書で知って無力感に苛まれていた。混乱、後悔、反省、様々な感情が入り乱れ、牢から出た時に、思わずお姉様にすがりついて号泣してしまった。
「アンネローゼ…よくお聞きなさい」
「は、はい。お姉様」
「どんなことになろうとも、生きている限り我々エイラス家の者が貫く家訓がありますよね?」
「!」
「言ってごらんなさい。口に出して、言葉にして」
「は、はい!」
「貴女がエイラスを剥奪されても誰もその魂は剥奪できませんよ?ほら、言ってごらんなさい」
体の内側のずっとずっと奥に、ボッと炎が灯ったような感覚だった。私は顔を上げて、お姉様を見た。もう涙は止まっている。
今、鏡は見られないけれど、たぶんもう私は大丈夫。
「お姉様、エイラス家の家訓は『けっして壊れない』です!」
それを聞いたお姉様は、「大正解です」と言わんばかりに、にっこりと微笑んだ。
第一章は、これにておしまいです。
だって、この先は夢に見ていないんですもん。
第一章で終わらせるか、
はたまた続けるか。
スピンオフも考えると、
話の展開する軸は無数にあるように思えます。
私に形にできる力があるか、が疑問ですけれど。