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第5話

一騎当千ってあるだろ?


ありゃあ幻想だと思うね、俺っちは。


だって考えてみなせぇ。


倒しても倒しても、


ワラワラと敵が押し寄せてくるんですぜ?


もし、本当に一騎当千があるとしたら、そいつぁ…人間じゃありませんぜ。


バケモノでさぁ。

 右斜め前方から矢が飛んで来るのが見えた。


 そう私には、()()()いた。普通ならば、かわすなり、叩き落とすなりできる程度のものだった。


 明らかに矢は私の胸を貫く軌道だった。確かに私はプレートアーマーを装備している。しかし、他の男性騎士とは違う特注品だ。


 私の速さと剣技を活かすため、甲冑に用いる鉄板は極限まで薄く加工してある。しかも、帝国剣技大会でも証明されたように、私は攻撃を食らわない。


 プレートアーマーも胴体と鼠径部だけで、頭部はむき出しで、四肢はやや防御力がある革製の着衣のみだ。


 そのため私の装備は普通の甲冑の2割くらいの重量と防御力でしかない。


 つまり、矢の直撃に耐えられない。


(まずい!)


 死を意識した時に、視界を大きく遮るものが現れ、私はフワッと包み込まれた。


「うぐっ」


 くもったうめき声を上げたお方は…そう…私を抱きしめた人はカイゼル殿下だった!


「殿下!」


 背中に矢を受けた殿下は私にもたれかかるように、膝から崩れ、私ごと倒れた。私は殿下を抱えたまま倒れ込んでしまった。


「やっべえ…ずらかるぞ!!」


 どうやら私と戦っていた男がリーダーだったようで、声を上げると、襲撃者たちは四方八方に散り散りに逃げた。それを近衛騎士たちが追った。


 混乱する私は絞り出すように


「殿下?」


と発した。


 殿下は私を見るように、自ら横向きになられた。そのおかげで私は殿下の下から抜け出せた。寝返った拍子に殿下の背中の矢が抜け落ちる。皇族の頑丈なマントのおかげで、矢の返しまでは突き刺さらなかったようだ。致命傷ではない点は良かった。


「良かった…アンネが無事で…」

「そんなっ!殿下っ!私ごときを!!」


 私は激しく鼓動する胸を両手で押さえながらも、声を張り上げた。剣はいつの間にか手にはなかった。


「殿下が受傷された!直ちに救護の者を!」

 

 殿下は私を見ると震える右手で、左手小指の指輪を取ると、私に差し出した。


「殿下?な、何を??」

「あ、アンネ…これを受け取ってほしい…」

「何をおっしゃるのですか!今、医師が参ります!ご安静に!」


 焦る私は、混乱も加わり早口で殿下に話しかけてしまった。不敬罪に問われてもしかたない行為だ。


「アンネローゼ!」


 殿下は、小さな声だが力強く私の名を呼んだ。


「は、はい!」

「これを受け取ってほしい、頼む…」


 殿下は私の左手をつかむと私の中指に指輪をはめて、両手で包み込んだ。


 このような緊急事態なのに、殿下の手は温かく心地よかった。

水は高きより低きに流れる。


人は難きより易きに流れる。


どうしても、人間は簡単な方に、楽な方に流される傾向があります。


私も然り。


それを食い止める役割としての、1話1000文字なのかもしれません。

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